「柳家小三冶独演会」(2012/12/21)
12月21日、銀座中央会館で行われた「柳家小三冶 独演会」へ。
お気づきの方もあるだろうが、小三冶の会は久々だ。
理由は二つある。
一つはチケットが取れない。もっとも千人ニ千人という大ホールなら可能だろうが、小三冶の芸はそんな大きな小屋で聴くものではない。ここ数年は異常とも思える人気の高さだ。
二つ目は、数年前に立て続けに長いマクラを聴かされて閉口した。落語の楽しみ方には色々あるだろうが、私は本題に関係ない長いマクラは好まない。まるでエッセーなどと囃す向きもあるが、気が知れない。
その後、今度は鈴本のトリではマクラ抜きだったが不出来で空振り。
そんなこんなで暫く敬遠していた。
年末が迫って急に小三冶が聴きたくなったのが今回。果たしてチケットが取れない。別のサイトでチャレンジして3回目にようやくゲット。
お客は思ったより若い人が多く、女性の比率が高い。
< 番組 >
柳家ろべえ「たけのこ」
柳家小三冶「千早ふる」
~仲入り~
柳家小三冶「茶の湯」
前座もゲストもないというのは良い。スッキリしている。公演時間も正味で2時間、2席ならこの位の時間が良い。
ろべえ「たけのこ」
喜多八門下の二ツ目。小三冶の孫弟子にあたる。
ストーリーは、隣の武家の筍が塀をくぐってこちらに顔を出した。家来に言いつけて切り食べようと相談がまとまり、ついては家来に隣家に挨拶するよう命じる。口上は我が家に侵入して不届きにつき斬り捨てたと。隣家も黙っちゃいない。それなら死骸は当方で引き取ると言い出す。とって帰った家来にもう一度隣家に行かせ、それなら死骸は胎内に骨は雪隠に収め、衣装だけはお返しするとの口上と共に筍の皮だけを持参させるが・・・。
語りがしっかりしてるし、何より短いのが良かった。
小三冶の1席目「千早ふる」
駐車場を間違え夜中に起こされたいうマクラから、「知らないのに知っているフリ」は悪いが、もっと悪いのは「知っているのに知らないフリをする」、最も悪いのは「知らないのに知らないフリをする」からネタへ。
小三冶の最大に特長は「間」だと思う。音楽でいえば「休符」だが、その時々で休符の長さが大きく異なる。その「間」の取り方が実に巧みで、これは天性としか言いようがない。
古典を余計なクスグリを入れずそのまま語る。だけど面白い。それも腹を抱えて笑うというよりは、クスリと可笑しい。
かつて「三遊の若旦那、柳のご隠居」という諺があったようだが、柳家の滑稽噺の伝統を受け継いでいるし、先代小さんの芸風に最も近いといえる。
このネタでは鯉昇や扇辰の慣れ親しんでいる人にとっては、やや物足りなく感じるかも知れないが、これが小三冶の芸なのだ。
小三冶の2席目「茶の湯」
数十年ぶりに東京タワーに上った感想から、東京の中心部を一望し、東京湾から隅田川をさかのぼり蔵前へ。ここはかつて幕府の天領から集めた米を保管した蔵が立ち並んでいた所から「蔵前」となったという解説。その蔵前に一世一代で大店を築いた主人が倅に店を譲り、根岸の里に隠居所を作り・・・と、ここからスーッとネタに入る。
小三冶の「茶の湯」の最大の特長は、茶を飲んだ時のそれぞれの表情で、これが隠居、小僧、さらに強引に招かれた手習いの師匠、豆腐屋、頭(かしら)、皆違うのだ。
置かれた立場、状況によりリアクションが変るというわけで、こうした細かな所が緻密に工夫されている。
だから小三冶の芸は大きなホールには向かないのだ。
この日の席も残念ながら二階席、顔がもっと身近だったら更に面白かっただろう、そこが残念。
このネタでこれだけ客席を沸かせるのはさすがと言うしかない。
「柳のご隠居」の面目躍如。
この日は心配したマクラも程よく、久々の小三冶の高座に満足した。
次回は1月2日の鈴本夜席で、これも楽しみ。
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コメント
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長いマクラ反対に賛成!
投稿: 佐平次 | 2012/12/23 10:36
佐平次様
長すぎるとマクラと唄は勘弁して欲しい。
今回は短めだったし、ネタへつながっていたので良かったんですが。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/12/23 10:53