劇団、本谷有希子「遭難、」(2012/10/13)
10月13日、東京芸術劇場シアターイーストとで行われた「劇団、本谷有希子 第16回公演『遭難、』」を観劇。
2006年の初演で鶴屋南北戯曲賞を受賞した本谷有希子の代表作の再演とのこと。
家に戻って女房が「どうだった?」ときくから、「隣の席にいた女性の足がキレイでね」と言ったら、「あんた、なに見てきたのよ!」とお叱りを受けてしまった。
どうも、根が正直なもんで。
作・演出:本谷有希子
<あらすじと配役>
舞台は放課後の職員室。
この学校(中学だろうか)の男子生徒が自殺をはかり今も意識不明。
そこへ生徒の母親(片桐はいり)が毎日乗り込んできては、担任の女教師・江国先生(美波)を責めたてる。
学年主任(松井周)や同僚の女教師・石原先生(佐津川愛美)が必死になだめるが、母親はいう事をきかない。
そこにもう一人の女教師・里見先生(菅原永二:男性が演じている)が割って入り、なんとか母親をなだめる。
処が生徒は自殺をはかる前に里見先生に遺書を書いていて、彼女はそれを読んでいたにも拘らず破り捨てていたことを石原先生に指摘されてしまう。
それを他の先生方にもばらされると里見先生は、子どもの頃にいじめを受け自殺をはかり助かったが、担任教師の一言で傷つきそれが生涯のトラウマになってしまった。そのため生徒からの遺書に対応できなかったと言い張り、却って学年主任らの同情を集めてしまう。
学年主任が担任する女生徒がストーカー被害にあっていたが、それも里見先生の策略と知った石原先生が指弾すると、今度は目の前で自殺すると騒ぎ出す。
やがて里見先生は事実が明らかになるのを阻止するために盗聴や盗撮を仕掛け、生徒の母親や同僚教師の弱みを握り脅していく。その中には生徒の自殺の原因が、もしかすると母親の虐待だった可能性も出てくる。
しかし、ひょんな事から里見先生の自殺の真相が明らかになり、次第に「トラウマ」語りが欺瞞であったことが・・・。
里見先生は一種のサイコパスだと思われるが、それを「トラウマ」だと装い、自らの悪事を他人の責任に転嫁してゆく。
そのことが暴かれる過程で、登場人物それぞれの真実も明らかになってゆくところが見所か。
ただ里見先生のミエミエの芝居に、周囲の教師がやすやすと騙されるのはリアリティに欠ける。この部分が感情移入できないと、この演劇のテーマに共感できないと思う。
生徒の自殺が実は母親の虐待だと暗示されることや母親と学年主任との不倫などは、いかにもという感じがして白けてしまう。
最終シーンで里見先生が改心したかに見えるのも安易で、この芝居の主題を弱めているのではなかろうか。
せっかく生徒の自殺という今日的テーマをとり上げながら、焦点がぼけたような結果になったように思えた。
出演者では母親役の片桐はいりが光る。サディスティックなモンスターピアレントは迫力十分で正に適役。
里見先生を演じた菅原永二は熱演ではあったが、やはり女形には無理があったように思う。主役の降板による急なキャスティングという点は考慮せねばならないだろうけど。
公演は23日まで。
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私も観ました。緊迫の2時間堪能しました。休憩無しっていいですね。
片桐はいりは別格なり。
投稿: ふわふわ | 2012/10/14 13:53
ふわふわ様
2時間、緊張感がありましたが、少しイライラさせられました。どうして周囲はこんな女性に騙されるのかと。
片桐はいりに脅されたら、私もビビリますね。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/10/14 16:07
同じ日(私は14時からのマチネでした)に観劇していました!ということで、つい勝手に親近感を覚えて初めて書き込みさせていただきます。
私は単純に、あまりにも、な里見先生に笑ってしまいました。信じられないくらイヤな奴なのに、稚拙でコミカルにうつって。
片桐はいりさんはさすがですよね。
ただ、先生を誘惑する設定に説得力ないかな(笑)
投稿: 京華 | 2012/10/19 16:03
京華様
私もマチネでしたから同じ空気を吸っていたことになります。
片桐はいりですが、ああいう人を可愛いと思い魅かれる男性もいます。男の先生にとってはタイプだったのかも知れません。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/10/19 21:39
お返事ありがとうございます!
マチネでしたか。ご一緒でしたね。
私のお隣りも、おひとりの紳士だったので、もしや(笑)上手寄りのドア付近でしたか?(なーんて。まさか。)
はいりさんの説得力の件については、見た目うんぬんではなく、もっていきかたがあまりにもコミカルだったので。。。(笑)
個人的には、はいりさん素敵で魅力的だと思います!
投稿: 京華 | 2012/10/22 11:30
京華様
ピンポーン、その”まさか”です。
という事は足のキレイな方というのは、あなたでしたか!
片桐はいりのあの強引さにも、男先生は魅かれたのでしょう。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/10/22 13:07