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2012/12/09

今年のベスト「らくご古金亭」(2012/12/8)

近ごろやたらTVで目に付く衆院選向け政党コマーシャルって、なんで揃いも揃って醜悪なんだろう。あれじゃ却って票を減らすぜ。
12月8日、湯島天神参集殿で行われた「第8回 らくご・古金亭」へ。
古金亭とは変わった名前だと思ったら、5代目古今亭志ん生と10代目金原亭馬生の二人が演じた噺だけを掛ける落語会ということらしい。
出演者は10代目馬生一門、と言っても実質は雲助一門と当代馬生一門に限ってるようだが、それに毎回ゲストが一人(次回からは二人)という顔ぶれ。
世の中、色んな会があるんだねぇ。

<   番組  >
前座・金原亭駒松「ざる屋」
金原亭馬吉「幇間腹」
桃月庵白酒「尿瓶(しびん)」
柳家小満ん(ゲスト)「島鵆沖白浪より大阪屋花鳥」
~仲入り~
金原亭馬生「稽古屋」
五街道雲助「淀五郎」
(全てネタ出し)

駒松「ざる屋」
先代馬生の十八番。間の取り方が馬生をよく真似ていて、合格点。将来性あり。
馬吉「幇間腹」
三代目柳好と志ん生が得意としていたが、通には評判の良かった柳好の型は忘れられ、今では専ら志ん生の演出に倣っているのはその明るさ故か。
一見、簡単そうに見えるが、名人文楽が高座にかけるのを断念したくらいの難物でもある。
馬吉の高座はマクラからサゲまで淀みなく、テンポも快調。二ツ目の「幇間腹」としては上出来とみた。
白酒「尿瓶(しびん)」
志ん生が戦前得意としていたとは知らなかった。
雲助がこの会には特に思い入れがあり、鈴本のトリを休演したくらいだ。と言った後に、私がダイバネで出ると言って笑わせる。一言「毒」を発しないと気が済まない性質(たち)なんだろう。
故郷への土産と尿瓶を下げて往来を颯爽と歩く武士に、町人たちが噂するクスグリが効いていた。
尿瓶に菊の花を生ける場面を丁寧に演じていたが、こういう処が白酒の芸の細かさであり、香辛料の役割を果たさせている。

ゲストの小満ん「島鵆沖白浪より大阪屋花鳥」
「島鵆沖白浪」と書いて「しまちどりおきつしらなみ」って読むんだから日本語は難しい。初代談洲楼燕枝の作とされているが、久しく演じ手がなかったが2010年に柳家三三が復活させている。
「大阪屋花鳥」はその一部で、先代馬生の録音が残されている。この日は続編の「牢内」を加えての口演となった。
粗筋は、
天保年間、番町に住む旗本・梅津長門は、ある日悪友に誘われて吉原の大阪屋という店に上がり、相方となった花魁・花鳥と相思相愛の仲になった。通うようになった梅津は、金に困って父親が遺してくれた長屋まで手放してしまい、その行状から親類にも見放される。
金に困った梅津はたまたま通りかかった大音寺前で町人を斬り殺して2百両を奪い取る。その足で花鳥に会いに行くが、殺しの現場を目明かしの手先に見られていた。
通報を受けた役人が捕り手を伴い吉原へ。花鳥を呼び出し酒に酔わせて捕える手はずを整えるが、花鳥は密かに脇差を梅津に渡し、部屋の油をまき行燈を倒して火事を起こし、その隙に梅津を逃がしてしまう。
放火の疑いで捕えられた花鳥は牢に送られ、役人から責め苦を負わされるが最後まで口を割らず、遂には牢名主となって牢内に君臨する。
小満んは丁寧な演出で梅津が酒色に溺れ身を持ち崩す過程を描き、吉原の火事に紛れて梅津が逃亡する場面はドラマチックに演じた。
全体に風格のある結構な高座だった。

馬生「稽古屋」
一番の見せ場である師匠が少女に道成寺の踊りの稽古をつけるシーン、踊りの名手である馬生の芸がいかんなく発揮されていた。
唄や踊りの素養がないと出来ないネタなので、馬生には打って付けと言える。

雲助「淀五郎」
ご存知、志ん生と圓生の代表作。雲助は圓生の型だったようだ。
いわゆる芝居噺ではないが、芸道ものの代表的作品である程度芝居の形を見せなくていけない。
死ぬほど悩んだ淀五郎が仲蔵を訪ね、腹の切り方の教えを乞うシーンが山場だが、ここを雲助は微に入り細を穿つというほど丁寧に演じた。特に淀五郎が切腹を演じるのを観察する仲蔵の仕種、表情が何とも良いのだ。だから最終場面の四段目に説得力が出てくる。
雲助、会心の高座。

粒ぞろいの高座が続き、今年の落語会のベストにあげたい。

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コメント

うーむ、豪華、濃密!
予定表には古金亭とありながら切符を入手できず残念でした。

投稿: 佐平次 | 2012/12/09 10:21

佐平次様
この日来られた方は幸せ、来られなかった方は残念でした。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/12/09 11:17

この会のことは知っていましたが、以前から予定していた旅行で、誠に残念でした。
落語会の頃は、テニス仲間との合宿で、宴会で私の下手な落語を披露していました^^

小満んの高座、聴きたかったなぁ。

投稿: 小言幸兵衛 | 2012/12/09 22:14

小言幸兵衛様
そちらは「古金亭」ならぬ「小言亭」だったわけですね。
小満んの「大阪屋花鳥」だけでも聴く価値がありました。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/12/10 03:48

お初にお目にかかります。
時折、覗かせていただいている者です。
さて、昨日日本橋で白酒の尿瓶を聴いたのですが、古今亭での尿瓶は肥瓶の間違いだったと言ってました。つまり、本来肥瓶を演るべきところを、字面の似ている尿瓶と読み違い演ってしまったと。プログラムにも尿瓶と書かれていましたか?まぁ、洒落で言ったのかもしれませんけど(笑)

投稿: 泥水 | 2012/12/10 09:43

泥水様
ご指摘のようにプログラムでは「肥瓶」となっていましたが、白酒は「尿瓶」を掛けてしまいました。
後から上がった小満んが間違いかなとフォローし、当記事ではタイトルを「尿瓶」にしています。
「肥瓶」は現在では「家見舞い」の演目で演じられることが多いので、白酒も勘違いしたのかも知れません。

投稿: ほめ・く | 2012/12/10 14:35

明確な主題に基づいた会では演者と演目が当たると素晴らしい感動を生むんだと思います。
湯島からの連想ですが、桂三木助のオハコを当今の落語家が演る、なんていうのもいいですね。「たがや」は誰、「ねずみ」は誰。おっと、「芝浜」は皆が演りたがって定まらないかな。
こちらで噺ごとの演者を想像するのも楽しいんじゃないでしょうか。

投稿: 福 | 2012/12/11 07:05

福様
三代目三木助の十八番特集って面白そうですが聞いたことないですよね。弟子もバラバラになってるから難しいんでしょうか。
「ねずみ」は扇辰、「たがや」は小朝、「芝浜」はウーン、迷いますね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/12/11 11:12

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