落語教育委員会(2012/7/28)
7月28日、横浜にぎわい座での落語教育委員会「喜多八・歌武蔵・喬太郎 三人会」へ。
橋下徹が首相になったら、この教育委員会も廃止なんだろうな。「名前が悪い!」なんて。
ついでに三宅坂の国立劇場と演芸場も廃止だろう。あんな都心に置く必要はないとか何とかでオフィスビルにでもするんだろう。
かつて橋下市長はタレント時代に「能や狂言が好きな人は変質者」と言ってたくらいだから、もちろん国立能楽堂なんざぁ真っ先に廃止だ。
ワタシら伝統芸能を愛する人間は真っ暗闇さ。
そうさせないように「維新の会」の国盗りだけは阻止せざぁなるめぇ。
のっけから硬い話になってしまったが、会場は満席。オリムピックが開幕しようと隅田川で花火大会が開かれようと、そんなことお構いなしでやっぱり落語。
もっとも喜多八殿下は楽屋でTV観戦していたそうだけど。
< 番組 >
「開幕コント」
古今亭菊六「猿後家」
柳家喜多八「千両みかん」
~仲入り~
柳家喬太郎「孫帰る」
三遊亭歌武蔵「お菊の皿」
恒例の「開幕コント」、今日は二人だけかいと思っていたら喬太郎の楽屋入りが遅れていて繋いでいるらしい。
喜多八は鈴本の夜トリを抜いているから良いのだが、喬太郎は浅草の昼トリが跳ねてから駆けつけるので時間がかかるのだ。
ようやく会場の後ろ扉からキャリィバッグを引きながら喬太郎が到着。
どの世界でも一部の売れっ子に仕事が集中するのは避けられないが、この日はこれで4席目とか。喉の調子が今ひとつだったのは酷使し過ぎではあるまいか。声が最大の商売道具だからケアが必要なのだ。
そう言いながら、やっぱり喬太郎目当てで来るんだから世話はない。
メクリで古今亭菊六の名前が出ると場内からオーっという反応。襲名興行の前売りも始まったことだし、なにしろ今や時の人だから。
菊六を聴くたびに思うのだが、口跡が良く語りもしっかりしているのだが、それが時に短所になっているような気がする。しっかりし過ぎて硬いのだ。
役者のセリフならあれで十分なのだが、噺家としてはもっと「軽さ」が欲しい。特に軽い滑稽噺を演るときは軽快さが求められる。喋りの緩急や強弱ももっと研究が必要だ。
マクラの工夫と共にこれからの大きな課題だと思う。
喜多八「千両みかん」。
アメリカ大統領選挙の共和党候補ロムニー氏が軽口で「1万ドル賭けようか?」と言って批判されているようだが、金銭感覚が違うのだ。普通の人にとっては1万ドルは大金だが、ロムニー氏のような大資産家にとっては1万ドルなんぞほんの端(はした)金。
お店の若旦那の病のために真夏ミカンを求めて駆けまわる番頭。もし見つけられなけりゃ主殺しで磔(はりつけ)とあってはこっちも命がけ。
ようやく見つけたミカンの値段が1個千両。「そりゃ、いくらなんでも高すぎる」と驚いて店に戻り旦那に相談すると「安い」と言われてしまう。
早速若旦那のミカンを届け、番頭が「これ、一体いくらしたと思います?」と訊くと若旦那は事も無げに「千両ぐらいだろう」と答えるから又ビックリ。
ここで番頭の金銭感覚も狂ってしまう。若旦那が残した3房のミカン、計算すれば3百両。年季があけて店から貰える金がせいぜい40両がいいとこ。「ままよ」とばかり番頭は3房のミカンを懐に逐電。
よく会社の会計係だの銀行員が大金を着服して捕まるのだが、あれも金銭感覚が麻痺してくるせいなんだろう。
喜多八は目を巧みに使ったメリハリのある高座で楽しませてくれた。
殿下、絶好調!
喬太郎「孫帰る」。
長めのマクラで終いには「おーい、中村君」を曲目解説をしながらフルコーラスで唄う。特にこれっといった内容は無いのだが、なんだかこの人が演ると面白い。根底に客を楽しませたい、元を取らせたいというサービス精神があるからだろう。
そして一転、新作「孫帰る」は初見。お盆に祖父の家に帰ってきた孫との楽しい会話と思いきや、実は娘と孫は交通事故で他界していた。
孫が去った後の祖父の無言の動作が効果的。祖母の「お迎え火も焚かないのに良く帰ってきたね」のセリフが胸を打つ。
前半の能天気なマクラとの何と大きな落差。
これはもう喬太郎しか真似できない。
歌武蔵「お菊の皿」、(喬太郎に)遅れてきたくせに長く演ってと、そう言いたくなるだろうね。しかも「孫帰る」の後でこのネタは演りにくいわな、幽霊でツイテしまうし。
ストレスで過食症になり肥満になってしまったお菊という設定が面白い。「この前なんか井戸から出られなくなっちゃって」というセリフも、この人だと説得力がある。
三人ともに夏場にふさわしいネタを披露し、いずれも熱演で暑さを吹き飛ばしてくれた。
結構な会でした。
« 「維新八策」やのうて「無為無策」や | トップページ | 鈴本演芸場7月下席(昼)楽日(2012/7/30) »
「寄席・落語」カテゴリの記事
- 「落語みすゞ亭」の開催(2024.08.23)
- 柳亭こみち「女性落語家増加作戦」(2024.08.18)
- 『百年目』の補足、番頭の金遣いについて(2024.08.05)
- 落語『百年目』、残された疑問(2024.08.04)
- 柳家さん喬が落語協会会長に(2024.08.02)
おかえんなさい。
橋下にはほんとにそういうことをやりかねない危なさを感じます。
喜多八もあちらこちら大変です。あまりでるなよ、俺が切符買ったときだけにしろよ^^。
投稿: 佐平次 | 2012/07/29 12:39
佐平次様
橋下からみればコチトラは変質者だろうが、コッチからすれば奴は変態。なんですか、相手のホステスにスチュワーデスの格好なぞさせてからに。って、どうも話題が下品になっていけません。
喜多八の洒脱な高座、結構でした。お蔭で上野は雲助の代演だったようですが、どうだったでしょうか。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/07/29 15:51
>メクリで古今亭菊六の名前が出ると場内からオーっという反応。
ありがたいことです、なんて菊六自身みたいでおかしいですね。
ほめ・く様はその語り口に軽快さ、緩急、強弱を求められていますね。
野球でいえば、巨人の澤村投手を連想します。ともに真っ直ぐが持ち味、でも、時には軟投も必要。
投稿: 福 | 2012/08/02 08:00
福様
例年ならともかく、今回の新真打二人については、どうしても一之輔と比較されてしまうと思うんです。
それだけ客の求めるバーが高いですから、クリアするには一段の努力が求められるでしょう。
投稿: ほめ・く | 2012/08/02 11:07