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2012/05/13

柳家三三・桂吉弥ふたり会(2012/5/12)

5月12日、KAAT(神奈川芸術劇場)で行われた「柳家三三・桂吉弥ふたり会」へ。
午後4時半に関内駅に降りると、横浜球場からゾロゾロ出て来る人の群れ。縦じまのシャツに黄色いメガホンを持った人たちが冴えない表情で歩いていたので、ああ阪神が負けたなと直感。どうも今ひとつ今年の(も、かな)タイガースは波に乗れない。ノーヒッター試合でなかったのがせめてもの救いか。
KAATは山下公園の南側、神奈川県民ホールとは向い合せ。もし橋下徹が知事だったら即、廃館だろう。
三三・吉弥という東西の若手人気落語家が顔を揃えたふたり会、女性客が目立つ。
二人は入門が1年違いだからほぼキャリアは同等、いずれも文化庁芸術祭新人賞を受賞している。良きライバルといった所か。

<  番組  >
桂鯛蔵「みかん屋」
柳家三三「のめる(二人癖)」
桂吉弥「三十石」*
~仲入り~
桂吉弥「茶金(はてなの茶碗)」
柳家三三「お若伊之助」*
(*印はネタ出し)

鯛蔵「みかん屋」、東京では「かぼちゃ屋」。
ミカンを天秤棒に担いで売るという姿が想像できず、あまり面白くなかった。
それとミカンを売るなら真冬のはずで、そうした季節感を出せていたら良かっただろうけど。

三三「のめる(二人癖)」。
この噺に出てくる「都詰め(みやこづめ)」だが、将棋盤の中央(5五の地点)で王が詰んだ状態をさす。中心にあるから「都」。
詰め将棋にはあるようだが、プロの実戦では先ず見られない。難しいのと、プロならその前に投了してしまうからだ。
アマチュアだと詰まるまでやるからタマにある。現に私が将棋を覚えたてころ、上級者にやられて悔しい思いをしたことがある。
この反対が「雪隠詰め」で、こちらは将棋盤のスミで詰まされる状態。「雪隠」とは便所のことで、昔は家のスミにあったから。
都詰めが出来なくて四苦八苦している傍で「詰まろうかね」としつこく訊く。これが「詰まるかね」と訊けば「詰まねぇ」と答えるだろうが、「詰まろうかね」と訊かれるから思わず「つまらねぇ」。上手く考えたもんだ。
三三はこの会話の間と目の動きが巧みで笑わせる。
近ごろ、古典をアレンジして演じる若手が多い中で、三三はオリジナルそのままに演じてかつ客席を沸かせる。実力の証明。

吉弥の1席目「三十石」。
7月に放映予定のNHKドラマ出演をマクラに振って本題へ。
長講のうち伏見人形から舟歌までの最もポピュラーな場面。
先日の桂まん我の時もそうだったが、今ひとつこの噺のリズムに乗り切れない。このネタには、やはり演じ手の年季が要るのだろうか。
後で本人が言っていたが、舟歌の際の前座の合唱が全く合っておらずひどい出来。この手のネタはこういう細部を大事にしないとオジャンになる。

吉弥の2席目」「茶金(はてなの茶碗)」。
落語の世界では金に目をくらんだ欲張りというのは概して末路が良くないものだが、この噺では珍しくその欲張りのサクセスストーリーとなっている。
東京の高座にもかかるが、茶碗の権威付けに関白や天子様が登場することからも、これは上方に相応しいネタだ。東京落語ではどこか無理がある。
ポイントは片や社会の底辺で必死に生きる行商の油屋、こなたは粋人にして公家にも出入りする茶道具商・金兵衛、通称茶金の人物像との対比だ。
ただ同然の茶碗に油屋の親孝行に免じて3両支払い、茶碗が千両で売れれば半額の500両を油屋に渡すという器量をみせる茶金の大店の主人らしい風格を吉弥は示していて、良い出来だった。
油屋が口では金を辞退しながら、心中では喉から手が出るほど欲しいという表情も上手く表現していた。
吉弥の芸には色気があり、そこがこのネタに生きていたように思う。

三三の2席目「お若伊之助」、人情噺に分類されるが筋がやや荒唐無稽であり、その分、演者の力量が試される作品といえる。
因果噺という陰惨な物語を明るい滑稽噺風に変えていった志ん朝の流れを受け継いだ演出で、に組の鳶頭・初五郎がお若の預け先である根岸と、伊之助が住む浅草代地を何べんも往復するくだりを見せ場にして、快調なテンポで上出来だった。
こういうネタを演らせたら、今の若手の中では三三は他の追随を許さない。
ケレンも余計なクスグリも入れず、噺本来の面白さだけで惹きつける三三は、頭が一つ抜け出ている。

後半が充実した、中身の濃いふたり会だった。

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コメント

吉弥に『はてなの茶碗』は合いそうですね。『お若伊之助』は難しい噺だと思います。志ん朝の音源をどうしても思い出します。
読みながら、この二人会、また行ってみようかと思いました。

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/05/14 22:36

小言幸兵衛様
三三の優れた点は滑稽噺と人情噺両方が出来るところでしょう。「地」の語りがいいですね。
いずれ東西の看板を背負う二人でしょうから、これからも注目したいと思います。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/05/15 10:28

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