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« 【街角で出合った美女】アルメニア編(1) | トップページ | 「鈴本秋の喬太郎まつり」中日(2012/9/15夜) »

2012/09/16

柳の家の三人会(2012/9/15)

9月15日、練馬文化センター大ホールで行われた「柳の家の三人会」、3人とは花緑、喬太郎、三三。
この日は夕方から「鈴本秋の喬太郎まつり」もあるので、これじゃまるで喬太郎の追っかけだ。
近くの人がビラをめくりながら「今日のプログラムが入ってないわ、いつもはあるのにね」と言っていたが、今日はありませんよ、主催が「夢空間」だから。その代り他公演のビラは山ほど用意してございます(この日は比較的少なかったけど)。
こういう興行会社が幅をきかせてるってぇのも困ったもんだ。
ここの小ホールは何度か来たことがあるが大ホールは初めて。傾斜が大きいので前の人の頭が気にならず見やすい。

<  番組  >
前座・柳家圭花「狸札」
柳家喬太郎「錦の袈裟」
~仲入り~
柳家三三「乳房榎(の内「おきせ口説き」)」
柳家花緑「妾馬」

圭花は花緑の10番目の弟子だそうだ。あの年で10人か、現役ではさん喬に次ぐのでは。人望が高いのかな、それとも入門しやすいのか。
喬太郎は未だ弟子を取らないようだが、そろそろ後継者の育成に取りかかるキャリアに達しているんじゃなかろうか。弟子を育てるのは落語家の使命でもある。

喬太郎「錦の袈裟」
マクラでご当地練馬について思いを語っていたが、客の大半は区外から来ていたと思われる。
10代目文治が江戸言葉にやかましく前座が「有難うございました」などと言うと、「有難うございますだろう、感謝の言葉に過去形はねぇ」と叱ったそうだ。
これは江戸弁に限らず「有難うございました」という言い方は間違っている。過去の出来事であっても、今も感謝してるなら現在形が正しい。いつごろから誰が言い始めたか知らないが、誤用がすっかり幅をきかせてしまった。
喬太郎の演出は円生のそれをほぼ踏襲している。
この噺、錦の反物が10人分しかないのに11人いるからと、与太郎だけは自己調達して来いと言われてしまう。知的障碍者として頭から差別されるわけだ。
処が袈裟を褌にした与太郎だけがもてて、他は皆すっぽかしを食う。
この噺の原型をこさえたのが盲の小せんというのも何となく肯ける。
花魁と一夜を明かした与太郎がすっかり頭脳が冴えてしまうというクスグリが効いていた。

三三「乳房榎」、圓朝作の長い怪談噺のうち発端の「おきせ口説き」の場。
ストーリーは。
武士から絵師になった菱川重信、”おきせ”という絶世の美人を妻に迎える。
ある時、近くに浪人・磯貝浪江という男が重信の弟子になる。良く気が付き絵も上手かったので評判は上々。
師匠の重信が南蔵院から天井画の龍を頼まれたので、供を連れて寺に泊まり込みで絵を描き始めた。
浪江は留守宅に毎日のように訪ねてくるようになったある日、仮病を使って泊めて貰い、夜更けに起き出し横恋慕していたおきせに情交をせまった。最初からこれが目的だったのだ。
激しく抵抗するおきせに、浪江は幼い息子を殺すと脅し思いを遂げる。
一度だけ二度三度と重なるうちに今度はおきせの方から誘うようになっていく。
浪江としては、絵を描き上げて重信が帰ってきたらこの仲は終わってしまうので、それならいっそ・・・。
オリジナルをかなり端折っていたが、それでもここまでで全体の4分の1位。
三三も言ってたが、これからが面白くなる。
三三は声が良く通り歯切れも良いのでこうした人情噺や怪談噺に向いている。これは師匠・小三冶や大師匠・先代小さんにもない優れた素質だ。客席も引き込まれていた。
将来、柳の看板を背負うのはこの人だろう。

花緑「妾馬」。長かった、と言ってもフルバージョンではない。
お鶴を見初めた殿様の家来が、彼女の住む長屋を訪ねるところから始まる。奉公にと聞かされた大家はお鶴の母親を訪れ了承を求める。
このプロローグの部分にかなり時間をかけていた。
お鶴が跡取りを生んだという知らせで大家が八五郎を呼び、殿の招きだから城に伺うようにと伝える場面で、花緑がダレテしまった。肝心の言葉遣いを丁寧にしろと「頭に”お”を付けて、終いに”たてまつる”」だと、大家が八五郎に教える所を抜かしてしまった。
やはり始めの部分に余計な時間をかけ過ぎたからだろう。
ミスに演者自身が気が付いたのだろう、八五郎が城門を入り田中三太夫と共に殿の御前に進むまでが集中力を欠いていた。
八五郎が酔い始める頃になってからは立ち直り、最後はホロリとさせて終わる。
ミス以外にも、八が時折り現代言葉のような喋り方をするのと、殿様の風格が欠けていた点が気になった。
総じてあまり感心できない一席だったと思う。

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コメント

ご尤もな批評、恐悦至極です。

花緑、仰有るとおり三三の毒に当たってトチッてましたね。「頭に"お"を付けて、終いに"たてまつる"」... 全く抜けてたのには驚きました。
やっぱし、練馬は地方公演の扱いだてぇことが、よ〜く解りました。

三三も地方公演ならそれなりに、こんな演目を掛けちゃあいけませんな。まるで温習ってるみたく、あんなところで止めてもらってもねぇ...

喬太郎、揚げ物の食べ過ぎで物凄い出っ腹!もう太鼓腹とか演れません。針を刺したらパンクしちゃいますもんね。
--

よたろ〜@練馬在住様
花緑のミスはいただけません。気が付いたなら三太夫から注意させる手もあったと思うのですが、妙な言い訳をしたのが却ってアダになりました。
三三のネタはシリーズ物ですから、独演会などで演じた方が良かったと思います。
喬太郎はあの太鼓腹を活かして「幇間(たいこ)腹」を得意としています。
全体にイマイチの感のある会でした。

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