立川流追善興行(2012/1/23夜)
11月23日、よみうりホールで行われた「立川談志一周忌『立川流追善興行』」、全部で4公演のラスト夜の部へ。
もう一年か。
CDやDVDの売れ行きが良いようだし、書店に行けば談志本が積み上げられ、近々「映画 立川談志」も公開される。死してなおブームが続く。
アタシの談志ベスト・スリーは「源平盛衰記」「相撲風景」「やかん」。特に「源平」はオンリー・ワンで、このネタに関してはこれからも談志以上のものは出て来ないだろう。
< 番組 >
直弟子全員「口上」
立川談修「宮戸川」
立川平林「踊り『安来節』」
立川談慶「踊り『かっぽれ』」
立川雲水「ん廻し」
立川生志「初天神」
野末陳平 高田文夫 立川志らく「鼎談」
立川談笑「粗忽の釘」
~仲入り~
松元ヒロ「スタンダップコメディ」
立川志らく「饅頭こわい」
立川談春「棒鱈」
冒頭のセレモニー、談志の出囃子「木賊刈」(とくさがり)で幕が上がると、正面に談志の写真。その下に直弟子全員(談笑が遅刻)並び、立川流代表・土橋亭里う馬による「口上」と弟子の紹介が行われる。
談志が亡くなった時点で真打になっていなかった直弟子はそれぞれの師匠の門下に移されたようだが、二ツ目で談修だけは生前「真打に」というお墨付きがあったとかで最後の直弟子となった由。
その談修「宮戸川」、このネタで談志に褒められたそうだが、平凡。どこが優れているのか良く分からなかった。
平林は談志が亡くなる前の病室で踊って喜ばれたという「安来節」を、談慶は師匠の思い出話をした後に「かっぽれ」をそれぞれ披露。
でも落語家の踊りねんてぇものは寄席のような狭い空間で演るもので、こんな大きいホールには不釣り合いだ。
談慶の落語は聴いてみたかった。
雲水は初見で「ん廻し」。上方落語では「田楽喰い」。古典だが「ん」の付く言葉は全て現代語に直していた。ハッキリとした口調でしゃべるので大阪弁が分かり易い。
東京の団体に所属していて上方落語を演るひとはいるが、その反対はきいたことがない。どなたか理由を教えてくれませんか。
生志は久々だったがやはり上手い。マクラから客席を掴み「初天神」へ。
「おとっつぁん、羽織着てどこ行くの?」「恐いとこへ行くんだ」「なに、ガザ地区?」「そんなとこじゃない」「じゃあ、足立区?」「あそこも恐いな」ってな調子でクスグリを入れるのだが、これが効果的。
反発し合いながらも父子の情愛が描かれていて、短縮版だったが良い出来だった。
かねがね志の輔以後の弟子の中では、この人の実力がトップだと思っている。全体では、ぜん馬。
陳平と高田文夫と志らく「鼎談」は、始めは陳平と志らくの対談だったが、途中から心肺停止の病から復帰した高田が加わった。
陳平と談志のラジオ番組では、陳平のために毎回談志が手作りの弁当を用意してくれていたなどのエピソードが紹介されていた。一度二人が喧嘩した時、後で談志が何度も電話してきたが陳平が留守で、終いには陳平の自宅まで訪ねてきたとか。談志の一面を物語る。
陳平がそんなイイ話をすると高田が混ぜっ返し、場内は爆笑。
談笑「粗忽の釘」は、身体も声も大きく陽気な高座は相変わらず。
オリジナルを変えていて、タイトル通り長屋の連中がみんな粗忽者という設定になっている。
大らかな芸風ではあるが、雑な面もある。
松元ヒロは不思議と談志から好かれていたようで、談志の独演会でもしばしば膝をしていたとか。
なにせ普段から「平和」「憲法9条」などをテーマにしていて、この日も「脱原発」デモに参加した時のネタや、石原慎太郎を批判するネタを演じていた。
政治的立ち位置としては談志と正反対の筈だが、こういう芸人を抱え込む度量の深さがあったといういことだ。
志らく「饅頭こわい」、談志一周忌なので、先代小さんの十八番をということでネタへ。
談志の芸風に最も近いのだが、何かが決定的に違う。それは恐らく人間性に起因するもので、志らくは良い人なのだ。
だから仮に生涯かけても、談志には近づけないだろう。
やはりトリは談春、こちらも小さんの十八番で「棒鱈」。
このネタ、時期は幕末で薩長の侍が江戸の町に入ってくる。徳川のお膝元へ来て大きな顔をしている所へもってきて、江戸文化と薩長とは全く肌が合わない。江戸っ子としては大変面白くないし、彼らの言動が癪にさわって仕方がない。
自分たちは男同士なのに、隣部屋は田舎侍ひとりに芸者が3人もついている。飲むほどに酔うほどに反感が次第に怒りに代わり、乱入を咎められた際に爆発する。
談春の演出はその辺りの空気を十分伝えていたように思う。
欲をいえば一周忌追善の千秋楽にふさわしく、談志十八番の中からネタを選んで欲しかったのだが。
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私も某大手書店の1コーナーが談志の本で占められているのに吃驚しました。弟子たちの談志論も随分あったやに記憶しています。
あの志ん生に匹敵するカリスマ性の持ち主で、今後も語り継がれていくんでしょうね。
投稿: 福 | 2012/11/28 07:57
福様
談志人気のひとつに多くの優秀な弟子を育て上げたことが挙げられると思います。
熱狂的なファンに支えられ教祖に似たカリスマ性の持ち主なので、当分人気は続くのでしょう。
ただ芸そのものについては評価が分かれますが。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/11/28 09:00