鈴本・正月二之席・昼(2013/1/16)
1月16日、鈴本演芸場正月二之席・昼の部へ。
東京は1月14日に初雪が降り、道の両側には積み上げられた雪が残っている。
定席は1月20日までは正月興行で、オールスターキャストの顔見せ興行を行っているが、鈴本だけは二之席という名称にはなっていても、中身は通常の番組に戻している。
ここのところ昼の部の主任は菊之丞、夜の部は喬太郎と決めているようで、そのせいか昼夜ともトリは休演ナシだ。やはり二之席のトリは名誉なのだろう。
例年は夜の部にしていたが、今年は気分を変えて昼の部へ。
どの噺家も言っているが、今年の正月初席はお客が大勢だったようだ。そういやぁアタシも久々に行ったっけ。
この日も団体客もあって、まあまあの入りといった所。
前座・古今亭半輔「牛ほめ」
< 番組 >
林家たこ平「権助魚」
伊藤夢葉「奇術」
古今亭菊生「がまの油」
橘家文左衛門「手紙無筆」
ペペ桜井「ギター漫談」
古今亭菊千代「お千代の縁談」
春風亭一之輔「桃太郎」
林家二楽「紙切り」
柳家喜多八「小言念仏」
~仲入り~
大空遊平・かほり「漫才」
入船亭扇辰「千早ふる」
橘家圓太郎「紀州」
ストレート松浦「ジャグリング」
古今亭菊之丞「二番煎じ」
この日の顔づけでは、たこ平と菊生が初見。
そのたこ平「権助魚」
見た目で名前が付けられたと思われる風貌だ。
明るい芸風は良いのだが未だかなり粗い。特に終盤でミスが出たのはいけない。
夢葉「奇術」
とぼけた感じが師匠譲り。手品の技術よりトークで聴かせるタイプで寄席の色物としては適性。
菊生「がまの油」
古典を少し現代風にアレンジしていたが、成功したとは言い難い。
蝦蟇の口上が終わった時点で「ここで拍手が沸くところですが」と言ってたが、なぜ拍手を浴びないのかを考えなくてはいけない。口上のリズムが悪いせいなのだ。全体の組み立ても良くないし、刀を刺身包丁に変えてもそれで新しさが生まれるわけじゃない。
昨年11月の鈴本で一之輔がこのネタを掛けていたが、出来は天と地の差がある。
文左衛門「手紙無筆」
少し冷えかけていた客席が持ち直した。前半で切ったが独特の間が理屈抜きに面白い。
菊千代「お千代の縁談」
なかなか縁談がまとまらない娘の母親に、娘の奉公先のお上さんが縁談を持ち込んでくる、これって一体いつの時代の話なんだろう。
新作だろうが、さほど面白いクスグリがあるわけでもないし退屈した。
一之輔「桃太郎」
この人が描く「自己主張が強く攻撃的性格」という独特の子ども像が、このネタでも活躍。
全体としては手堅くまとめていた。
喜多八「小言念仏」
このネタ、何度目だろう。特に中トリでは良く掛かる。
印象としてはサラリと高座を流したい時に選ばれるような気がする。
扇辰「千早ふる」
こちらもお馴染みのネタ。15分ヴァージョンだと急いて、扇辰のユッタリとしたリズムを味わえない傾向があるのは止むを得ぬか。
圓太郎「紀州」
徳川七代将軍家継が幼くして急死して、その跡継ぎを決めるというストーリーだが、圓太郎は初代家康から七代に至る系図をずっと説明し、八代は順当に行けば尾州候に決まるという背景をマクラにして本題へ。こういう演出は初めて聴いた。
非常に個性的な噺家なので、好みで評価が分かれるかも知れない。
圓太郎は当代で八代目、客席から「圓太郎って、誰?」なんて声も聞こえたが、明治に活躍した四代目は通称「ラッパの圓太郎」。そこから乗合馬車が「圓太郎馬車」、バスが「圓太郎バス」と呼ばれたほどの人気を博した。大看板になれる名跡を継いだのだから、是非そこを目指して欲しい。
ストレート松浦「ジャグリング」
いつ見ても鮮やか。寄席の色物としての範疇を超えているかのごとく。
菊之丞「二番煎じ」
これも何度目かになるが、この日が一番良かったように思う。
全体に丁寧な演出で、火まわりの人たちそれぞれの個性もクッキリと描かれていた。
番小屋での当初の遠慮がちの宴会が次第に賑やかになる過程もしっかりと描かれていて、侍の悪役ぶりも堂に入っていた。
正月二之席に相応しい高座だった。
忙しい初席が終り、全体としては肩の力を抜いたようなノンビリとした高座だった。それは客席も同様か。
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なかなか味のあるメンバーですね。
二之席は末廣、池袋もいいのでどちらか行ってみようと。
投稿: 佐平次 | 2013/01/17 10:16
佐平次様
新宿も池袋も未だ正月興行で、鈴本だけが通常に戻していたのでこちらを選びました。
落語研究会の方は充実していたようですね。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/01/17 10:46
師匠の得意な噺を達者な弟子が演じたようですね。
喜多八「小言念仏」。師匠は小三治。僕がはじめのころ「欠伸指南」と並んで、その世界に馴染めなかった噺ですが、最近ではこういう表現は難しいんだな、と思うようになりました。
圓太郎「紀州」。師匠は小朝。この噺は知的な感じで一種のスピード感をもって語らないと味が出ないと思います。
投稿: 福 | 2013/01/19 08:29
福様
「欠伸指南」も「小言念仏」同様、喜多八は良く高座に掛けています。こういうネタで聴かせられるというのは、やはりこの人の芸の力だと思います。
圓太郎「紀州」はスピード感があって良かったですよ。この人はもう少し評価が高くても良いと思うのですが。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/01/20 11:53