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2012/06/17

#14竜楽を囲む会(2012/6/16)

6月16日、東武ホテルレバント東京で行われた「第14回 竜楽を囲む会」へ。
芸協のHPで知って出向いたのだが、この会は中央大学学員会墨田区支部主催のもので、中大卒の竜楽を応援しようと毎年開いているものだった。だからホテルの宴会場という立派な会場なんだ。
場内は同窓生同士の集まりなので和気あいあい、あちらこちらで会話の花が咲く。こういう会が持たれている噺家は幸せだ。
縁もゆかりもない当方だが来てしまった以上仕方がない、厚かましくも最前列に陣取る。入場料は払ったし空席も多かったからまあ良いでしょう。
近頃こうしたバチガイの会へ飛び込んでしまうケースが多い。「アラシ」に見られないよう注意しなくちゃ。

<  番組  >
桂宮治「雑排」
三遊亭竜楽「青菜」
林家小染「住吉駕籠」
~仲入り~
三遊亭竜楽「柳田格之進」

宮治「雑排」
「高縄手落語会」の時と同じネタなので詳細は省くが、竜楽の会の開口一番にこの人を使う理由が分かる。会場の空気を温めてくれるのだ。
竜楽は落語家としてはどちらかというと陰の人だ。陽と陰の組合せがいいんだろう。
後で中入りの時、ロビーで年配の女性同士が「宮治さんが面白かったわ」と話していた。落語を聴きなれないご婦人方の評判は上々のようだ。

竜楽の1席目「青菜」
このネタのマクラにしばしば蜀山人の狂歌が引用される。
涼しいモノ「庭に水新し畳伊予簾、数寄屋縮みに色白のたぼ」
暑いモノ「西日さす九尺二間にふとっちょう、背で子が泣く飯が焦げ付く」
つまりこの噺は夏の涼しさと暑苦しさの対比が眼目なのだ。
近頃の若手が演じると、後半の暑さは良く表現されても前半がいけない。その最大の原因は屋敷の主の人物像が出来ないからだ。
おそらく隠居の身だろう、年配の風流人の主が打ち水し終わった庭の草木を通る風に軽く打たれながら、出入りの植木屋の職人とノンビリ会話を交わす。この冷感が出せるかどうかでこの演目の出来が決まってしまう。
竜楽の描く屋敷の主は風格があり、気配りがきく風流人。出て来る奥方も品が良い。下手な人が演るとこの女性がまるで女中みたいに見えてしまう。
前半の涼しさが上手く表現されているから対比される後半が生きてくる。植木屋の女房の人物像も過剰にならず程々。植木屋と大工の会話のテンポと間も良く、場内を沸かせる。
「青菜」、現役では小柳枝、金時、そしてこの竜楽の3人かな。

小染「住吉駕籠」
師匠である先代小染は人気者だったのに不幸な亡くなり方をしてしまい、健在だったら染丸を襲名していただろうに。弟子の当代も苦労しただろう。
マクラで東京の寄席にはオーナーつまり席亭がいるが、天満天神繁昌亭の場合は上方落語協会所有という違いがあると語っていた。
それぞれ一長一短があるような気がする。
東京の寄席では席亭と協会の綱引きが適度な緊張感を生むという利点があるだろうし、大阪の方は100%協会のコントロール下で運営できる。観客にとってどちらが良いかは一概にいえない。
東京では「蜘蛛駕籠」の「住吉駕籠」だが、やはり上方版はコッテリしている。特に酔っ払いのネチこっさには辟易する。駕籠屋はさぞ迷惑だったろう。
時間の関係からか最後まで行かず、途中の雀駕籠で落としていた。

竜楽の2席目「柳田格之進」。
仲入りのザワザワが完全に消えない中での高座だったせいか、最初のころはやや集中力が欠けていたような印象だったが、番頭が格之進宅へ紛失した金について問いただす辺りから緊張感が高まり、良い出来に仕上がっていたと思う。
結末は志ん生バージョンではなく、番頭と娘おきぬが万屋の夫婦養子になり、二人の間に産まれた子が柳田の家督を継ぐというハッピーエンドの先代圓楽バージョンだった。
ただ私はどうもこの噺が好きになれない。
主人が止めるのも聞かず、番頭が勝手に格之進宅に押し掛け、いかにも金を盗んだのごとく言い立てるというのは、当時の商家の主従関係から有り得ないと思うからだ。江戸時代、主人に対して奉公人は絶対服従だった筈だ。
一度は浪人を強いられた格之進が短期間で元の井伊家に帰参がかない、しかも江戸留守居役に出世していたいう設定も、いかにもご都合主義に映ってしまう。
まあ、これは個人の好みではあるが。

家に帰って妻に話をしたら、「あんたの落語もだんだんマニアックになってきたわね」と言われてしまった。

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