#126朝日名人会(2013/1/19)
1月19日、元横綱大鵬の納谷幸喜さんが72歳で亡くなった。
1960年頃だったと思うが、当時「柏鵬」時代といわれ人気を二分していた柏戸と大鵬がまだ大関時代に国技館で観たことがある。
二人には大きな声援がおくられていたが、その当時は柏戸の方が人気が高かった。
というのは「剛の柏戸」「柔の大鵬」と言われてように、柏戸の相撲は一気呵成で勝負としては面白かったからだ。「攻めの柏戸」「守りの大鵬」と言い換えても良いが、横綱昇進後は圧倒的に大鵬の強さが目立った。やはり勝負は守りの堅さが大切なのだろう。
大鵬は少年の頃から家計を助けるために農作業や土木工事に携わり、その時に鍛えられた身体が後の相撲の強さに影響を与えたとある。
そうなると今後も、大鵬のような日本人力士は現れないのかも知れない。
ご冥福をお祈りする。
同じ19日、有楽町朝日ホールで開かれた第126回朝日名人会へ。
遅れて申し込んだのだが運よく前から3列目に席が取れた。
この日は国立とのダブルヘッダーだったが、まずは先行のこの会から。
< 番組 >
前座・柳家緑太「やかん」
三遊亭金兵衛「蔵前駕籠」
古今亭菊之丞「景清」
柳家喬太郎「小言幸兵衛」
~仲入り~
柳家さん喬「棒鱈」
桂文珍「憧れの養老院」
前座の緑太、口調がハッキリして良い。
金兵衛「蔵前駕籠」
既に公表されているように今秋真打に昇進する。これを機に4代目金朝(きんちょう)を襲名するとのこと。先代は1914年に亡くなっているので1世紀ぶりの復活ということになる。
この日もそうだが落ち着いた手堅い高座だが、何か光るものがない。
これから真打として伸していくにはプラスアルファが求められるだろう。
菊之丞「景清」
器用な人で文楽だろうと志ん生だろうと小さんだろうと、様々な先人の十八番をみな熟(こな)してしまい、そこそこのレベルに持ってゆく。
当り外れが無い反面、人の心を揺り動かすような芸には達していない。
この噺でもかつては遊び人だった盲人という性格づけが出来ていたし、全体として良くまとまっていたが、盲人の悲哀が今ひとつ胸に迫ってこない。
喬太郎「小言幸兵衛」
まだ真打に成り立ての頃から何度か聴いているが、その度に少しずつ良くなっている。そういう意味では今回がベスト。
ただこのネタは余りに圓生の残像が強すぎ、どうしてもギャップを感じてしまう。
特に最後の芝居仕立てで若い二人の心中を描く場面だが、圓生だと聴いていてそのまま歌舞伎の舞台が見えてくる。一節唸る浄瑠璃も本格的だ。
それに比べると志ん朝でさえ見劣りするし、喬太郎では更に落ちる。
無いものねだりしても仕方ないかも知れないが、やはりこのネタは圓生の高みを目指して欲しいのだ。
さん喬「棒鱈」
師匠の十八番を引っ提げての高座。
なにしろ江戸は徳川幕府のお膝元、そこへ乗り込んでき来て威張りだした薩長の侍に対し、当時の江戸っ子はさぞかし面白くない思いだったろう。その鼻をあかすこのネタは今聴いても痛快だ。
前回も書いたが、さん喬はこうした滑稽噺がニンだ。
この日も会場は爆笑に包まれていた。
文珍「憧れの養老院」
場内は大受け。
私の後方の人は文珍がなにかギャグを言うたびに拍手して煩いったらありゃしねぇ。無粋な客だ。
全体の半分(3分の2かな)を費やしたマクラは、昨年12月の「にっかん飛切落語会」と同じ。
本題は金が無くて老人ホームに入れない老夫婦が、それならいっそ老後は刑務所でと銀行強盗を企てるというストーリーで、いまひとつピンと来ない。同じ老人を扱った「老婆の休日」などとは大違い。
わざわざ大阪から来て演るようなネタじゃない。
この人は時に上方落語界でもトップレベルかと感じさせることもあるが、どうも出来不出来(orヤル気)の波が大き過ぎる嫌いがある。
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ダブルヘッダーとはすごいですね。
朝日名人会はどういうわけか一度も行ったことがないです。
一度くらい行かなきゃね^^。
投稿: 佐平次 | 2013/01/21 11:48
佐平次様
「朝日名人会」は土曜の昼下がり、会場が有楽町駅前とういうことで行き易いのが第一です。
欠点は入場料が高いこと、ショバ代ですかね。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/01/21 22:16