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2012/10/28

#22三田落語会「さん喬・喜多八」(2012/10/27昼)

10月21日に風邪でダウンして、チケットを泣く泣く娘に譲った国立演芸場での「特別企画公演 芸術祭寄席 昼の部」、良かったそうですよ。
娘は芸術協会の高座を観るのが初めてだったのですが、予想以上でとりわけ次の3席が特に面白かったと言ってました。
桂文治「源平盛衰記」
春風亭小柳枝「抜け雀」
桂歌丸「井戸の茶碗」
行く前に歌丸はそろそろナマで見といた方がいいよと言っておいたのですが、とても元気そうであと10年は大丈夫そうだったとのことでした。

さて10月27日の「第22回三田落語会・昼の部」は「柳家さん喬・柳家喜多八 二人会」。
京浜急行の平和島~六郷土手間及び羽田空港線全線の高架化が終了し、羽田空港までの時間が短縮され列車も増便という、いかにも良い事ずくめの宣伝が行われているが、実はその陰で近距離客が割を食っている。
私の乗降駅は特急も急行も停まるのだが、朝夕の通勤時間を除いた日中ではかなり以前に特急が廃止となり、今回のダイヤ改正で急行も廃止となった。この時間帯は各駅停車だけとなってしまった。
この結果、つい先日までは三田へは一本で行けたのだが、先ず品川で、この日の場合はさらに泉岳寺で乗換となり、所要時間が倍近くかかった。
羽田に行くにも今までは直通で行けたのが、日中の間はこれからは蒲田で乗り換えねばならない。
電鉄会社としては長時間乗って貰わねば儲からないから近距離客を冷遇するという理屈なのだろうが、「便利になった」ことばかり強調するのは誇大広告ではなかろうか。

<  番組  >
前座・入船亭ゆう京「道具屋」
柳家さん喬「天狗裁き」
柳家喜多八「二番煎じ」
~仲入り~
柳家喜多八「噺家の夢」
柳家さん喬「品川心中(通し)」

この日のマクラでも語っていたが、喜多八は2年ほど前に大腸がんと診断され手術を行った。幸い早期発見だったのでその後の経過は順調のようだ。
病後はやつれた様な印象で顔色も悪く見えたが、最近は元に戻っている。
私の印象だが、リカヴァリーしてからの喜多八は以前に比べて変わってきたように思う。
本人曰く「前は虚弱体質なんてアザトイことを言ってけど、これからは瑞々しく行こうと思う」。
確かに病後の喜多八の高座は以前に比べ若々しく感じられる。少なくとも枯れた風情が鳴りを潜めた。
統計によれば高齢者の4人に一人は癌に罹るそうだ。
私たちもいずれそうした時期を迎える機会があるだろうが、その時にどう反応するだろうか、その後をどう生きるだろうか、喜多八の高座をみながら考えてしまった。

喜多八の1席目「二番煎じ」。
マクラでこの会には特別の思いがあると言っていたが、確かに気合が入っているのが見ていて分かる。
夜回りの一組目の月番、黒川の旦那、宗助さん、辰つぁんらの描写が実に生き生きとしている。
「火の用心」と呼びかけるのに黒川の旦那は謡で、次の人は浪花節、そして辰つぁんだけはかつて吉原で火の回りをしていただけにいい声だ。「助六じゃねえが煙管の雨が降るようだ」と見得を切り、調子に乗り昔の馴染の花魁とのノロケ話まで聞かせる始末。
番小屋の戻ってからの宴会は、始めは遠慮がちだが次第に盛り上がり、猪の肉をいつまでも食べ続け売る者、「私はネギが大好物」と言いながらネギとネギの間にしっかりと猪の肉を挟んで食べる者。
そこへ見回りの同心が現れ月番を問い詰めると、「それは、この宗助さんが」と言い訳。
このシーンでは宗助さんが陰の主人公で、これをカットする噺家もいるが気が知れない。
同心はよほどの酒好きか3杯もお替りし、断られると「拙者一回りまわってくる。二番を煎じておけ」。
8代目可楽の十八番で後の人は可楽の演出を踏襲しているが、可楽が昏い陽気であったのに対し喜多八は徹底して明るい。
人物描写の確かさも含めて近ごろでは出色の「二番煎じ」だった。

喜多八の2席目「噺家の夢」
軽い他愛ないネタだが、喜多八が楽しそうに演じているのが客席に伝わり沸いていた。
こういう噺でも良い味を出している。

さん喬の1席目「天狗裁き」
開口でいきなり噛んでしまい、おやおやと思っていたら鼻声で咳も出る。明らかに体調が芳しくなさそうで心配したが、一席無事に務めた。
さん喬が演じると天狗までもが可愛らしく見える。

さん喬の2席目「品川心中(通し)」
このネタの通しは初めてで、滅多にやらない「下」の粗筋は。
金蔵から心中のし損ないでお染が裏切った一件を聞いた親分は、一つ仕返しをしてやると怪談仕立てでだます計画を練る。
金蔵が再び白木屋に引き返し、お染は幽霊かと思ってびっくりするが、金蔵は打ち合わせ通り陰気な身なりと声で気分が悪いので奥の間で休ませて欲しいと言い、枕元に線香を焚いて一膳飯と水を置いてくれと頼む。
そこへ現れたのが親分と金蔵の弟に化け込んだ子分の民公が、お染に会って、「実は金公が土左衛門で上がったが、起請文も抱いていたのでお前さんの事が分かった。線香の一本も手向けてやってもらいたい」
と言う。
お染は、たった今しがた金蔵が来たばかりだとせせら笑う。
疑う親分に何よりの証拠と金蔵の寝ている部屋に二人を案内すると、打合せ通り金蔵の姿は無く、布団は水でびっしょり濡れ位牌が一つ残されていた。
さすがのお染も青くなり、金蔵との心中の一件を白状する。
こいつは恨みが残っていてお前は取り殺されると親分が脅し、「おめえがせめても髪を下ろして謝まれば、金公も浮かぶに違いねえ」と諭して、お染の髪を切らせる。
オリジナルではお染が回向料として五両出したところで当の金蔵が登場。
「あーら、こんちくしょう、人をだましたんだね。人を坊主にして、どうするのさ」
「そう怒るな。てめえがあんまり客を釣る(だます)から、比丘(びく=魚籠)にされたんだ」でサゲ。
この部分の筋書をさん喬は変えていて、親分が、金蔵とお染が心中の現場の桟橋に連れ出しお染を海に落とすつもりが、現れた金蔵が犬に追われて再び海へドボンで終わる。
この後半部分は面白くないという事からか普段は高座に掛からないが、今回聴いてみると十分に面白い。
特にお染の狼狽ぶりと、金蔵の弟にされた民公のトボケタ受け答えが笑いを誘う。
さん喬は体調が悪い中、長講を最後まで聴かせたのは、さすが。
ただ後半は未だ十分にこなれていない感があり、体調の良い時により完成度の高い高座を観てみたい。

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コメント

私も三田に行きました。
「二番煎じ」の同心ものすごく素敵です。
喜多八さんのハンサム度がたまりません。

「品川心中」長かった。

ふわふわ様
よくご一緒になりますね。会場でやたら目付きの悪い年寄りを見かけたら、それが私です。
こう書いたら、ホントに声を掛けてきた人がいてビックリしましたけど。
喜多八の同心、確かに颯爽とした二枚目でした。女性はグっと来るんでしょうね。

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