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« 高縄手落語会(2012/6/9) | トップページ | 小沢一郎の「人間失格」 »

2012/06/11

猿之助・中車襲名興行「ヤマトタケル」(2012/6/10)

6月10日、新橋演舞場での「6月歌舞伎・夜の部」を連れ(もちろん正妻デス)と一緒に観劇。
今回の興行はタイトルが長い。
【「初代市川猿翁 三代目市川段四郎 五十回忌追善」二代目市川猿翁 四代目市川猿之助 九代目市川中車襲名披露 五代目市川團子初舞台】というのが正式名称だ。
夜の部のタイトルも【スーパー歌舞伎 三代猿之助 四十八撰の内 「ヤマトタケル」】というもの。
早くいえば亀次郎改メ猿之助が先代の当り役を初役で演じるというものだ。
「ヤマトタケル」がスーパー歌舞伎の第一作として初演されたのは昭和61年(1986)で、歌舞伎愛好家の間で賛否両論の相当な物議を醸したという記憶がある。
革新的な試みだという評価がある一方、あれは歌舞伎とはいえない女子供向けの芝居、ケレンだという批判があった。今でもそうした批判は根強くある。
しかし興行的には成功したようで、以後スーパー歌舞伎は猿之助一座の代名詞ともなった。
元々芝居は大衆娯楽として発達したものであり、今が文化芸術に寄りすぎているという見方も出来るわけだ。
これは私見だが、歌舞伎の主流の座を占めることができなかった三代目猿之助が一座を率いて興行を打つ上で、新しい手法に活路を求めたものではなかったかと推察している。
新猿之助が襲名興行で「ヤマトタケル」を選択したのは、三代目の意志を継ぐと言う決意の表れといえよう。

<  主な配役  >
小碓命(ヤマトタケル)/大碓命:猿之助
帝:中車
皇后/姥神:門之助
タケヒコ:右近
ヘタルベ:弘太郎
兄橘姫/みやず姫:笑也
弟橘姫:春猿
老大臣:寿猿
帝の使者:月乃助
倭姫:笑三郎
熊襲兄タケル/山神:彌十郎
熊襲弟タケル/ヤイラム:猿弥
尾張の国造:竹三郎
ワカタケル:團子

開演の冒頭に猿之助と中車の襲名口上があった。
二人だけのしかも舞台の扮装のままの口上で、型どおりというよりは率直な心情を吐露するような内容(例えば中車に対する風当りについて)も含まれていて異例だった。
観客向けというより劇団員向けではと思わせるような口上だった。

ヤマトタケルノミコト(日本武尊、倭建命)は古事記や日本書紀に登場する第12代景行天皇の第二皇子で、物語の内容は記と紀では異なる。記では天皇との関係が緊張状態にあり悲劇のヒーローとの人物像が色濃いが、紀では天皇に従う人物として描かれている。
梅原猛作の劇「ヤマトタケル」は主に古事記の記述をベースにして現代的解釈を加えたものとみえる。
父と息子の対立、継母とに不仲、兄弟の争いや男女の恋愛感情などはそのまま現代のテーマだ。
帝が命ずるままに全国を平定し全て大和朝廷に従わせるという自らの使命に対する疑問や、昔からここで平和に暮らしていたのに大和の鉄と米の力により辺境に追いやられたという征服される側の嘆きは極めて今日的な発想だ。
観客は古代ロマンの中に自分たちの姿を投影して観ることができる。
そうした難しい理屈より、激しい戦闘シーンや宙乗りなどのスペクタクルな演出、美男美女の色恋と悲しい別離といった娯楽的要素により単純に楽しませてくれる。そこが魅力なのだろう。
後半がやや冗長で、もう少し上演時間を刈り取った方が良いと思われるが、ともかく連れは大喜びだった。

猿之助は立ち回りの動きが良くヤマトタケルの心理描写も巧みに演じて好演。
右近は出てくるだけで舞台が締まる。何より口跡が良く貫録で他の演者を圧倒していた。やはり一座にはこの人を欠かせない。
笑也は兄橘姫では気品を見せ、みやず姫の奔放ぶりも良かった。
春猿は美しいが弟橘姫にもう少し可憐さが欲しかった。
他に笑三郎と月乃助が好演、團子が愛らしい。
中車はこの役だけでは何とも言えないが、口跡がまだ歌舞伎俳優のそれに成り切っていない。これからの最大課題は踊りだろう。

歌舞伎の入場料は高い。しかし落語でさえ近ごろは3千円取る時代だ。一人で自前の着物を着て座布団に据わって2-3時間喋るだけでよ。
歌舞伎の大人数の出演者、高価な衣装や舞台装置、膨大な数のスタッフや裏方を抱える歌舞伎の入場料はむしろ相対的には安いのではと、そう感じた。

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コメント

そうなんですよ、広告をみて入場料にため息をついてあきらめます。
S席と安い席の値段が違いすぎるからなあ。
それにしても正妻ですと断るのはそれ以外にも「妻」が?^^。

佐平次様
ええ、実は他にも3人ほど・・、ってそんな分け無いでしょ。
いけない、ついつい日頃の願望が出てしまった。

落語で精一杯で歌舞伎まで手は回りません^^
ほめ・くさんが奥さんとご一緒に楽しまれたようなのが、うれしい限りです。

小言幸兵衛様
はい、正妻は大喜びでした。
本格的な歌舞伎ファンにとっては、やはり邪道と映るかもしれないですね。
この点は落語の世界とも似ています。古典とそのまま演じるのか、現代風にアレンジするのか、正解は難しいようです。

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