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2012/10/01

「雲助蔵出し」(2012/9/30)

台風17号が近づく9月30日、浅草見番で行われた「雲助蔵出し」へ。
明治の頃、浅草寺境内一帯を浅草公園と命名した。その「公園」を逆さ読みして浅草が「エンコ」と呼ばれるようになったとか。
昔から芸能人やヤクザはモノを逆さ読みする癖があり、ズボンをボンズ、パンツをツンパと言ってたようだ。銀座の姉ちゃんはザギンのチャンネエとなるわけだ。
お目当ては雲助の「妾馬」の通し(ネタ出し)。

<  番組  >
前座・柳家まめ緑「狸札」
柳亭市楽「幇間腹」
五街道雲助「つづら」
~仲入り~
五街道雲助「妾馬」(通し)

定例化しているこの会、客の大半が常連と思われる。だから客席からは「早く雲助を聴きたい」オーラが放たれているので、前に出る若手はさぞかし演りにくかろう。
市楽「幇間腹」は、ただ喋ってるというレベル。この噺で肝心のタイコモチに悲哀が出てない。

雲助の1席目「つづら」は初見。「葛篭の間男」とも。
珍しいネタで師匠・馬生の速記から起こしたとのこと。
マクラで江戸時代の間男(有夫の女性の不倫相手)が夫にばれた場合、町人の世界では7両2分(大判1枚相当)を支払うことで丸く収めていたと解説。圧倒的に男の数が多かった江戸の町の庶民の知恵だとか。
今でいえば慰謝料だろうが、現在の貨幣価値にすればおよそ100万円近いわけで、やっぱり不倫は高く付く。
ストーリーは。
博打の金を借りた男が筋の悪い男らからの取り立てに追われる。金の工面に行く途中、叔母さんに呼び止められ、質屋の旦那と男の女房が出来ていると告げられる。
男が2,3日家を空けると知った質屋の主は家に上がり込み、女房と一杯やっている。突然、そこへ男が戻って来た。女房は逃げ場を失った質屋をつづらに押し込む。
男は女房に詰問し、相手がつづらの中にいるのに気付く。
男がつづらを開けようとすると女房が必死に止め、男の借金を質屋の主が肩代わりしてくれた事を仄めかす。思い直した男はつづらを背負い、質屋に向かった。
質屋の番頭にこのつづらを質草に7両2分出せと迫る。
最初は断った番頭だが事情を察して・・・。
落語の世界では間男を扱ったネタは多いが、この噺は浮気というよりは深刻な事情をはらんでいる。
女房の方は亭主の借金の肩代わりという多少の打算はあっただろうが、質屋の主人は妻を亡くして日々老いる身。心の安らぎを求めて男の女房を深い仲になるわけで、浮気というよりは純愛に近いと言って良い。
そういう意味で、極めた近代的なテーマなのだ。
7両2分で全てが丸く収まれば御の字。
雲助は登場人物の性格、陰影を細かな表情で表現させ、この作品に深みを与えている。
上手い! の一言。

雲助の2席目「妾馬」(通し)
マクラでこの噺は後半まで演らないとタイトルの「妾馬」の意味が分からない。なぜ後半が演じられないかというと、それはつまらないからだと説明。アタシも通しは初めて聴く。
通行中の大名が長屋の娘・お鶴を眼にとめ、家来が家主を訪ねて屋敷に奉公に上がるよう申し付ける導入部から始まるが、長屋の連中が総出で井戸替えするシーンを視覚的に見せる工夫をしていた。
大家がお鶴の母親に大名の妾と持ちかけると、母親は自分のことと勘違いする場面を加え笑いを誘う。
ここまでがとてもスピーディーに語られる。
後はお馴染みの筋立てだが、殿の御前での八五郎の弾け方が見事。荒くれ者だが、そのクセ家族思いで人情モロイ、魅力的な人物として描かれている。
今ふと思ったが、映画のフーテンの寅さんと妹さくらの関係は、八五郎とお鶴がモデルなのでは。
ここまでで比較するのも何だが、先日の花緑の高座とは天と地ほどの差がある。その最大の理由は雲助が人間を深く捉えているからだろう。
後半は、50石の士分に取り立てられた八五郎の愉快なキャラがすっかり評判となり、遂には他の大名への使者を申しつかり、乗り慣れぬ馬に乗るが暴走。
「そのように急いでいずれへおいでなさる?」と訊かれ、「行く先は、馬に聞いてくれ」とサゲる。
後半も雲助が恐らく手を加えているのだろうが、とても面白かった。
1時間の長講だったが演者も観客も全くダレルことなく、十分に楽しませてくれた。

雲助は人情噺風の演目と滑稽噺のそれとでは別人のような表情を見せる。
毎度のことながら実に結構な独演会でした。

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コメント

おやおや、ここも御一緒でしたね。
私はイマイチ乗り切れなかったけれど。
もちろん期待が高すぎるのです、水準以上は間違いないのですが。

投稿: 佐平次 | 2012/10/02 14:20

会場であの人が佐平次さんかなと想像するのも楽しみの一つ。
「つづら」は雲助しか出来ないようなネタで、女房の表情変化が良く出来てました。
「妾馬」は先週、花緑の間延びした高座を観たばかりで、雲助の芸にただただ感心。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/10/02 16:17

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