落語協会の真打昇進制度について
当方が来年以後の落語協会の真打昇進について「意外と年功序列に戻しそうな気がします」とコメントしたことについて、福さんという方から次のコメントが寄せられました。
「私的にはどちらかに偏るのではなく、年功序列プラス若手の抜擢という折衷もあり得べし、と思っています。」
少し長くなりそうなので、当方のレスを下記にて。
先ず2010年(2011年は昇進者無し)以前の落協の真打昇進ですが、基本的には年功序列、つまり二ツ目の香盤の上から数名ずつ昇進させるというルールで行ってきました。
しかし例は少ないものの抜擢による「〇〇人抜き」という昇進もありました。過去には志ん朝や小朝、新しい所では菊之丞(本人の著作によれば席亭の推薦とある)や、たい平と喬太郎の同時昇進もやはり抜擢でした。
ですから大きくみれば「年功+(時々)抜擢」制度ということになります。
ただ私の知る限りでは、過去の抜擢は会長など特定の幹部が推したというような事は公表されていないと記憶しています。
今回は落語協会のHPでも紹介されているように、小三冶会長が人選したことが明らかにされており、そこが大きく違います。
少し細かくプロセスを書くと。
1.まず幹部に昇進者についてのアンケートを取ったところ10名ほどの名前があがった
2.その結果を参考に池袋演芸場の二ツ目勉強会に数か月通って確かめたところ、(新真打に相応しい者として)アンケートに上がっていた者もいたが、それ以外の者もいた
3.最終的に一之輔、朝太、菊六の3名を昇進させることに決め、これらは私が自信を持ってお薦めできる
4.もうチョットとという者もいたが、どうするかはこれから考える
といった様な概要だったかと思います。
小三冶会長のメッセージでも来年以後については一切触れていませんし、会長推薦というルールを今後も続けるかどうかも明らかにしていません。
それは真打になれるかどうかというのは落語家にとって死活問題だからです。
だから過去の三遊亭圓生らの分裂騒動も立川談志一門の脱退騒動も、いずれも真打昇進制度に対する不満や意見の相違が原因でした(少なくとも表面的には)。
そう簡単にシステムを一気に変えることはかなり難しいだろうと思います。
又、会長個人の推薦をルール化するとなると、会長が交代すれば推薦基準もガラリと変わるということにも成りかねません(歴代会長の顔ぶれを見てください)。
協会といっても役員人事を見れば分かるように、柳家、三遊亭、林家(春風亭)、古今亭、桂ら各派の連合体みたいなもんですから、一般の企業のようにトップの一声で全て決まりというわけにはいきません。
従って当方の予測としては、来年以降は再び「年功+(時々)抜擢」という制度に戻すのではなかろうかと考えています。
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コメント
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長文で回答を頂き、恐縮です。
>来年以降は再び「年功+(時々)抜擢」という制度に戻す
この(時々)に料理で言えば匙加減が働くんでしょうね。
投稿: 福 | 2012/08/18 08:39
福様
落語の良し悪しはストップウォッチなんかでは測れません。だから試験にしろ抜擢にしろ個人の好みは避けられず、必ずってよいほど不満が出るんです。
なら面倒だ、年功にしちまえ、っていうのが過去の経緯だと思います。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/08/18 11:38