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2012/09/17

「鈴本秋の喬太郎まつり」中日(2012/9/15夜)

9月15日、練馬から上野に移動し「鈴本秋の喬太郎まつり」の中日へ。落語聴くのもラクじゃない。
鈴本演芸場9月中席夜の部は、喬太郎が日替わりで新作と古典の2席を10日間続けるという趣向。中日は新作を仲入り前、古典をトリで。
既に10日間前売り完売ということで、相変わらずの人気の根強さがうかがわれる。この日は立ち見も出ていた。
寄席の立ち見ってぇのは何度か経験したが、ありゃ大変ですよ。いい場所を取ると、その場から離れると他人に取られてしまうのでトイレにもいけず5時間辛抱したことがある。

<  番組  >
柳家喬之助「猫と金魚」
翁家和楽社中「太神楽曲芸」  
三遊亭歌武蔵「黄金の大黒」
柳家喜多八「旅行日記」
アサダ二世「奇術」
柳家喬太郎「派出所ビーナス」         
~仲入り~
ホームラン「漫才」
隅田川馬石「安兵衛狐」
柳家小菊「粋曲」
柳家喬太郎「小言幸兵衛」
         
喬之助「猫と金魚」
この落語は例えば冒頭の
主人「番頭さんや、金魚鉢に入っている金魚、無くなってるんだけど、どうしたい?」
番頭「私、食べてませんよ」
といったナンセンスなギャグが特長なのに、喬之助のように普通に喋ったのでは面白味を殺してしまう。
自身で「私の落語はあまり面白くない」と語っていたが、この人の高座を何席か聴いてみて方向性が定まっていない気がする。

歌武蔵「黄金の大黒」
マクラで今回の芝居には喬太郎の独演会には来ているが寄席は初めてという人が多い気がすると言っていた。他の演者になると無関心という人がいるというのだ。この日に限ればそういう傾向は無いように思った。
ネタは時間の関係からか前半で切ったが、大家の倅が黄金の大黒を掘り当てたということで長屋の連中が入れ替わり立ち代りでお祝いの挨拶をする場面が良く出来ていた。
着実に力をつけてきている。

喜多八「旅行日記」
落語家の高座への上がり方は個性があり、緊張感を漂わせて上がる人、勇んで上がる人、小股でゆっくり上がる人、憮然とした表情で上がる人、色々だ。
喜多八は脱力系で上がってくるが、ネタに入ると熱演、この落差が魅力だ。
旅館サービスについての薀蓄をマクラに本題へ。
3年前には美味しい鳥鍋、2年前には美味しい豚鍋を食わせてくれた古びた旅館に友人を連れて来てみれば、実は・・・、という噺。
殿下ワールド全開。

喬太郎「派出所ビーナス」
お客さんで喬太郎を知らなかったという人?と訊いたら、3人位がハーイと手をあげていた。寄席だから色んなお客がいる。
新幹線で大声を出す客を注意していた車掌が、いっこうに止めようとしないと終いには脅かして止めさせていたというエピソードなど、本題が短いからマクラにたっぷりと時間をかけてネタへ。
池袋駅前に女性だけの交番ができ、そこには様々な前歴の婦人警官が勤務する。旅館の女将だったり、メイドだったり。どうしても前の職業の癖が抜けないところから起こる騒動を描く。
他愛ないストーリーで、専ら演者の話芸や仕種で聴かせるネタだが、さすが喬太郎は達者だ。
ただこのネタは池袋演芸場向きなのでは。

ホームランの「たにし」は三波伸介の弟子だったんだ。どこか浅草のボードビリアン風な匂いがすると思っていたら、そのせいか。
いつもと違って歌舞伎の所作を演ってみせたが、堂に入ってる。
このコンビ協会への入会こそ浅いが、芸の確かさではトップクラス。

馬石「安兵衛狐」
膝前でこういうネタをちゃんと演る姿勢がいいじゃありませんか。
「野ざらし」に少し似てるが、こちらの方がメルヘンチック。
この人も着実に力を伸ばしてきている。

小菊さん、あんな作家と別れてボクと結婚してください。
あなたは三味線だけ弾いてくれればいい。家事は全てボクがやります。

喬太郎「小言幸兵衛」
近年では圓生の名演があり、志ん朝やこの喬太郎も圓生の演出をベースにしている。
手元に2009年の高座のDVDがあるが、その当時と比べて一段と良い仕上がりになっている。例えば以前のものは家主の人物描写にブレがあったが、今回は終始どっしりと構えていた。
ただ惜しむらくは咳き込みがひどく、度々短い中断があったことだ。咳の結果声もかすれるので、豆腐屋の啖呵や、仕立て屋の芝居噺の所で一部セリフが聞き取りにくい箇所があった。特に都々逸を一節うなる場面では声が出ず、あれならそのまま詞を語った方が良かった。
人気落語家ともなれば一日に3席4席演ることも珍しくないし、生身の身体だから体調が悪い時もあるだろう。
喬太郎の高座ではしばしば声の状態が悪い時に出くわす。
噺家にとって声はメシのタネだ。普段からよくケアをして、高座には出来るだけ良好なコンディションで臨んで欲しい。特に今回のような特別のイベントの時は。
そこだけが残念だった。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

練馬から上野への昼夜強行軍だったのですね。ほめ・くさんもお若い!
鈴本は、行きたかったですが、日程を決めれない状況もあって、結局行けそうにありません。落語ブログ仲間のSさんは、初日に行って、豪華な顔ぶれを楽しまれたようです。
扇辰の出番でサプライズもあったようです。
鈴本は、末広亭に対抗する形で喬太郎のダブル企画を実施したのでしょうが、例えば、さん喬・権太楼企画のように喬太郎・扇辰の交互での主任の番組のほうが、私にはうれしいかもしれません。
喬太郎は、連戦(?)が続くとどうしても声に疲れが出るようです。
まぁ、彼としては、チャレンジなのでしょうし、それも重要でしょうが、私は学校寄席も含め仕事を断れない喬太郎には、少し仕事を選んででも、量より質を求める時期のような、そんな気がします。

小言幸兵衛様
この日は喬太郎を3席聴いたのですが、1,2席は何でもなく3席目になって記事に書いたような状況になりました。やはり仕事量が影響しているのかなと思います。
声帯の強さには個人差がありますので、ケアを含めた自己管理が求められるでしょう。

「小言幸兵衛」は最近、文楽(黒門町)のものをCDで聴きました。言葉遣いのぞんざいな男は追っ払うように対応し、丁寧な男にはお茶さえ出すという変化が面白いと思います。その後の飛躍的な想像も・・・圓生の演じたものは未聴ですので、比較はできませんが。

当日はあの喬太郎のことですので、現代的なクスグリを入れて演じたのでしょうか?

福様
圓生の演出の特徴は、ラストの心中話を芝居噺風に演じる点です。浄瑠璃を一節語るのですが、ここで圓生の素養が活きてきます。
志ん朝や喬太郎もこの型で演じていますが、やはり圓生の芸には及びません。
喬太郎はこのネタに関してはあまりクスグリを入れてません。せいぜい別れろと言われた豆腐屋やキレル場面で現代言葉になる程度ですか。
全体の出来としては悪い出来ではなかったと思います。

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