#11平成特選寄席(2012/6/26)
6月26日、第11回産経新聞「平成特選寄席」が赤坂区民センター・ホールで行われた。この会は久々だったが顔づけが良かったので出向く。
青山通りを豊川稲荷を右に見て坂を登り続け「とらや」を通ると間もなく会場。
< 番組 >
立川らく太改メ志獅丸「幇間腹」
古今亭菊六「浮世床」
桃月庵白酒「臆病源兵衛」
~仲入り~
古今亭菊之丞「転宅」
立川志らく「井戸の茶碗」
今回のメンバーは志らく・志獅丸の師弟、菊之丞・菊六の兄弟弟子という2組のコンビに白酒独りという組合せ。体形は slim 3:fat 2 の割合。
志獅丸「幇間腹」、前座を10年やって立川流の厳しい審査を通って今年目出度く二ツ目になっただけあって、しっかりとした語り口だ。
しかし人物の演じ分けがまだまだで、幇間が幇間らしくなく女将が女将らしくない。もっと仕種を勉強して欲しい。
菊六「浮世床」の夢編。
声も良いし語りもしっかりしている。ただこの人の高座を何席か聴いたが「軽さ」に欠ける。硬いのだ。
特にこのネタはもっと軽く喋らなくてはいけないのが、何だか人情噺のような語り口になっていた。
この辺りが秋に向けての研究課題になるだろう。
白酒「臆病源兵衛」の登場で客席が一気に温まる。やはり「陽」な人は得だ。個人の性格がどうこうではない。客席を明るく出来るかどうかだ。
先代馬生から雲助一門に受け継がれている珍しいネタで、噺の主人公が源兵衛からいつの間にか八五郎に変わる。
前半は源兵衛の臆病ぶり、後半は八が自分は死んであの世にいるんだという勘違いが面白さのポイント。
誤って殺してしまった(実際は気絶だが)人を行李に押し込んで不忍池付近に捨てに行くという、一歩間違えれば陰惨になる場面でも白酒は明るく演じた。
もう白酒の十八番といって良いだろう。
菊之丞「転宅」、いくつか言い淀んだり。紙入れの中の札の金額を間違えたりという細かなミスがあり、やや流れを悪くしていたのが残念。
鉄火なお菊とお人好しの泥棒の造形は良く出来ていて面白く聴かせた。
これは菊之丞に限ったことではないが、お菊は内心はビクビクしながら鉄火な外面を見せているわけで、泥棒への啖呵もそうした複雑な内面をどこかで表現すべきではなかろうか。
この演目では、どの演者もこの点にいつも不満に残る。
志らく「井戸の茶碗」。
近ごろマクラで談春をいじることが多い気がするが、あれは品位を落とすからやめた方がいい。ついでだが一門の談志ネタもそろそろ卒業の時期だと思うけど。
いきなり千代田卜斎の貧乏ぶり。娘が吉原に身を沈めようと言い出すほどだ。
いやいや娘を花魁にする位なら、ワシが吉原に身を売ろうなぞと分けの判らないことまで言い出す始末。
大事な仏像を屑屋に売って少しでも暮らしの足しにしたい。そこで娘をやって屑屋の清兵衛を呼びこむ。
この出だしの設定が通常と異なり独特だ。
仏像から出た50両を屑屋が返しにくると卜斎は受け取れぬと断り、やがて刀に賭けてもと言うと娘が押し入れから刀を取りだし「はい、父上」。これも独特。
いくら貧乏しても武士の魂だけは失っていないという卜斎の矜持を示したものか。
ただ私は性格がひねくれているせいか、こういう正直者ばかり出てきてハッピーエンドに終わるようなネタは苦手だ。
出来たら他の演目を聴きたかったなぁ。
面白さも中くらいなりおらが梅雨。
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