肥瓶(こえがめ)と尿瓶(しびん)
本日はどうも尾篭な話題で恐れ入りますが、12月8日の「古金亭」でちょっとした「事故」がありました。
泥水さんから頂いたコメントにこう書かれています。
【昨日日本橋で白酒の尿瓶を聴いたのですが、古金亭での尿瓶は肥瓶の間違いだったと言ってました。つまり、本来肥瓶を演るべきところを、字面の似ている尿瓶と読み違い演ってしまったと。】
この会はネタ出しでプログラムにも”桃月庵白酒「肥瓶」”と書かれていました。ところが始まると白酒が「この噺は短いので直ぐ終わります」というので、アレ、おかしなことを言うなと思っていたら、「尿瓶」を演じました。
後から上がった小満んが間違いを指摘し、「どっちも似たようなもんで」と。もちろん噺の内容は全く別ですが、肥と尿だから似たようなものとフォローしたわけです。
この段階ではプログラムの間違いなのか、本人の勘違いなのか不明でしたが、前記の泥水さんのコメントで真相が分かったというわけです。
落語の「肥瓶」ですが、兄いの新築祝いに弟分二人が水瓶を買う約束で出かけますが金が無い。仕方なく古道具屋の店先に置いてある肥瓶を安く譲ってもらい、兄いの家に水瓶だと言って持ち帰り、そこから起きる騒動を描いたもので、近ごろでは「家見舞い」のタイトルで演じられています。
これは「肥瓶」という名前があまりキレイじゃないのと、この名称自体が今の人にピンと来なくなったからでしょう。
今は下水道が普及して都市部ではほどんどが水洗トイレになりましたが、かつて東京でも昭和30年代頃までは糞尿を肥瓶(又は肥甕)に貯め、それを「汚穢屋(おわいや)」と呼ばれた人たちが「肥柄杓(こえびしゃく)」で樽に汲み取り、天秤に運んでいたものです。
代金は予め購入してあった「汲み取り券」を渡すという仕組みで、確か4樽で1荷(いっか)というような単位だったと記憶しています。
3代目金馬の落語「宿題」で、子どもが父親に「1か4分の3って知ってる」と訊くと父親が「ああ、汲み取り屋か」と答えていますが、この事です。
樽に詰められた下肥は舟に乗せられ(私たちは「汚穢舟」と呼んでましたが正式な名称は分かりません)川を下って海に出て、沖合に投棄していました。今じゃ信じられないことですけどね。
この舟は「汲み立て」というネタの最後のオチの場面に出てきます。
実物の肥瓶の画像がどこかないか探してみましたが適当なものがなく、ようやく下の画像を見つけました。
ただこの肥瓶は昔の柄杓で汲むタイプではなく、後のバキュームで吸い取る時代のものでしょう。
落語に出て来る昔のタイプは柄杓で汲みやすいようにもっと口が広く、背高の低い形をしていた筈です。
どこかの博物館にでも展示されているでしょうか。無いだろうな。
尿瓶のほうは今でも介護などで使われているのでご存知かと思います。
ただ落語に出てくる「尿瓶」は男性用ですね。女性用は形が違って・・・、まあ、どうでも良いことですけど。
というわけで、本日は「くだらない」お話でした。
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白酒の間違い、師匠は叱ったのでしょうか^^
写真ですが、こんなのがありました。
http://www5.ocn.ne.jp/~harutoko/koegame.html
投稿: 小言幸兵衛 | 2012/12/11 23:31
小言幸兵衛様
そうですね、白酒は厳しく叱られて「痩せた」とか。
ご紹介の画像ですが、こうして上から撮ったというのは多いんですが、甕全体の画像が無いんです。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2012/12/12 08:14