輝け!My演芸大賞2012
お待たせいたしました。独断と偏見で選ぶ吉例の「My演芸大賞」2012年版を発表します。
今年一年で85回の寄席、落語会に通いました。多分、過去最高だと思います。
1回に何席聴いたかですが、寄席と独演会では数が違うのでザットと平均が1回6席とすると年間で510席ほどの高座を観た勘定になります。
その中から既に候補作として28席を選んでおり、下記の通り大賞1点、優秀賞5点、佳作4点、特別賞1人を選びました。
例年に比べ採用点数が多いのは、通った回数が多かった反映です。
【大賞】
「雲助蔵出し」における五街道雲助の一連の高座
【優秀賞】
桂春團治「野崎詣り」上方落語会(2011/2/11)
入船亭扇辰「さじ加減」ワザオギ落語会(2012/5/19)
柳家喬太郎「孫、帰る」前進座にわか演芸場(2012/8/12)
柳家三三「乳房榎よりおきせ口説き」柳の家の三人会(2012/9/15)
柳家小満ん「島鵆沖白浪より大阪屋花鳥」らくご古金亭(2012/12/8)
【佳作】
桃月庵白酒「甲府い」鈴本演芸場(2012/1/17)
露の新治「権兵衛狸」鈴本演芸場(2012/6/18)
古今亭志ん輔「唐茄子屋政談」前進座にわか演芸場(2012/8/12)。
桂宗助「立ち切れ線香」文我・宗助二人会(2012/12/23)
【特別賞】
春風亭一之輔
<講評>
大賞は文句なしに雲助です。
特に「雲助蔵出し」にこだわったのは会場が観音様の裏ってにある「浅草見番」、ここは雲助自身の地元でもありますが、そして良き観客。つまり演者、会場、客の三拍子がそろった独演会であり、だからこそ数々の優れた高座が生まれたのだと思います。
優秀賞に春團治「野崎詣り」を上げたら何を今さらと大阪のファンにお叱りを受けるかも知れませんが、初めてライブに接し久々に名人芸に出会えた思いです。まさに「春風駘蕩」というべき素晴らしい高座でした。
ここ数年、進境著しい扇辰。今年もいくつか優れた高座を聴かせてくれましたが、一つを選ぶなら講釈の演目から移した「さじ加減」です。
喬太郎「孫、帰る」、事故で娘を孫を失った老人の抑制した怒り、悲しみ、無念さを短い動作で表現させた演出は新作落語の新たな可能性を切り拓きました。
三三「乳房榎よりおきせ口説き」、人気に溺れることなく明治の古典を掘り起こす努力を続けている三三ですが、珍しい乳房榎の発端で見事な高座を聴かせてくれました。
小満ん「島鵆沖白浪より大阪屋花鳥」は先代馬生の口演に花鳥は牢名主になるまでの章を付け加え、淡々とした語り口のなかに凄みを感じさせた高座でした。
佳作の白酒「甲府い」は、この噺の儒教臭を薄め、軽快な滑稽噺に仕立てた腕前を評価しました。
新治「権兵衛狸」は、東京の寄席で一人だけ上方落語を演じると言う難しい立場にもかかわらず、民話風のユッタリとした演出で聴かせてくれました。
志ん輔「唐茄子屋政談」は長講だったにもかかわらず最後までペースを保ち、鮮やかに人物像を演じ分けていました。
宗助「立ち切れ線香」は、放蕩に狂う若旦那を諌める際に番頭が煙草を一服吸う場面で、いかにも大店の番頭らしい「腹」が表現されていて上出来でした。
特別賞は、何といっても今年の落語会最大の話題の一之輔でしょう。今春一人真打で50日間トリを務め、お客の入りも上々だったようです。披露興行が終わっても定席に出続けていて、既に各寄席でトリを取っているというのは前代未聞ではないでしょうか。
まだ発展途上ですが、10年に一人という逸材であるのは間違いないところです。
以上で当ブログも年内これが最後です。
また新年お目にかかりましょう。
皆様、良いお年を!
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