フォト
2023年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
無料ブログはココログ

« 鈴本演芸場7月下席(昼)楽日(2012/7/30) | トップページ | 「コーカサス三国旅行記」のお知らせ »

2012/08/05

若手落語家競演シリーズ「盛夏」(2012/8/4)

8月4日、北とぴあ・ペガサスホールで行われた”若手落語家競演シリーズ「盛夏」”へ。
この会は二ツ目の落語家を毎回5人招き、全員ネタ出しでタップリと演じてもらおうという珍しい企画。
宣伝に「千円で観る落語の妙技」とある。
7,8,9月の3回開かれ、この日は第2回の盛夏公演。
三遊亭きつつきと桂宮治の高座は何度か観ているが、他の3人は初見。
定員150名ほどの会場は可成りの入りだったが、なぜか年配のご婦人が多数を占めていた。
開演中もどこかで私語が交わされているのは耳障りだったが、客層と土曜の昼下がりという条件では止むを得ないか。

<  番組  >
春雨や雷太「悋気の独楽」
三遊亭小笑「身投げ屋」
三遊亭きつつき「棒鱈」
~仲入り~
桂宮治「お見立て」
立川志の八「粗忽の釘」

3代目柳好は俗に「野ざらしの柳好」と言われたほど「野ざらし」を得意としていた。私は小学生の頃に新宿末広亭で聴いたが、場内は爆笑の連続だった。この人のネタがあまりに有名になったので、生前はこのネタを避ける噺家が多かった。
例外は8代目柳枝で録音されたCDも市販されている。
今この二人のCDを聴き比べると明らかに柳枝の方が上手い。最近の噺家が「野ざらし」を掛ける際に柳枝の演出をベースにしていると思われるのはそのためだろう。
ではなぜ柳好の高座があれほど人気が高かったかというと、それは出て来ただけで一気に場内を明るくした本人のキャラクターのせいだと思う。あの顔であの声であの姿であの調子であの仕種で演じた「野ざらし」だから受けたのだ。
キャラの面白さというのは持って生まれた天性(あるいは本人の人生)に左右され、これだけは努力だけではどうにもならない。
そのことをきつつきと宮治の高座で改めて感じた。

雷太「悋気の独楽」、落語家としては目がコワイが話はしっかりとしている。
小僧と旦那、お上さんと二号を演じ分けもきちんとなされており良い出来だった。
期待が持てる若手だ。

小笑「身投げ屋」、喋り方というか声というか、かなり癖があるが嫌味には感じられない。誰かに似てると思ったら歌之介、そうか同じ鹿児島だ。
まだ人物造形をうんぬんする段階ではないが、キャラと独特の節回しを磨いていけば面白い存在になるかもしれない。

きつつき「棒鱈」、マクラで今ひとつ沸かない会場を沸かせようと必死に挑発してくる。これで会場の雰囲気を一気に引き込んでいった手腕はさすが。初めて観た人は度肝を抜かれたろうが。
ネタに入って、オリジナルとは異なり江戸っ子二人の部屋に田舎者丸出しの芸者が入ってきて、二人をますますウンザリさせてしまうという新しい演出。この芸者の個性が刺身のワサビのように利いていた。
人物の造形は粗いしサゲを間違えるミスもあったが、田舎侍や芸者を思い切って戯画化することにより、楽しい一席に仕立てていた。
それもこれも天性のフラがあるからこそ。来年の真打に向けてますますのワールド全開を期待したい。

宮治「お見立て」、明るいキャラで上昇していた場内の温度を引き継ぐ。
ネタは未だ荒削りでミスもあった。しかしそうした弱点を吹き飛ばす面白さはやはり天性の明るさ、お客に楽しんで貰おうというサービス精神が根幹にあるからだろう。
今は二ツ目一年生だからこれで良いのだろうが、これからは人物の造形、例えば花魁や若い衆をそれらしく演じる話芸を磨いてゆかねばならないだろう。
将来は10代目文治のような芸人になる可能性は秘めている。

志の八「粗忽の釘」、この日の高座を観る限りでは良さが分からない。
先ず、ツマラナイ。
若手なんだからもっと我武者羅な姿勢を見せて欲しい。
トリという位置が悪かったのかネタの選定を誤ったのか、はたまたこれが本人の実力なのか。

二つ目が伸び伸びと落語を演じる場というのは少ないわけで、この会は好企画だと思う。

« 鈴本演芸場7月下席(昼)楽日(2012/7/30) | トップページ | 「コーカサス三国旅行記」のお知らせ »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

もって生まれたキャラは時に不公平ですね。
それを克服する芸人はすごい。

佐平次様
天性に恵まれている人が意外と大成しないのは、素質に寄りかかってしまうからかも知れませんね。
弱点を認めて克服しようと努力する人が、名人・上手といわれる人になるんでしょうか。

八代目柳枝の「野ざらし」、私も大好きです。
宮治は、横浜にぎわい座での開口一番に芸協、落語協会関係なく先輩から声がかかっていましたから、脇で実力者の高座を見て勉強もしたでしょうし、終演後にもいろいろと多くを教わったのではないかと察します。
フラだけではない、しっかりした骨太の噺家になる潜在能力を感じます。
朝呂久や宮治は、将来が楽しみです。

小言幸兵衛様
国立にするかこちらにするか迷った挙句こっちにしました。
5人で約3時間、二ツ目としてはかなり贅沢な会でした。それだけに個々の力量も試されるわけで収穫がありました。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 若手落語家競演シリーズ「盛夏」(2012/8/4):

« 鈴本演芸場7月下席(昼)楽日(2012/7/30) | トップページ | 「コーカサス三国旅行記」のお知らせ »