鈴本「志ん陽・文菊 真打昇進襲名披露」(2012/9/22)
9月22日、鈴本演芸場9月下席夜の部は「古今亭朝太改メ古今亭志ん陽と古今亭菊六改メ古今亭文菊」の真打昇進襲名披露興行。これから50日間におよぶ興行の2日目であり、文菊の初トリでもある。
入りは満席というわけにはいかなかったが、会場の熱気は一之輔に負けてない。
~真打昇進披露興行~
三遊亭金兵衛「つる」
古今亭志ん輔「替り目」
翁家和楽社中「太神楽曲芸」
古今亭志ん橋
金原亭伯楽
三遊亭圓歌
昭和のいる・こいる「漫才」
橘家圓太郎「真田小僧」
林家正蔵「悋気の独楽」
林家木久扇
~お仲入り~
「真打昇進披露口上」(下手より司会の志ん輔、伯楽、文菊、志ん陽、志ん橋、木久扇、圓歌)
柳家小菊「粋曲」
古今亭志ん陽「のめる」
林家正楽「紙切り」
古今亭文菊「井戸の茶碗」
ネタが書かれていないのは漫談か小咄、新真打を除き持ち時間が短いのでネタも全て短縮版。
出演者について補足すると、志ん橋は志ん陽の現在の師匠、伯楽は文菊の師匠・圓菊に代っての出演。
仲入り前は小三冶と木久扇の交替出演なので、小三冶を見たい人は日にちを確認してください。
新真打は全日程に出演し交互にトリを取るので、お目当てのトリを見たい人はやはり出番を確認してください。
「真打昇進披露口上」はまだ二日目ということもあって真面目な口上が続く。
志ん陽については最初の師匠が志ん朝、次いで志ん上と師匠を亡くした中で苦労してきたことが語られた。
文菊については坊ちゃん育ちで厳しい師匠の圓菊に鍛えられて成長し、前座から10年で真打という最近では異例の抜擢であることが紹介された。
また小三冶会長の実力で昇進を決めるやり方に圓歌は賛意を表し、伯楽は今年の昇進者に「柳」から一人も入れなかったのは英断だと語っていた。アタシも同感。
志ん陽「のめる」
口癖で一人は「つまらねえ」、もう一人は「のめる」。悪い癖なので互いに止めよう、ついては口癖を出した方が相手に50銭の罰金を支払うと約束する。こうなると賭けになるわけで、何とか相手に口癖を出させようとあの手この手と仕掛けてゆく。
登場人物は男二人と相談にのる隠居の3人。
今年志ん陽の高座を何席か聴いてきたが、以前に比べ語りやセリフが一本調子という点はかなり改善されていて、間の取り方も工夫されてきている。
しかし人物の演じ分けは十分とはいえず、もう少し3人の造形に工夫が必要かと思う。
こうした欠点にも拘らず、全体をフワッと包み込むような雰囲気がこの人の特長なのかも知れない。そうした持ち味は一之輔や文菊にはない素質といえよう。
文菊「井戸の茶碗」
結論からいえばこのネタに関しては真打の中堅クラスの出来栄え。とても昨日今日真打になったというレベルとは思えない。
先ず主要な登場人物である屑屋=清兵衛、浪人=千代田卜斎、細川家家来=高木佐太夫の造形、演じ分けが良く出来ている。
間や緩急も巧みで、屑屋が浪人宅と細川家の間を行ったり来たりする場面の切り替えがスピーディーで淀みがない。
何よりこの人は客に対する見せ方が上手い。芸人にとって大事なのは客がどう感じるかであり、その点をきっちり計算できている。
品の良さがこのネタにニンだ。
初トリとしては大成功だったといえよう。
対照的な二人の芸風、これからどう発展してゆくのか楽しみだ。
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コメント
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前売り券持ってるんですが、いけるかなあ。
投稿: 佐平次 | 2012/09/23 11:23
佐平次様
私もチャンスがあれば志ん陽のトリの時に、もう一度行きたいと思ってます。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/09/23 11:32
文菊か。どうも菊六という名前の印象が強くてとまどいます。品の良さというお話、おっしゃるとおり。個性こそ違いますが、精進すれば三三的な人気を得ることができると思っております。
投稿: 福 | 2012/09/26 08:01
福様
そうですね、三三に近いですかね。
文菊の課題はむしろ滑稽噺でしょう。
もう少しバカにならないと。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/09/26 10:08