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2012/05/15

「真打」制度って必要だろうか?

今春の落語協会における春風亭一之輔一人真打昇進は興行面のみならず新聞や雑誌に記事としてとりあげられ、先ずは大成功といえる。
今秋の古今亭朝太と菊六の昇進興行も話題を集めることだろう。
ただ落語協会としては来年以降どうするかは決めていないらしい。協会もかつては試験制度をしいていた時期もあり、つい2年前までは年功序列で真打に昇進させていた。
協会は戦後2度にわたり、三遊亭圓生と立川談志による脱退騒動を起こしているが、いずれも真打昇進についての意見の相違が発端だった。
それだけ昇進のルールや運用は微妙な問題をはらんでいるわけだ。
東京落語4派それぞれの、現時点での真打昇進ルールは次の通り。

落語協会:会長による人選(抜擢)但し来年以降は未定
落語芸術協会:年功序列
立川流:公開試験制度(一部年功も加味)
圓楽一門会:年功序列

こうして比較してみると、何やらサラリーマン世界と類似していて身につまされる。
各制度にはそれぞれ一長一短がある。
落協がもし現行方式を続けるとしたら二ツ目の競争意識は刺激されるが、生涯真打に上がれない噺家も出てくる。寄席での二ツ目の出番が極端に少ない現状では、生活そのものが脅かされるという深刻な問題も起こりうる。
もう一つ、会長の判断ということだと会長が変われば判断基準も変わることになり、公平性が担保されない。
芸協や圓楽一門の年功序列制度は、仲間うちでは摩擦が起きないという利点はあるが、上達のために切磋琢磨するという気風は生まれにくいという欠点もある。
立川流の公開試験だが、かつて談志は落語の世界には試験制度はなじまないという意味の発言もしている。落協が試験制度をやめたのもその辺りに事情があったのだろう。
その立川流にしても、合格基準が一貫しているとは思えないフシがある。

こうして見ていくと、真打昇進制度には正解がないと言えよう。

もう少し根本的に考えてみれば、果たして落語の世界に真打や二ツ目という階級制度が必要なのかどうか。

真打の特権て何かだが、
一、寄席でトリが取れる
二、弟子を取ることができる
三、「師匠」と敬称で呼ばれる
の三点になるだろう。
しかし落語家によってはトリが取れたのは真打昇進披露興行の時が最初で最後という人もいる反面、かつて初代林家三平は二ツ目時代に寄席でトリを取ったことがある。そうなると真打の特権と言えるかどうか怪しくなる。
弟子に関してだが、大阪の桂枝雀は入門9年で二人の弟子を取っている。東京での真打昇進の目安が入門14-15年だから、東京基準でいけば当時の枝雀は二ツ目相当ということになる。
要は弟子の志願者がいて本人に弟子を育成できる力さえあれば、階級に拘る必要もないといえる。
師匠の呼称など、私たち観客にとってはどうでも良いことだ。
して見ると、真打制度って一体どんな意味があるのだろうか。伝統と郷愁を除いてしまえば、昇進披露興行ぐらいしか存在意義が残らないのではなかろうか。

上方落語の世界では真打制度はないのだが、それで何か不都合なことがあるとは思えない。
それならいっそ東京落語でも真打制度は廃止しても一向構わないのではなかろうか。
前座はいうなればプロになる前の見習い期間という位置づけだから、これはこれで意味がある。
しかし前座を卒業しプロになれば後は横一線、実力と集客力さえあればどんどん伸(の)していって構わない。大衆芸能の芸人とはそういうもんだろう。

現在の落語界は東西交流が活発になってきているし、東京でも4派の垣根を越えた会が数多く開かれている。
そういう時代に各派ごとに定めた「真打」に大した意味があるとは思えない。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

真打昇進制度には正解がなく、各派ごとに定めた真打に大した意味がないというご主張、仰るとおりです。
敢えて探せば「集客力」は基準にならないでしょうか。その名が番組に上がれば、寄席やホールが一杯になるということであれば異論は出ないと思います。

投稿: 福 | 2012/05/16 07:57

福様
集客力、人気と置き換えても良いと思うのですが、これが一時的ではなく継続的なものになるにはやはり実力の裏付けが要ります。
そういう意味で実力と集客力は車の両輪だと思います。
実力も集客力もなければ、いくら真打という肩書を貰っても寄席の出番がなく、意味が無いということになります。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/05/16 09:57

本件、コメントでは書ききれない問題なので、ブログで書きたいと思っています。
ほめ・くさんのブログにリンクさせていただきますので、ご了承の程をお願いいたします。
難しい問題です、ほんとに。

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/05/17 22:26

小言幸兵衛様
どのような見解になるか楽しみにしております。
通常の記事は日にちの経過と共にアクセスが落ちるのですが、本件は逆に増加しつつあります。それだけ関心を集めているのでしょう。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/05/18 05:03

上方落語家の「真打」が誕生した件についてはどうでしょう

投稿: ポピーちゃん | 2012/05/24 18:36

ポピーちゃん様
ご質問の意味が汲み取れないのですが、もし笑福亭里光のことでしたら上方噺ではありますが、東京の芸協に所属しています。従って東京落語のルールの下で真打に昇進したものです。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/05/24 23:58

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