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2012/06/19

鈴本演芸場6月中席・昼(2012/6/18)

6月18日、昼に空き時間ができたので、これぞ天恵と受け止め鈴本演芸場6月中席・昼の部へ。
顔づけが良いのと、上方の露の新治の高座を観たかったのだ。
月曜日の昼というのに満席、人気者を並べた落語協会の芝居はさすが客の入りが違う。

前座・春風亭朝呂久「子ほめ」
<  番組  >
柳家喬の字「千早ふる」
ストレート松浦「ジャグリング」
柳家三三「悋気の独楽」
柳家喬太郎「家見舞い」
三遊亭小円歌「三味線漫談」
宝井琴調「次郎長伝より/お民の度胸」
林家たい平「漫談」
ホームラン「漫才」
露の新治「権兵衛狸(上方落語)」
-仲入り-
伊藤夢葉「奇術」
春風亭一之輔「加賀の千代」
橘家半蔵「そば清」
大空遊平・かほり「漫才」
柳家さん喬「唐茄子屋政談」

この日の白眉は上方落語の露の新治、不勉強で名前を知らなかったが、この人は上手い。語り口は明快で丁寧、会話の間もよい。
人気者や実力者が並んだこの日の高座でも光っていた。
マクラで中学の英語教科書"Jack and Betty"の不自然さをネタにしていた。
若い方はご存知ないだろうが、昭和30年代の中頃までは殆んどの中学で開隆堂のこの教科書が使われていた。
アメリカ中西部に住む、多分中流家庭の中学生であろうJackとBetty、その二人の会話を通して彼の国の生活を知るというもの。
しかし例文として使われているものが、果たしてどんな状況の下でどのように使われるのか使途不明。
I am a boy.
You are a girl.
This is a pen.
こんな会話をするアメリカ人はおるまい。
これが疑問文となると更に不思議だ。
Are you a boy?
Is this a pen?
見りゃ分かりまっせ。
バカにしてるのかと腹が立ってくる。
清水義範の短編「永遠のジャック&ベティ」でもネタにしている。
これは当時の文部省の学習指導要領が、「英語を常用語としている人々、特にその生活様式・風俗および習慣について、理解・鑑賞および好ましい態度を発達させる」とされていて、アメリカ人の生活や習慣を学ぶことに英語学習の重点が置かれていたためだ。
だから会話文の不自然さなど、どうでも良かった。
現在の英語教育はコミュニケーションを主体としているので、教科書の中味も大きく変わっている。
ちょっと話題が脇道にそれたが、新治はこのマクラで客席をガッチリ掴んでしまった。こういう所が巧み。
本題の「権兵衛狸」、元々は東京のネタで上方落語の移したものだ。
どこが違うのかというと、全体が民話風に変えてある。
先ず権兵衛だが今は床屋だが、若いころは素人相撲の大関とまで呼ばれた力持ち。床屋だから毎日若い者が集まってきて家が社交場の様になっている。
夜、皆が引き上げると権兵衛は独り身。思い出すのは若い日、水車小屋での恋人との逢引。
「権兵衛、権兵衛」と戸を叩く。開けてみると誰もいない。空には月、そうか月夜の晩には狸が人を化かすというから、これは狸の仕業だな。
こういう所が東京とは全く異なる。
「狸汁にすべえ」という村人を制し、狸の頭を剃って丸坊主にして放してやる。
この時も権兵衛と狸の目と目が合って、思わず情が移るという按配。
助かった狸は、何度も後ろを振り返っては頭を下げて去っていく。
次の夜にまた(トントン)権兵衛はん……(トントン)権兵衛はん。
あのバカ狸じゃなぁ、性懲りもなしにまた来よった。
権兵衛がガラッと戸を開けると狸がヒョイと首出して、
「今朝ほどは散髪おおき、ついでに髭も剃っとくなはれ。」
何だかこのネタが心温まる民話に変わってる。

琴調「次郎長伝より/お民の度胸」
小松村七五郎の女房・お民の機転により一度は森の石松の命が救われるという物語。
広沢虎造の浪曲で育ったもんだから、次郎長ものを聴くとつい血が騒ぐ。
講釈はやっぱり英雄豪傑ものよりヤクザものの方が面白い。
不振のNHK大河ドラマだが、「次郎長三国志」をやったらどうだろうか。視聴率も上がるだろうし。でもヤクザの世界はNHK御法度か。

たい平、この日の番組と本人が風邪気味ということから漫談で済ませたのは仕方ないが、相も変わらぬ「笑点」ネタはいい加減に止めたほうがいい。
お客にあまり受けてなかったし。
これからの噺家人生、まさかこんなんで終わらせる心算はないと思うが。

お馴染みの顔ぶれなので、他は割愛。
(何かご質問ありましたら、どうぞ)

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

露の新治は知性を感じさせます。
私は好きですねえ。
鈴本、いけるかな。

投稿: 佐平次 | 2012/06/19 10:23

らくだ亭で新治を期待していたのに、野暮用で行けなかったのですが、やはり新治は良かったんですね・・・・・・。
鈴本には行けそうにないので、気長に機会を待ちます。
たい平、大きな曲がり角にいますね。
定席であの番組のネタをやる了見、いただけません。

NHK大河、脚本家の誰かが「円朝物語」でもやってくれませんかね。視聴率は悪いでしょうけどね^^

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/06/19 21:55

佐平次様
実はそちらの記事を読んで新冶の高座を見に行くことにしました。
上方落語界の層の厚さを改めて実感させられました。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/06/19 22:01

小言幸兵衛様
三三も喬太郎も一之輔もそれぞれ結構でしたが、この日は新治に尽きます。
機会があれば独演会を聴きたいですね。
たい平は素質があるし器用ですから、これで終わる人ではないと信じたいですね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/06/19 22:07

17日の日曜日、喬太郎は「同棲したい」という新作を演りました。かつて憧れたフォークの世界に浸りたいという父親の身勝手な願望がコミカルに描かれていました。
それにしてもこの番組は、三三、喬太郎と続くなんて、寿司とてんぷらを同時に食べるような贅沢な気分です。

投稿: 福 | 2012/06/20 20:35

福様
真打のトップが三三、続いて喬太郎が上がるという豪華番組でした。
他の演者も全般に仕上がりが良く、寄席の醍醐味が味わえました。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/06/20 22:11

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