「TOPDOG/UNDERDOG」(2012/12/22)
12月22日、シアタートラムで行われた”シス・カンパニー公演”「TOPDOG/UNDERDOG」を観劇。
三軒茶屋なんて昔は不便だったが、今では渋谷から2駅目。世田谷区の文化の中心になりつつある。
この小劇場は客席の傾斜が大きく見やすい。
ざっと見渡して爺さんは私だけか。
作=スーザン・ロリ・パークス
翻訳・演出=小川絵梨子
< キャスト >
堤真一:ブース
千葉哲也:その兄リンカーン
ストーリーは。
タイトルのTOPDOGは勝者、UNDERDOGは敗者を意味する。
登場人物は二人、幼い頃に両親に捨てられ2人きりで生き抜いてきたアフリカ系アメリカ人の兄弟・リンカーンとブース。兄の名は有名なアメリカ大統領、弟の名はその暗殺者という凝った名が付けられている。このネーミングも芝居の伏線になっている。
舞台はブースの借りてる安アパートの一室。そこに兄リンカーンが居候している。
30代後半の兄リンカーンは、以前はトランプ賭博スリーカード・モンテ(赤のカード2枚と黒のカード1枚の3枚を並べ、カードを移動させて客に黒のカードを当てさせるギャンブル)のディーラーで稼いでいたが、今はすっかり足を洗い、遊園地でリンカーン大統領に扮するショーに出演している。
5歳下の弟ブースは定職に就かず万引き常習犯として暮らし、恋人との甘い生活を夢見ている。そんな弟に兄はまともな暮らしをするよう説教するが聞き入れられない。
そんなある日、兄が仕事を解雇され、弟は恋人と結婚を約束して兄に家を出るように伝える。
しかし恋人との約束が破られ自暴自棄になる弟。
職を失い再びカード賭博に戻った兄は泊まる家もなく、弟の部屋に戻ってくる。
そして二人はそれぞれの有り金を全て賭けて、スリーカードの勝負をすることになるが・・・。
兄弟というのは切っても切れない間柄だけに、助け合う時もあれば競い合い、時には憎み合う場合もある。
そんな兄弟の相克を社会の底辺にあって、人生の裏も表も知りつくした兄と、裏を知らない(見ようとしない)ある意味ではピュアーな弟、この二人のパワーバランスが目まぐるしく入れ替わりながら、悲劇的な結末にむかっていく。
舞台を日本に置き換えてもこのまま成り立つような普遍的なドラマにしている。
翻訳も良くこなれており、非自然さがない。
ただ原作はどうなんだろう。推測するしかないが、もっと猥雑でギラギラした作りになっているではなかろうか。そういう意味での物足りなさも感じるのだ。
その他、正味2時間弱の芝居なので、途中休憩無しで演じた方が良かったのではと思った。
堤真一と千葉哲也二人の出演者は息がピタリと合い、最後まで緊張感のある良い演技だった。
公演は28日まで。
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