「天下たい平」50回スペシャル(2012/4/8)
横浜にぎわい座で隔月に定期的に開かれている”林家たい平独演会「天下たい平」”が50回を迎え、4月8日”50回スペシャル たい平2時間出ずっぱり”が行われた。第1回は客席が4分程度だったそうだが回を重ねるごとに客足が伸び、今回は前売りで完売だった。
50回欠かさず来てくれた客もいたようで、ファンというのは有り難いものだ。
俗に独演会と名付けられているものに2種類ある。一定の会場で定期的に行うケースと、各地でスポットで行うケースだ。後者は営業色の強いもので、「天下たい平」のような会は前者でネタおろしなどもこうした独演会で行われる。
50と回を重ねるというのは容易なことではなく、この一点からしてたい平の落語に取り組む姿勢が分かる。
一般には「笑点」メンバーとして知られていて、その為かいわゆる落語通の中では評価が高いとはいえない憾みがあるようだ。
< 番組 >
口上
林家たい平「七段目」
林家あずみ「三味線漫談?」
林家たい平「長短」
~仲入り~
唄
林家たい平「愛宕山」
三本締め
モギリでチラシが渡されたが、たい平の手書きで今日の会は「たい平祭」のようにしたいと書かれていた。
その通り独演会というよりファン感謝祭のような雰囲気で、客席はまるで後援会の集い。私のような人間はちょっと場違いな所に来てしまったかの感がある。
弟子のあずみ(ご覧のような美女、但し協会員ではない)が短い時間をつないだ以外はワンマンショー。唄を歌いながら場内を回りファンと握手。後ろの席の中年のご婦人たちから「可愛い~」の声が上がる。まるで韓流スターだ。
独演会の終了後には近くの居酒屋でファンと共に打ち上げを恒例としているようで、こうしたファンサービスも人気の秘訣なんだろう。
たい平の魅力は明かるさ、器用さ(花火の打ち上げのような)、そしてサービス精神だと思う。これらを兼ね備えているということは芸人としての素養を持っているということであり、大成する可能性を秘めているといえよう。
「七段目」、2000年の真打披露の高座以来何度か聴いている、たい平の十八番。ケースバイケースでテンションを高めたり抑えたりする(こういう所も巧み)が、この日は当然ハイテンション。
若旦那と警官による「安宅関」から始まり、団十郎と福助の声色、そして二階での忠臣蔵七段目と芝居掛かりで客席は大受け。
「長短」、これも得意の演目。
誰から教わったのかは分からないが、通常の三木助や小さんの型ではなく、小道具に烏賊の塩辛を使う事や長さんのオーバーな顔の表情で笑いと取る手法からすると、八代目雷門助六の型(長さんが上方という点は異なるが)ではないかと推察する。
前半でタップリ笑わせるが、肝心の長さんが煙管を吸う場面になるとややダレテくるのが欠点か。
「愛宕山」は当方初見。
この噺の登場人物の造形で難しいのは大旦那。幇間を連れて京都で遊び谷底へ小判をまくほどの大金持ちの風流人、この風格が出せるかどうかだ。
たい平が描く旦那は軽すぎて、金持ちにも風流人にも見えない。
一八が愛宕山を登るシーンや谷底から戻るシーンは熱演で、観ている方も力が入ったが、全体として出来は今ひとつ。
こうした大ネタで客を満足させるような芸へ、これからの精進を期待したい。
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たい平については、「笑点」で人気は全国区になったとはいえ、それが良かったのかどうか、という思いが常につきまといます。
得意の声色での「七段目」は十八番の一つでしょうし、「紙屑屋」なども、なかなか結構なのですが、「笑点」メンバーとの落語会ばかりしていては、芸の向上はおぼつなかい。
そういう意味でも、にぎわい座の独演会は彼にとって貴重な場だったのでしょうね。
投稿: 小言幸兵衛 | 2012/04/09 21:58
小言幸兵衛様
2000年に同時昇進した喬太郎、たい平の二人、当時はどちらもアイドル的な人気に支えられていました。
それから12年、喬太郎は既にそこから脱却していますが、たい平は未だ抜け出していない。この会に行ってそんな印象を受けました。
初代三平門下・林家の唯一の期待の星ですから、とにかく精進を続けて欲しいと思います。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/04/10 07:25
たい平は若き日、志ん朝についていた時期があり、そこで吸収したものが芸を支えているんじゃないでしょうか。「笑点」的要素と芸道的な要素のバランスをとるのは難しいでしょうが、今後も精進を重ねてほしいと思います。
投稿: 福 | 2012/04/12 07:53
福様
以前の「天下たい平」で、マクラで着物の着付けを実演してみせていましたが、それもちゃんと芸になっていました。
センスがあるし素質は十分ですから、まだまだ伸びて行く人だと思います。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/04/12 08:54