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2012/10/07

#13三喬・喬太郎二人会(2012/10/6)

10月6日は昼から芝居、夜は落語会の変則Wヘッダー。定退後、手帳というものを持ち歩かなくなり時折りWブッキングしてしまう。この日は夜と昼で時間がずれていたので丁度良かったけれど。
順序を変えて夜の国立演芸場「第13回三喬・喬太郎 二人会」を先に。
年1回で東京と大阪の交互開催、今年は東京なので喬太郎がトリ。開口一番は東京の時は上方の噺家が、大阪の時は東京の噺家が演じるという、しかも一門以外の若手を起用するという凝った趣向になっている。
もう一つ、番組のチラシが配られるがこれがA4の見開きで主催者の挨拶が1ページぎっしり書かれている。「みほ企画」代表の山口一儀さんの姿勢の顕れだ。「夢空間」なんざぁ爪の垢でも煎じて欲しい。
今回は三喬の師匠・笑福亭松喬が癌と闘いながら高座を務めている記事が載っていて、その中の言葉。
「落語の高座に上がっているときだけは、癌のことが忘れられますねん。運転してるときも、安全運転せなアカンと集中して、癌のことを忘れます」。
重いなあ。

<  番組  >
桂鯛蔵「二人ぐせ」
柳家喬太郎「バイオレンスチワワ」
笑福亭三喬「くっしゃみ講釈」
~仲入り~
笑福亭三喬「七福神」
柳家喬太郎「真景累ヶ淵より宗悦殺し」

開口一番の鯛蔵「二人ぐせ」、東京でいえば二ツ目相当だそうだが、それなりの高座といった所。

上方落語はなかなか聴くチャンスが少なく、この間、中堅落語家を中心に何枚かDVDを購入し観てきた。
その範囲でいうと、笑福亭三喬が最も優れている。派手なパフォーマンスがあるわけじゃないしネタの改変や余計なクスグリもない。それでも十分面白いのは偏に話芸に秀でているためだ。
この日の2席もその実力をいかんなく発揮していた。
三喬の1席目「くっしゃみ講釈」。
落語は語るに対し講釈は読む。講釈師が一段高い位置にいるのは、元々が武士だった人たちが始めた芸だからだそうだ。戦記ものなど英雄豪傑が活躍する話が中心なのはそのためなのだろう。一段低く見られる噺家としては大変面白くない。そこでこんなネタをこしらえたんではなかろうか。
見せ場はカラクリを一段語るところと、後半の講釈の場面。
八百屋へ胡椒を買いに行かされた男、品名を忘れたので、「覗きカラクリの演目」→「八百屋お七」→「お七の恋人」→「小姓の吉三」→「胡椒」を連想する。
このカラクリを楽しそうに語る男、八百屋の店先に人だかりができて困惑する店主との対比が実に良くできている。
後半の講釈「三方ヶ原軍記」は名調子で始まり、やがてくしゃみの連発で壊されていく過程も丁寧に描かれていた。
三喬の2席目「七福神」は初見。
マクラで喬太郎の「チワワ」に対抗するためにと主催者からリクエストされたとのこと。
元々は江戸時代の落語家・月亭生瀬(いくせ)がこさえた小咄を原形に、「超古典落語の会」のくまざわあかねさんが脚色したネタだそうだ。
ストーリーは七福神が慰安旅行に行こうと三十石の舟に乗り、やがて旅館に着いて飲めや歌えの大宴会。そこに隣の部屋の武士から静かにせよとの命令・・・。
古典のパロディから楽屋オチ(上方落語の世界なので分からないことが多かったが)、ギャグ満載で三喬の新しい面を見せてくれた。

対する喬太郎、10年に一人の逸材といっても過言ではあるまい。ミレニアムの年に真打に昇進して12年、その後の昇進者で喬太郎を超える噺家は出現していない。
喬太郎の1席目「バイオレンスチワワ」。
マクラで喬太郎の新作の中では下の下と言ってたが、確かに作品の出来としては良くない。専ら喬太郎演じるチワワの真似だけで笑わせるネタ。
それでも客席をもたせられるのは、この人の芸の力としか言いようがない。
喬太郎の2席目「真景累ヶ淵より宗悦殺し」も初見。
三遊亭圓朝作の長い長い怪談噺で、この「宗悦殺し」はその発端。
あらすじは。
江戸時代の盲人は鍼灸の他に金貸しという職業が認められていた。今でいう身障者に対する支援の一環というべきか。
鍼医の皆川宗悦もあちこちに金を貸していた。暮も押し詰まった極月の20日、二人の娘の嫁入り資金を貯めなばならぬとて、霙のなか小普請組・深見新左衛門宅へ借金の取り立てに出向く。
厳しく返金を迫る宗悦に激高した新左衛門は、宗悦を斬り殺し、死骸を家来の三右衛門に捨てさせる。そのまま三右衛門は故郷の羽生村へ引き込む。
その件を苦にして新左衛門の妻は病の床につき、代わりに女中として雇ったお熊と関係を結び懐妊させる。
翌年の12月20日、妻の病気の療治のため呼んだ流しの按摩が、いつしか宗悦の姿に変わる.思わず斬りつける新左衛門,すると宗悦ではなく妻を斬り殺してしまう。死骸は門番の勘蔵に始末させる。勘蔵は新左衛門の次男・新吉を連れて下谷大門町へ。
ここまで。
この後、新左衛門一家には次々と不幸が訪れ、やがて宗悦の長女・豊志賀と新左衛門の次男・新吉が出会い、有名な「豊志賀の死」へとストーリーは展開してゆくことになる。
登場人物の造形がクッキリと描かれ、ゾクゾクするような緊張感に溢れた見事な高座。
ここのところ珍しい圓朝作品を掘り起しつつある喬太郎の挑戦は、まだまだ続きそうだ。
真景累ヶ淵とチワワ両方を演じられる噺家って、喬太郎以外にいますか?
凄いの一言。

東西の実力者のぶつかり合い、見応え十分。

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コメント

「落語初心者に安心して薦められ、しかも通好みの実力を持つ上方落語家」として真っ先に挙げられるのは三喬師匠だと思っているので、取り上げて頂いて嬉しい限りです。
実は松喬一門としては現代的ギャグが多い方なのですが、おっしゃる通り揺るぎない話芸に裏打ちされていればこそですね。
昨年の大阪での独演会では、ゲストの米團治師匠との対談で「あなたは実は米朝に近い」と言われていたのですが。
ところで三喬師匠で『くっしゃみ講釈』をまだ聴いたことがないのですが、講談は江戸に合わせて三方ケ原になっていたのでしょうか。
上方では通常、大坂夏の陣の『難波戦記』なのですが・・・。
なお大阪の旭堂一門は、ここで登場する講釈師「後藤一山」の受難の一生を創作し、新作講談としてシリーズ化しているとか。
講談の現状を考えると『くっしゃみ講釈』は気の毒な噺のようにも思えます。

喬太郎師匠は、健康にさえ気を付ければ、やはり天下を取る方なのでしょうか?
円朝物を生にしてもCDにしても、通しで聴いてみたいものです。

投稿: 明彦 | 2012/10/08 00:35

明彦様
「七福神」は三喬でと指名されたようですが、確かにこの噺、他の人では難しいでしょう。同時に三喬の新しい面を引き出したように思われベストチョイスであったと思われます。
「くしゃみ」は「くっしゃみ」に訂正しました。違うんですね。

喬太郎ですが、数年前には円朝の「牡丹灯籠」を2回に分け、4時間かけて通しで演じたことがあります。
今回の「宗悦殺し」も高座にかかるのは珍しいし、もしかしたら「真景累ヶ淵」の通しにもチャレンジするかも知れません。
人気に安住せず常に挑戦する姿勢を保っているので、将来を担える逸材の一人であるのは間違いないでしょう。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/10/08 11:02

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