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2013/02/21

待ってました!黒門町「小満ん・喬太郎の会」(2013/2/20)

2月20日、銀座中央会館で行われた”噺小屋スペシャル「小満ん・喬太郎の会」”へ。
築地、新富からこの周辺一帯は情緒があって歩いていても楽しい。無粋な高速道路が脇を通ってなければなお良いのだが。
アタシの席の両脇、前後、全て女性。相変わらず喬太郎が出る会は女性客が多いね。

<  番組  >
前座・柳家さん坊「つる」
柳家小満ん「夢金」
柳家喬太郎「錦の袈裟」
~仲入り~
柳家喬太郎「白日の約束」
柳家小満ん「寝床」

昭和の名人といえば文楽、志ん生、圓生ということになっているが、この中で「黒門町」の通称で知られる8代目桂文楽は、アタシが物心がついた頃から既に「名人」と呼ばれていた。つまり親がこの人は名人だよと教えていたわけだ。現在も評論家の中には名人は文楽一人だけと主張する人もいる。
しかし今、一般の落語ファンの中ではどうだろう。推測だが、志ん生や圓生に比べてやや影が薄いのではあるまいか。
一つには、直弟子の中に文楽の芸や芸風を忠実に受け継いでいる人が少ないことがあると思われる。
主な弟子である6代目三升家小勝、5代目柳家小さん、7代目橘家圓蔵、9代目桂文楽らいずれも師匠とは芸風が異なる。
圓生が文楽の芸について「正確無比かもしれないが、芸を型にはめすぎて融通がきかない、芸に血が通わない」と批判していて、談志も文楽に対しては同様の辛辣な批判をしている。あるいはそうした事も文楽への評価に影響しているのかも知れない。
しかし、CDなどで文楽の落語を聴くと、やっぱりこの人は名人だと思う。
よく文楽生存中は、彼の十八番(おはこ)を他の噺家が遠慮して高座にかけなかったと言われる。正確にいえば、文楽の十八番は先人のネタを自分なりに磨いて完成させたもので、それだけにオリジナリティが高かったから他の人たちが遠慮したのだと思う。

柳家小満んは8代目桂文楽の直弟子(師匠没後5代目小さん門下に移籍)だ。今では名人文楽の芸を受け継ぐ数少ない落語家になってしまった。
その小満ん「寝床」は、文楽の高座はきっとこうだったんだろうなと思わせるような素晴らしい1席だった。
寝床の主人公である大店の旦那というのは好人物で人格者、人間としては非の打ちどころがない。ただひとつの欠点は下手な義太夫を他人に聴かせたがることだ。これとても旦那本人は皆さんが喜んで聴いてくれていると信じているのだ。
だから茂造が長屋を回って、全員がなんだかだと理由をつけて義太夫の会への出席を断ってきても、旦那は気付かない。この人は実に善良なのだ。
では奉公人に聴かせてやるというと、これ又全員が病気だなんだといって欠席と言う。
普通は、ここまで来れば義太夫が嫌われていることに気が付くのだが、未だダメ。
「茂造、お前は?」と言われた茂造が「因果と丈夫」と答えて叱られ、終いには泣き出す。ここに至って旦那はようやく事実に気付き、愕然とする。
怒りと屈辱ですっかり取り乱し、長屋には店立て、奉公人は馘首を言い渡す。
気の利いた番頭が長屋をもうひとまわり、住人に出席して貰うことにして、旦那に義太夫を語るよう説得する。
普通なら断固として拒否するのだろうが、なにせ根が善良な人だものだから、結局は義太夫の会を開くことに同意する。
「みんな好きだねぇ」と、ここで一度は失いかけた誇りを取り戻す。
すっかり上機嫌になって、長屋の住人ひとりひとりに声をかけて、始めは一段だけと言っていたのが「今日はみっちり語ります」と相成る。
当然皆さんは感にたえて聴いて下さると思っていたら、なんのことはない、全員が飲み食い疲れで眠ってしまっていた。
ここで再び落胆と怒り。
文楽の「寝床」の勘所は、こうした旦那の心の揺れ、感情の起伏を丁寧に演じることにある。
あまりに善良な人というのは現実の社会とはギャップが生まれ、時には笑いの対象になるが、この作品は正にその点を衝いている。
従って文楽の「寝床」をそのまま演じ客の共感を得るには、演者に相当な力量が要求される。だから演じ手が少ないんだろう。
これを再現したかのような小満んの緻密な高座は、見事というしかない。
黒門町が蘇った。

小満んの1席目「夢金」
圓生の演出を踏襲したと思われるが、オチは下品になるのを避けていた。
この噺も細部が大事で、例えば娘が御高祖頭巾をかぶっているとか、船に乗り込む時に船頭が傘をさしかけ手を添えて船に案内するとか、屋根船への乗り込み方を注意するとか、そうした細々とした描写により写実性を持たせることが肝要だ。
小満ん演じる船頭・熊五郎のセリフ、動作ひとつひとつに川舟の船頭らしさを醸し出していた。
この手のネタは世界を造ることが大事で、小満んの演出はその点よく心得ていた。
先日このネタは談春で聴いたばかりだが、やはり小満んとは段違いだ。

喬太郎の1席目「錦の袈裟」
与太郎の女房は恐い。夜中に出刃包丁で髭を剃っている。
おまけに細い棒を持っていて、与太郎がへまをすると叩かれる。近ごろはその叩かれるのが妙に快感。変な夫婦だ。
袈裟を褌にしめたらさぞかし妙な具合だろうね。ゴワゴワして。
与太郎がカニみたいに横歩きするのもうなずける。
袈裟輪をみて、この人が殿様だと断じた御姐さんの眼力は鋭い。納得した周囲もスゴイ。でもどうかしてる。
紫さんの大サービスでふやけて、すっかりインテリ風に性格が変わってしまった与太郎。でも一瞬にして元へ戻る。
普段バカにされてる与太郎だが、この一夜はヒーローだ。
このネタ、現役では喬太郎が一番面白いかな。

喬太郎の2席目「白日の約束」
毎年、ホワイトデイ前後に高座に掛けるお約束のネタ。
喬太郎得意の男女の切ないラブストーリーで、女性ファンを鷲づかみ。
喬太郎も歳をとってきたが、周りのファンも年齢が上がってきたみたいだ。

小満んが冒頭のマクラで、今日の楽屋は楽しいですよと語っていたが、その通りなんだろう。
二人とも、気分良さそうに演じていたもの。

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コメント

いらしてたんですね。
寝床の旦那評、同感です。
小満んを聴いていると心地よいです。
文楽の方がやや緊張を強いられるかもしれない(高座で聴いたことがない)。

投稿: 佐平次 | 2013/02/21 11:58

あらっ、ニアミスだったんですね。
小満んはもちろん結構だったんですが、喬太郎の高座は、あまり楽しめませんでした。
期待が大きすぎるのでしょうかねぇ。

投稿: 小言幸兵衛 | 2013/02/21 21:24

佐平次様
小言幸兵衛様
ご両所揃い踏みでしたか。
この日は小満んが全てでした。
喬太郎目当てのお客はやや物足りなかったかも知れませんね。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/02/21 21:29

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