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2012/06/18

「雲助蔵出し ふたたび」(2012/6/17)

出かける時、妻から「今日の落語どこに行くの?」と訊かれ、「観音様裏手の浅草見番」と答えたら、「どうせ噺家が白粉つけて待ってるんでしょ、ふん」と言われた。でも雲助が白粉つけて待ってたら気持ち悪いでしょ。
そんなわけで6月17日、「雲助蔵出し ふたたび」へ。
仲見世の歩きにくいほどの人出は、やはりスカイツリーの影響かな。

<  番組  >
前座・古今亭きょう介「たらちね」
入船亭遊一「たがや」
五街道雲助「夏泥」
続けて「汲み立て」
~仲入り~
五街道雲助「菊江の仏壇」
(雲助の演目はいずれもネタ出し)

いま東京でいちばん上手い落語家はと訊かれたら、迷わず雲助と答える。
先ずはレパートリーの広さだ。滑稽噺はもちろん人情噺、芝居噺、怪談噺などいずれの領域のネタもこなし、かつレベルが高い。
これに比肩しうる現役の落語家は東京にはいない。そのことを改めてこの会は感じさせてくれた。

雲助の1席目「夏泥」。
後で本人が語っていたが、このネタは師匠先輩から教わったものでなく、速記本から起こしたものだそうだ。だから通常の「夏泥」と少し違う。
先ず泥棒が燃えている蚊燻しを消すシーンがない。
男が泥棒に金を出させる場面では、普通は泥棒と大声を出して長屋の住人に知らせて捕まえるからと脅すのだが、雲助の演出は男から金をくれないなら一思いに殺してくれと言いたてられ、困った泥棒が請われるままに質草の費用から最後は滞納した家賃分まで払ってしまう。
泥棒のお人好しぶりがより際立っていて、「金が有ったから良かった。無かったら恥をかくとこだった。」のセリフに爆笑。
マクラで浅草周辺の旨いもの店紹介から始まり、季節感たっぷりの高座。

続けて高座を下りることなく2席目「汲み立て」。
かつて東京でも便所は汲み取り式。集めた糞尿だが江戸の時代は近郊農家に運び肥料にしていたそうだが、私が物心ついた頃は「汚わい船」で沖合まで運び投棄していた。考えてみれば汚い話だが、かつての東京はそうだった。
その頃の噺。
若くて器量のいい師匠目当てに町内の若い者が稽古に集まる。そのうち師匠にどうやら男が出来、どうやら船で夕涼みと洒落こむらしい。
これを聞いた男たちは堪らない。嫉妬と復讐心に燃えて小舟を仕立て、師匠らの船に近づき煩いお囃子を鳴らして夕涼みを台無しにしようとするが・・・。
前半は稽古風景や、湯上りで立膝の師匠の腰巻を吹いて内部を覗こうとして三味線の撥で叩かれ「師匠の観音様を拝もうとしてバチが当った」なんていうシモネタも出てくる。
与太郎が師匠と色男が喧嘩しているというからよくよく聞けば、「蚊帳の中で二人が取っ組み合いしてた」。
そんなバレ噺風の会話もあれば、夕涼みでは師匠の三味線で色男が音曲を聴かせる場面もある。
夏期に相応しいネタながら演者に力量がないといけないからなのか、高座にかかる頻度が少ない演目だ。
雲助はそれぞれの人物像も鮮やか、会話のテンポも良く楽しく聴かせてくれた。

雲助の3席目「菊江の仏壇」、これも珍しい。
元々は上方のネタで、東京では知る限りでは10代目馬生のCDが市販されている位だ。
この噺は大きく4つの部分に分かれる。
一、女遊びにうつつを抜かす若旦那に堅物の大旦那が説教する場面。落語にはお馴染みのシーンだが、若旦那には既に女房がおり、しかも病を得て実家で養生しているという設定が他と異なる。
二、大旦那が嫁のお花が危篤ということで急ぎ外出する。すると若旦那が番頭に店の金から10両せびるが断られると、じわじわと番頭が女を囲っていることを仄めかす。
ここは「山崎屋」 と良く似てる。
三、番頭は一計を案じ、奉公人に望みの酒肴をふるまう。
その間に番頭は若旦那の望みを受け入れ、芸者の菊江(湯上りで急がせたものだから、洗い髪に白薩摩という格好。これが後半の伏線となる)を家に呼び、宴会。
そこにお花が亡くなったことを知らせに大旦那が急に戻ってきたから、さあ大変。
ここは「味噌蔵」を思い出す。
四、慌てた若旦那らは菊江を大きな仏壇の中に隠すのだが、大旦那は仏壇の線香をあげると言い出す。中には菊江が入っている・・・。
この場面はやや怪談噺風の仕立て。
非常に良く出来たネタだが、登場人物が多いし、しかもその描写を場面場面で切り替えなくてはいけない。人情噺風でありながら滑稽噺であり、相当な力量を求められることから演じ手が少ないのだろう。
雲助の演出ではとりわけ若旦那の描き方が秀逸。
女房のお花と芸者の菊江が瓜二つ、加えてお花は優しくて良く気が付く。それなにに何で若旦那は菊江にと問う番頭に若旦那は「お花と一緒だと気が置けてしまう。菊江だと気が楽になるから。」と答える。
単なる放蕩ではなく、若旦那の内面にまで切り込んで説得力があった。
全体に師匠の先代馬生を超える仕上がりを見せ、雲助の高座の中でもベストに近いのではなかろうか。

しばしの梅雨の晴れ間、遊一「たがや」を含め夏らしい演目が並び、一足早い本格的な夏の到来を思わせる好企画。
雲助の熱演とともに、実に結構な会でした。

【「菊江の仏壇」についての補足】(6/19)
立花さんから頂いたコメントを含め、次のように補足します。
別題を「白ざつま」といい、10代目馬生のものは「菊江の仏壇」と「白ざつま」双方のCDが市販されている。
「菊江の仏壇」では、歌丸の朝日名人会でのライブ録音のCDが市販されている。
「白ざつま」については、さん喬が2010年の落語研究会で高座にかけ、その後TV放映された。
東京での高座について、現在分かった範囲では以上の通りです。


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コメント

切符を取ったつもりでいたら勘違いで、これは過ぎたるはという神のお告げと大人しく休場しました。
雲助の浅草はいつも中にふだんはやりにくい下ネタとか差別的要素のある噺があるようでそれはそれで楽しみです。
「夏泥」は弟子の弥助のを感心して聴きましたがまさか弟子から教わったことはないのでしょうね^^。

投稿: 佐平次 | 2012/06/18 10:29

佐平次様
「汲み取り」と「菊江の仏壇」を聴きたくて行きましたが、これが大当たり、実に結構でした。
来られなかったとは残念でした。
弟子の「夏泥」は雲助が教えたものだそうです。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/06/18 17:40

菊江の仏壇は歌丸の高座を聴いたことがあります。
落語研究会ではさん喬が白ざつまの演題で掛けてましたね。その時のさん喬は白の綿薩摩を召していたような気がします。

投稿: 立花 | 2012/06/18 23:00

立花様
コメント有難うございます。
ご指摘の点を含めて本文に加筆いたします。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/06/19 00:49

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