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2012/08/17

鈴本8月中席・夜「吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集」(2012/8/16)

鈴本演芸場8月中席夜の部は「吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集」で落語協会の2枚看板が交互にトリを取るという趣向。その16日に出向く。
いつの頃からか前売りが始まり、今年は10日間全てが完売となっている(当日売りは有り)。
以前にも書いたことだが、志ん朝が健在の頃は浅草演芸ホールで志ん朝のトリと住吉踊りを観てから地下鉄で上野広小路に移動、鈴本におよそ5時頃着いても最前列に座れたもんだ。この興行も当時は指定席なんぞなかった。
未だ10数年しか経っていないが、今から考えれば夢のような話だ。それだけ落語ファンが増えたということ。

<  番組  >
柳家甚語楼「犬の目」
三増紋之助「曲独楽」
春風亭一朝「幇間腹」
三遊亭白鳥「新ランゴランゴ」
柳亭市馬「粗忽の釘」
ロケット団「漫才」
隅田川馬石「反対俥」
柳家喬太郎「猫久」
-仲入り-
鏡味仙三郎社中「太神楽」
柳家さん喬「応挙の幽霊」
林家正楽「紙切り」
柳家権太楼「幽霊の辻」

サラの甚語楼「犬の目」、ダジャレを入れるのは良いが、いちいち間を取って客席に笑いや拍手を求めるのは止めた方がいい、芸が下品になる。

紋之助「曲独楽」、師匠は静かな人だったが、弟子はハイテンションで良く喋る。客席の共感を得ながらの高座は華やかではある。この時期のお約束、向日葵を独楽の上で回すサービス付き。

一朝「幇間腹」、この日は遅れて来た人たちが着席してから次の出番が上がってくるため時間が食われ、前半の出の人は少しずつ短く演じていた。このネタも駆け足だったがこの日も「イッチョウケンメイ」、一朝の演じる幇間(タイコモチ)は実に可愛らしい。

白鳥「新ランゴランゴ」、本人も認めるようにこの日の顔づけの中では異色。「掃き溜めに鶴」なのか、それとも「獅子身中の虫」。でもトリも新作ですよ。
師匠・円丈の作品に手を入れた新作のようで、ケニア人が落語を演じる噺。”ランゴランゴ”とは、現地語で”面白い話”という意味だとか、ウソだろう。
今でもアフリカ人というとジャングルを槍を持って駆けまわってると信じている人が多いようだが、南部アフリカのナミビアで、草むらで立小便をしていたら、現地の人から肩を叩かれ「トイレでしなさい」と注意されてしまった。なんだ、コッチの方が野蛮人だ。

市馬「粗忽の釘」、プロとアマとの違いは落語の上手い下手じゃないんだそうだ。所定の時間にきちんと収められるのがプロ。どこをどう縮めるかが腕の見せどころ。一朝の高座では一八がいきなり若旦那の座敷に入ってきていた。では市馬はどこをカットしたでしょう。

ロケット団「漫才」、最近気になるのはツッコミの倉本剛の痩せ方。少しやつれたようにも見えるのだが、体調は大丈夫だろうか。

馬石「反対俥」、こういう軽い噺もいけてます。

喬太郎「猫久」、大師匠・小さんの十八番を余計なクスグリを入れずにそのまま演じる試みをしているようだが、これもその一つか。
小さんの高座に比べ、猫久の向かいに住む男のトボケぶりには欠けるが、女房の造形は濃い。
古典をそのまま演じて客を唸らせるというのが喬太郎の最終目標ではなかろうと推測しているのだが、ご同輩のご意見はいかに?

さん喬「応挙の幽霊」は初見。
絵に描いた幽霊が夜中に抜け出してくるのだが、これが元はといえば祇園の芸妓。いい女の上に酌はしてくれるし、都々逸から終いにはかっぽれまで披露。
骨董屋の男もすっかり上機嫌になってに酒を注いでいると幽霊も酔いが回ってきて寝込んでしまう。翌朝早くこの絵をお客に届けなくちゃいけない絵が空じゃぁ・・・。
こういう噺をさせると、さん喬は上手い! 得意の喉と踊りも披露しての熱演。
これが聴きたくてこの日を選んだ甲斐があった。

正楽「紙切り」、小さな子供さんのリクエストが時間の関係で切れなかったが、楽屋に入ってから切って出口の係員に渡しておくと言っていた。この人の人柄が伝わってくる。

権太楼「幽霊の辻」も生の高座は初めて。
マクラでこのネタを演じるようになった経緯を説明。元々はTBS落語研究会の主催者から「愛宕山」を掛けるよう要請があった。演じたことが無かったので、あっちこっちから本やテープなどを取り寄せて聴いていたら、そこにたまたま枝雀の「幽霊の辻」が入っていた。これが面白いかったので、その後枝雀を同じ会で会った時にネタを演らせて欲しいと頼んだところ快諾を得た。
作者は小佐田定雄なので電話で小佐田氏に了解を求めた所、こちらも快諾してくれたが1席1万円という金額が提示された、この金額も枝雀を比べたら破格だそうだが、東京の寄席のワリから1万円はキツイので再交渉、しかるべき条件で落ち着いた由。
そうか、新作の場合は著作権が発生するケースがあるから結構ややこしいんだ。
このネタだが、小佐田氏の原作ではサゲは「あんた、わてが幽霊やない、と思うてはんの?」だったが、枝雀はこの後に「・・・かどうかは、皆さまの想像にお任せするのでございます」と続けた。
それに対して権太楼のサゲは・・・。
これについては権太楼のサゲが一番気が利いている。
演出も、とりわけ茶店の婆さんの造形が良く出来ていて、権太楼の方が優れていると思う。
でもこれは観る落語だ。

二枚看板、今年も結構でした。

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コメント

市馬、、前半のしっちゃかめっちゃかは今はたいていやらないから、それ以外では馴れ初めを語るところをやっても短く、かな。

佐平次様
馴れ初めはいつもの唄入りを含めてカット無しだったので、導入部とサゲ近くでいつもより急いでいたこと位しか見当が付きません。
縮め方が巧みだったという事でしょうか。

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