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2013/01/23

将来を担う若武者「一之輔・文菊二人会」(2013/1/22)

1月22日日本橋劇場で行われた「第1回春風亭一之輔・古今亭文菊二人会」へ。第1回とあるからには今後も継続して開かれるのだろう。
開場入り口にはこの会らしく綺麗処(かつての)がズラリと揃って受付をしていた。
主催者の言によれば会の趣旨は、「落語界のダイヤモンド二人が、芸を競い、磨き合う場として、一層輝くための会」とある。この二人が将来の落語界を担うであろうことは、多くの落語好きの方々も異存はないだろう。
もっとも一之輔は既に担ってるか。
昨年の新真打のもう一人・志ん陽は、いま鈴本下席で初のトリを取っている。

<  番組  >
前座・春風亭一力「牛ほめ」
春風亭一之輔「短命(or長命)」
古今亭文菊「心眼」
~仲入り~
古今亭文菊「豊竹屋」
春風亭一之輔「百川」

一力「牛ほめ」
先日の国立でも感じたが、若いのに何か老成しているような印象だ。
一之輔の1席目「短命(or長命)」
この日の一之輔の2席はいずれも真打昇進披露の高座で演じたもので、手堅い選定というところ。
このネタだが、結論からいうとあまり感心しない。
前半の隠居と八の会話が、まるで友達同士のように聞こえる。話しているうちに隠居がイライラしていくのだが、この噺の隠居は八の理解力が足りなくとも辛抱強く「短命」の理由を遠まわしに説明する。そこが眼目であって、イラツクくらいなら初めからズバリと結論を言えば済むのだ。
後半の八と女房とのヤリトリで、ご飯をよそってくれと頼む八にカミさんが「今月の目標『自分のことは自分でやろう』と書いてあるだろ、シール貼ってやれないよ」というクスグリは面白い。
文菊の1席目「心眼」
以前このブログで”実録「心眼」”という記事を書いた通り、子どもの頃に隣家のアパートの大家が盲人でこの人が色男、奥さんはその正反対。ある日大家である盲人が借家人の二号の部屋に上がり込み、襲われそうになった二号が我が家に逃げてきたというエピソードを紹介した。だからこのネタは、アタシにとってはリアリティがある。
さて文菊の高座だが、丁寧な演出でこの人の実力を感じさせるものがあった。
ただどうなんだろう、このネタはもう少し歳を重ねてから掛けるべきではなかろうか。演じ手に艶や情がないといけないし、最後のシーンで梅喜が我に返って笑うのだが、あの笑いの味を出すのが若いと難しいと思う。
熱演だったがやや平板な印象を受けたのはそのためだろう。

文菊の2席目「豊竹屋」
典型的な音曲噺で、浄瑠璃の素養が無いと演れないネタ。上方ネタで東京では圓生の十八番だったが、現役では林家正雀が得意としている。
文菊は独自のクスグリを織りこんで、一段と楽しい噺に仕立てた。
面白かった。
初めて聴いたが、文菊の新しい面に接した。
一之輔の2席目「百川」
1席目との間が長く、寝てしまったと告白。確かに今ごろ正月の疲れが出る頃だ。
このネタの冒頭で、実際にあった話を基にしてとなっているが、これはフィクションだと断言していた。その通りで、これはフィクションだろう。こういうことをバーンと言ってしまう所が一之輔の個性であり、人気の秘訣かも知れない。
このネタで肝心なのはテンポだ。テンポの悪い人が演ると聴いてられない。その点この人は快適なテンポで飽きさせない。こんなに面白い噺だったけと思わせるのも、そのせいだ。
独自の演出としては、クワイのキントンを無理やり飲み込まされた百兵衛が再び二階に呼ばれてキレルところ。
「次なに飲むだ、そのサザエの壺焼き貸せ!」
ここで客席は大爆笑。
ウ~ン、やっぱりこの人はタダモノじゃない。

アタシらがこういう記事を書くのを落語家はどう思ってるかしらね。
何も知らない素人が勝手なことをほざいてと怒ってるんしょうね。メモを取ったりプログラムに書き込んだりする姿は高座から見えるでしょうから、きっと舌打ちしてるんでしょうな。
でもこれが趣味で落語会に通ってるんですから、許してください。

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コメント

しょっちゅう、「肩の力を抜いて」とか「難しいことを考えずに」などとご注意くださる噺家もいますね。
あれは嫌なもんでしょう。
たまに思いもかけず芸人本人からコメントが来たりすると、書く方もちょっと気をつけて書かなきゃとは思いますが、どう気をつけたらいいか^^。

佐平次様
そんな事いちいち気にしていたら何も書けない、という気持ちもあります。
いわゆる評論家の記事がヌルイのは、芸人や興行主との間にシガラミがあるからでしょう。
コチトラはその分自由に批評できるので、そこに幾分かの存在価値があると思います。

「豊竹屋」。文菊は菊六時代、この噺でNHK新人演芸大賞を獲ったのでした。
文菊は音曲噺、さらに芝居噺にも可能性を感じます。

未来の圓生といったところでしょうか。

福様
そうでしたか、TVの演芸番組を見ないもんですから。それでは文菊の十八番だったんですね。独自のクスグリ満載で面白かったですよ。
未来の圓生にと、芸風からは確かにそう言えます。
あと艶ですかね、そこが欲しい。

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