#8ワザオギ落語会(2012/5/19)
5月19日、国立演芸場で行われた「第8回ワザオギ落語会」へ。
年1回のこの会、DVDの収録も行っている。入場料とDVD売り上げのダブルインカム。
主催のオフィス・エムズさん、時には客が入らない落語会も演ってるから儲けるときに儲けとかなきゃ。
< 番組 >
古今亭菊六「湯屋番」
春風亭百栄「弟子の強飯」
入船亭扇辰「さじ加減」
~仲入り~
三遊亭兼好「元犬」
桃月庵白酒「付き馬」
菊六「湯屋番」、高座に上がってくる様子が実に宜しい。あれで女性ファンはグッとくるらしい。近ごろの落語家は女性からの人気が大事だからね。
ネタは5月2日の「新真打競演」の時と同じだが、出来は前回の方が良い。理由は若旦那の豆腐を買いに行くエピソードがモタモタし、客席を冷やしてしまった。
苦言を一つ。
豆富を買うのに味噌漉しを持っていく手はない。やってみれば判るが形が崩れてしまう。豆富は水に浮かせて運ばなきゃ。だから鍋で買いに行くものだ。
母から聞いたところによると、祖父は大の豆腐好きで、早朝手ぶらで豆腐屋に行き、店先で掌に豆腐を乗っけて上からシタジを掛けて、そのまま口へ流し込んでいたそうだ。それだけ豆腐も鮮度を大事にしていた。
だからザルで水を切るなんざぁ以てのほか。
百栄「弟子の強飯」、この人のいいとこはフラと愛嬌だが、芸人にとっては鬼に金棒、これだけで飯が食える。
入門時の師匠とのエピソードをマクラに新作。
こちらは師匠が三顧の礼で有望な弟子をスカウトするというストーリー。この弟子が高2なのに酒は呑む煙管は吸う、しかも喋り方が圓生そっくり。
円生の形態、声色物真似で客席を沸かしていた。
ここでようやく高座が温まってきた。
扇辰「さじ加減」、百栄の後は演りにくいと言い、さて何をしましょうか・・・、お古いところで、と入ったネタがこれ。
あらすじは。
名医の息子の玄益、堅物だったがある日ひょんな事から品川の茶屋に上がり、芸者・なみに入れこんで遊び過ぎて勘当となる。
そこから心を入れ替えて、医道に精進して評判の医者となった。
二年ぶりに品川の茶屋・叶屋を訪れると、なみは玄益恋しさに気が狂って今は座敷牢の身。
責任を感じた玄益は三両の金でなみを引き取り、神田西河岸の長屋に連れてきて、付きっ切りで看病、その甲斐あって、なみは半年あまりで全快をした。
これを聞きつけた叶屋らはひと儲けを企み、三両と引き換えに年季証文を渡していなかったのを幸いに、なみを引き渡せと玄益を脅す。
その場は玄益の長屋の大家が仲裁に入ったが、収まらない叶屋らはお恐れながらと奉行所に訴え出た。
ここからはお馴染みの南町奉行所の大岡越前守のお裁き、いったんは叶屋らの言い分を通してなみを引き渡せと命じるが、「なみを治療してもらったのであるから、玄益に薬代、手当て代を支払うように」と申し付ける。
これが締めて千二百六十両と聞いては、とてもじゃないが払える金額じゃない。
大岡様の「さじ加減」による名裁きの1席。
三遊亭円窓によれば、講釈師の故小金井芦州から教わった話を落語に脚色したものだそうで、適度に笑いもちりばめ面白いネタに仕上がっている。
扇辰の高座は人物像が明解で、ストーリーも円窓の演出からさらに工夫し分かり易くなっていて上出来だった。
高座に上がってから決めたネタでこれだけの芸を見せるのだから、今や扇辰の実力はトップクラスに達しつつあると言っても過言ではなかろう。
後半は兼好の登場で場内が一気に明るく。
愛嬌たっぷりに「元犬」を。
「おもとさん」が出て来ないので心配していたら、オチが替わっていた。こういう手もあったか。
白酒「付き馬」、終演後の打ち上げに行くのだの行かないだのというつまらない楽屋話をマクラに本題へ入る。
いつも通りの出来で客席を沸かせていた。
ただこのネタに出てくる客の人物像だが、白酒は他のネタでも同じように使い回している。そのためか、ネタが変っても色が同じに見えてしまう、そんな印象を持った。
そろそろ殻を破る時期に差し掛かっているのかな、そんな気がした。
後半は端折ってしまったが、今日はこの辺でご勘弁を。
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扇辰の「さじ加減」、まったく聞いたことのないネタです。
落語は奥が深い^^
白酒、たしかに良い意味での壁を乗り越える時期なのかもしれません。
しかし、彼なら一回りも二回りも大きくなるはずです。
投稿: 小言幸兵衛 | 2012/05/20 20:28
小言幸兵衛様
「さじ加減」、私も初見でした。
人情噺風の展開の良く出来たネタですが、聴かせるにはかなりの力量が要求されると思います。
これからは扇辰の持ちネタになりそうですね。
大阪では桂文我の高座が記録されているようです。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/05/21 07:22