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2012/11/10

志ん陽・文菊真打披露「国立演芸場11月上席」(2012/11/9)

国立演芸場11月上席は「志ん陽・文菊真打昇進披露公演」、その最終日の前日11月9日に出向く。
新真打の公演だが前回は9月22日、つまり50日間の興行の2日目だったが、今回は49日目にあたり、つまり始めと終わりの両方を見たことになる。
二人にとっては千秋楽の前日で、どれだけ進歩したかが楽しみだった。

前座・古今亭きょう介「垂乳根」
<  番組  >
古今亭駒次「生徒の作文」
古今亭志ん輔「宮戸川」
笑組「漫才」
古今亭菊龍「饅頭こわい」
鈴々舎馬風「漫談」
-仲入り-
「披露口上」
古今亭志ん橋「無精床」
古今亭文菊「幇間腹」
アサダ二世「奇術」
古今亭志ん陽「抜け雀」

披露公演というのは新真打以外の演者は時間が短くなっていて、いずれの演目も「序」で終りあまり見るべきものはない。2件ほど気になったので。
駒次は新作中心のようだが、もっと古典を磨いたらどうだろうか。この人のフワッとした芸風は魅力的だと思うのだが。
笑組、しゃべりが達者なのに面白くないし、方向性(型)が良く分からない。

「披露口上」は下手から司会の志ん輔、文菊の師匠・圓菊(先月死去)に代わり惣領弟子の菊龍、文菊、志ん陽、志ん陽の師匠・志ん橋、協会幹部の馬風の並び順。
志ん橋からは、志ん陽の芸風は掴みどころがないのが特徴でしばらく聴いていると良さが分かると。
菊龍からは、師匠圓菊が元気なうちに文菊の昇進を報告出来て、さぞかし安心して旅だっで行けたと思うと。
志ん輔からは、志ん陽は甘えん坊で気に入らないことがあると拗ねる素振りをみせ、文菊は大人でしっかりしていると。

文菊「幇間腹」、以前の緊張感がすっかり取れてリラックスした高座。この人意外に神経が太い。
このネタ、近年では志ん生と3代目柳好が得意としていたが、演出はだいぶ違う。
柳好のものは、若旦那の凝っているものを聞きだすのに一八が小唄などの音曲を並べ自慢の喉を披露するのと、幇間の悲哀が色濃く出ているのが特長。柳好は芸者置屋の主だっただけにタイコモチにはリアリティがあった。
これに対して志ん生のは笑いを中心としていて、鍼も二本打ったとこで若旦那が逃げだしてしまう。
現在の演者は、やはり明るい志ん生の演出に従っていて、文菊もそう。
文菊らしく人物の演じ分けもしっかりとしていて出来は悪くなかったが、如何せん幇間がそれらしく見えない。これは一人文菊だけの問題ではなく、若手に共通した課題でもある。
吉原は無くなり花柳界が縮小してしまった時代に、花魁や芸者や幇間が活躍する古典落語をどう演じていくのか、悩ましい問題ではある。

志ん陽「抜け雀」、この日が披露興行最後のトリということで、古今亭のお家芸ともいうべき演目を選択したようだ。似たようなネタに「竹の水仙」があるが、あちらは「柳」。
改めて志ん陽の高座を見て、この人の芸風は大師匠・志ん生に似ている(レベルは別としてだが)と思った。
このネタでも宿の主を除けば登場人物の演じ分けが十分とは言えない。
反面、気の弱い亭主とガミガミ文句ばかり言う女房との対比、「顔の真ん中にぴかっと光ってるものはなんだい」というセリフが、絵師、女房、老人に三度繰り返される「反復ギャグ」の可笑しさ、そしてこの物語の持つ爽やかさといった見所はしっかり押さえている。
あまり細部に拘らず大きく捉えるという、これが志ん陽の芸風なのだろう。
対照的な二人、これからも良きライバルとして刺激し合い伸びていって欲しい。

この日は平日の昼間にかかわらず9分の入り、お客から支持されたということだ。
今年の春と秋の真打抜擢は興行面も含めて成功と言える。
落語協会は来年から再び年功序列に戻すようだが、結果はどう出るだろうか。

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コメント

文菊の演目は私が行った池袋では「子は鎹」でした。しゃべりが巧みで、親父も息子もよく出来ていたと思います。「若いくせに年寄り臭い」と評されているそうですが、それも逆に個性として売りにすればよいと思った次第です。

投稿: 福 | 2012/11/11 20:29

福様
文菊は客に対する見せ方が上手い、良い意味でのナルシシズムを持っていると思います。
語りがしっかりしている所は人情噺向きです。
もっとバカになれると、もう一皮剥ける気がしてますが。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/11/11 22:37

落語家も日の当たる商売になって(実情はともかく)、かつてのような影を感じさせる人が少なく、いや皆無かもしれないですね。
志ん朝が逆立ちしても志ん生を抜けなかったのはそこでしょう。

投稿: 佐平次 | 2012/11/13 09:34

佐平次様
文菊は自宅が自由が丘、学習院出ですからね。
近ごろの入門者は氏育ち、頭も良さそうな人ばかりで、落語の登場人物とはかけ離れる一方です。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/11/13 10:16

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