« 首都直下型地震と石原知事 | トップページ | #19三田落語会・昼「白酒・圓太郎」(2012/4/21) »

2012/04/22

#19三田落語会・夜「権太楼・喬太郎」(2012/4/21)

4月21日、第19回三田落語会は久々に昼夜公演に。都合により夜の部「権太楼・喬太郎 二人会」の方を先に紹介する。
いつものプログラムとは別に、石井徹也氏が書いた「事祝(ことはぎ)て 柳家権太楼師匠」という一文が配られた。もちろん芸術選奨文科相賞受賞への祝辞である。権太楼を「意気の人」との評価は正鵠を得ている。
しかし後段で権太楼の「芝浜」を評して「三木助型『芝浜』肯定否定論議」に決着を付けたというのは言い過ぎではなかろうか。
「芝浜」を現在にような落語の代表的作品のひとつにまでしたのは、やはり三代目桂三木助の功績だ。魚屋とその女房の情愛と作品に抒情性を持たせたのがポイントだったと思う。毎年、年末になると各寄席で決まったようにトリ根多として「芝浜」が演じられるようになったのは、「三木助の芝浜」があったからだ。
しかし既に半世紀以上前のことであり、その後の演者が三木助を乗り越える試みをするのは当然のことだ。「談志の芝浜」なぞはその成功例といえる。
現役でも権太楼を始め多くの噺家が独自の工夫を凝らして演じており、それぞれの「芝浜」を作り上げている。喜ばしいことだ。
それを以って「三木助型への肯定否定論議に決着うんぬん」というのは些か的外れだと私は思う。

<  番組  >
前座・入船亭辰じん「一目上り」
柳家権太楼「壷算」
柳家喬太郎「禁酒番屋」
~仲入り~
柳家喬太郎「粗忽長屋」
柳家権太楼「百年目」
(お囃子:太田その)

権太楼の1席目「壷算」。
マクラでいきなり前日に倒れてしまい体調が悪いと切り出す。確かにいつもと比べてやや元気がないようだ。抗がん剤の治療を受けながらの高座はさぞかし大変だろう。今や権太楼は落語界の宝なのだから無理はしないで欲しい。
「まさか喬太郎と二人会をやろうとはねぇ」と言っていたが、今回が初なんだろうか。
始めはソロリとした出足だったが次第にエンジンがかかり、途中からいつもの権太楼節に。
兄貴分が男に買い物のコツを教える際に古着を例にすると、男は「それは水瓶を買った後にしてよ」と答える。こういう会話の擦れ違いは上手い。
この兄いは買い物上手というよりは詐欺の手口だが、口が上手く相手を丸め込むため店主側が気付かない。
どこかオカシイと思っても畳み込んで相手に考えさせない状態にして騙す。現在でも「00詐欺」という名前で立派に通用している。この作品が普遍性がある所以だ。
店主の困惑ぶりが可愛いらしく見えるのはいかにも権太楼らしい。

権太楼の2席目「百年目」。
今まで観た権太楼の高座でベストだと思う。それほど素晴らしい出来の「百年目」だった。
この噺で難しいのは、いかつい大番頭が店を出て着替え、芸者タイコモチ連中と向島へ花見に行くときは粋な旦那に早替わりする所だ。
花見の場所でバッタリ本物の旦那と鉢合わせすると、途端に元の番頭に戻る。
番頭が早替わりした旦那と本来の旦那では自ずと貫録が違う。そこの演じ分けが難しい。
権太楼が演じる旦那はいかにも大店の主人という風格に溢れていて、だからこそ最後の大番頭に説教する場面に説得力がある。ここで客にジーンと来させるかどうかがこの演目の勝負所だが、この日は大成功だったと思う。
最初の店先の番頭、手代、小僧たちの造形も良く出来ていたし、大番頭がビクビクしながら花見に興ずる心理や、旦那と鉢合わせしてからの「あと1年だったのになぁ」という繰り言をつぶやく心情も見事に描かれ共感を呼んだ。
このネタ、西では米朝、東では圓生と相場が決まっていたが、この日の権太楼の高座はそれに迫るものだった。

喬太郎はマクラで、風邪をひいていて少し良くなってきたが、いつもの美声が出ないのでと言っていた。
しかし声が聞き苦しく、これでは高座に上がれる状態ではない。
こういう時は思い切って休演か代演という選択も考慮すべきでは。
お互い生身の身体だから病気もすれば怪我もある。それは仕方ないことだ。観客もその辺りのことは多少大目に見て上げる必要もあるだろう。
本人としては無理してでもと思って出演したのだろうが、せっかく喬太郎を楽しみに来たお客に却って失礼ではなかろうか。
従ってこの日の喬太郎の2席に対する論評は控えたい。

この日は権太楼の「百年目」が全てだったし、これだけで満足。

|

« 首都直下型地震と石原知事 | トップページ | #19三田落語会・昼「白酒・圓太郎」(2012/4/21) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82117/54532164

この記事へのトラックバック一覧です: #19三田落語会・夜「権太楼・喬太郎」(2012/4/21):

« 首都直下型地震と石原知事 | トップページ | #19三田落語会・昼「白酒・圓太郎」(2012/4/21) »