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2012/05/21

地人会新社第1回公演「シズウェは死んだ!?」(2012/5/20)

5月20日、赤坂レッドシアターで行われた地人会新社第1回公演「シズウェは死んだ!?」を観劇。
2007年に解散した「地人会」を受け継ぎ、渡辺江美が中心となって5年ぶりに再開したその最初の公演というわけだ。
主役の渡辺徹が病気で降板するというアクシデントはあったものの、南アフリカのアパルトヘイトをテーマにした芝居ということで惹かれた。
「赤坂レッドシアター」は初めてだが、収容数150名ほどの小劇場がこんな都心に出来たことは喜ばしい。

作:アソル・フガード/ジョン・カニ&ウィンストン・ヌッショナ
(作者にジョン・カニとウィンストン・ヌッショナという二人の俳優が名を連ねているのは、当時の南アで当局の弾圧を逃れるために文字として残さず、出演者自身の記憶によって残したからとの事。)
演出:鵜山仁
訳:木村光一
<  キャスト  >
川野太郎:シズウェ・バンシ 
嵐芳三郎:スタイルズ/ブンツゥ

舞台は南アフリカ共和国の街、時代は脚本が作られた1972年当時とすれば、アパルトヘイトにより黒人などカラード(混血やアジア人も含む)の人々が白人から人間扱いされていなかった頃の物語(厳密にいえば同じ白人でもアフリカーナ(オランダ系)はイギリス系から差別を受けていたのだが)。
黒人たちは常にパス・ブック(身分証明書)を携行していなければならず、持っていなかったり不正があったりすれば、それだけで刑務所行き。加えて出身地から離れて暮らすのは違法滞在としてこれも処罰の対象。
故郷に妻と3人と子供を置いて街へ出稼ぎに来ていたシズウェは役人に見咎められ、出身地に戻れという命令を受ける。しかし故郷に戻れば職はなく、家族が飢え死にしてしまう。そこで街に住む親切な黒人・ブンツゥを訪ね相談にのって貰うが、このままでは強制送還されるしかないと言われてしまう。
その夜二人は酒場に飲みにでかけるが、帰り道でブンツゥが血だらけの黒人の死体を発見する。ポケットからパス・ブックを取り出すと、そのロバートという黒人はこの街に住む許可を得ており、おまけに職に就いている。
ブンツゥは頭をめぐらし、嫌がるシズウェのパスとすりかえてロバートに成りすますよう説得する。
死んだ黒人への良心の呵責や個人の尊厳との間で悩むシズウェだが、家族が生きるためと別人に成りすますことを決意し、受け取った給料で服と帽子を買い、スタイルズ写真館で記念撮影。故郷に仕送りと共に写真を送ればきっと妻も子供も大喜び。

芝居はアパルトヘイトを告発する一方、悲惨な状況の中でも、”どっこい生き抜く”したたかさ、楽天性を満ち続ける黒人たちへの賛歌となっている。
だから観ていて楽しいし、彼らと一緒に踊りたくなるような気分にさせられる。
密度の高い1時間50分のドラマだった。

その後アパルトヘイトは1994年になってようやく廃止され、法律上の差別はなくなった。
しかし人種間の経済的格差は存続しているし、今では黒人間の格差も急速に拡がっている。主要都市であるヨハネスブルグは世界でも最も危険な街になってしまった。
私は2007年に南アを観光で訪れ、その紀行文「南部アフリカ旅行記」を別館に掲載している。興味のある方はご笑覧ください。

出演者二人は終始楽しそうに演じていて、それが客席にも伝わってきた。
歌舞伎俳優である嵐芳三郎は意外にコミカルな演技がはまっていて、特にブンツゥの人間性が良く描かれていた。
川野太郎は急なピンチヒッターで大変だったろうが、純朴で不器用なシズウェ役を立派にこなしていた。鍛えているんだろう、体形が50歳過ぎとは思えない。
でも、渡辺徹で見たかったなぁ。

公演は5月31日まで。

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