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2013/02/25

「上方若手落語会」(2013/2/23)

22日、会社時代の友人二人と新宿で会って飲み会を開く。
一人が前立腺ガンで1月に入院し、現在放射線治療を受けているので、いわば激励会。
「それで、後遺症は?」とたずねると、「それが、アッチが全くダメになっちゃて」、やっぱりね。
アタシらの歳だと実害はないのだが、それでも男性機能が無くなるというのは寂しいに違いない。
酒も以前の半分になってしまったと言ってたが、確かに弱くなった。こうして誰しも老いてゆくんだろう。
それでも三人とも、いかに女房から虐待されてるかという話題で盛り上がり、気が付けば焼酎のボトル2本が空いていた。

2月23日、夕方に三田から国立演芸場に移動して「上方若手落語会」へ。人気と実力を備えた若手が顔を揃えたとあって満席。
周囲の会話をきいていても、東京の人も随分と上方落語に詳しくなってきたようだ。
この日の出演者では、春蝶は東京に拠点を移したそうで、これからこういう芸人が増えてくるかも知れない。
なお、豊来家大治朗と露の団姫は夫婦とのこと。

<  番組  >
露の団姫「時うどん」
桂まん我「幇間腹」
笑福亭たま「鼻ねじ」
桂春蝶「山内一豊と千代」
―仲入り―
桂かい枝「堪忍袋」
豊来家大治朗「曲芸」
桂吉弥「不動坊」

団姫「時うどん」
多芸でTVやラジオ番組にレギュラー出演しているそうで人気者らしい。
東京は蕎麦、大阪は饂飩、お馴染み「時そば」も上方の「時うどん」がオリジナル。こちらの方は最初の客は二人、だが二人あわせて15文しか持っていない。うどん一杯が16文なので1文かすらないと食べられない。東京のように遊びではなくて、事情は切実なのだ。うどんを旨そうに食わないのは上方風の演出なのか、演者の力量なのか。
客席は沸いていたが、アタシはあまり感心しなかった。

まん我「幇間腹」
これも上方がオリジナル。
東京とはいくつか違いがあり、東京では針が折れてとなるが、上方は針は刺さるのだが抜けなくなる。3本まとめて抜く時に腹の皮が破ける。
このネタの眼目は客と幇間との位置関係と距離感だ。
それとクライマックスが幇間の腹に針を打つシーンになるが、あまりリアルに演じると後味が悪くなる。程々に演ってしかも客に満足させねばならない。
まん我の高座はそれらの勘所を外さず、良く出来ていた。

たま「鼻ねじ」
マクラでショート落語と称する一話30秒ぐらいの小咄をつないで本題へ。
たまの高座はスピーディで、恐らく他の演者の半分位の時間しか掛けなかったと思われるが、楽しめた。
この人にはセンスを感じる。
面白い存在になるんじゃなかろうか。
もう既になってるか。

春蝶「山内一豊と千代」
早逝した父の跡をついで三代目春蝶を襲名したとある。
「山内一豊の妻」の物語は幼い頃から母親からきかされていたので、戦前の修身の教科書にでも載っていたのだろうか。武士の立身出世と妻の内助の功というストーリーは講談の世界であって、落語向きとは思えない。落語はやはり町人が主人公でないと。
それと、これは個人的な好みではあるが、こういう若旦那風の芸が好きになれない。
花緑、三平、米団治などにも共通していて、どことなく芸が上滑りしているような印象を受ける。

かい枝「堪忍袋」
このネタは元々が益田太郎冠者の創作だったので、オリジナルは東京だろうから大阪に移したものと思われる。
東京との違いは、序盤の夫婦喧嘩がタップリと演じられる。夫婦それぞれに言い分があり、それぞれに説得力があるが、実につまらぬ理由だ。ただこの夫婦は本当は仲が良いのだと思わせる。
堪忍袋のいわれはあっさりとしていて、最後の吹込みは大店の伊勢屋の奥方。そんなご大家の暮しなのに姑との間が険悪だ。そこで満杯の袋の中へ「クソババア、死ね!」、これにはビックリ。
次にその姑が袋を使いたいと言い出して・・・。
かねがね、かい枝の芸に感心していたが、この日もその思いを新たにした。

大治朗「曲芸」
円形の枠にナイフをさして、刃の間を飛び込むという芸が珍しい。
見事ではあるが、寄席の色物の芸としてはどうだろうか。

吉弥「不動坊」
前回はかなり辛辣な批評を書いたが、今回の高座は良かったと思う。
米朝から吉朝へと受け継がれた一門の十八番というべきネタだが、それぞれの場面を丁寧に描いていた。
特に利吉宅の屋根での男3人のやり取りは、この人らしい明るい芸風が活きていた。

この日の出演者のうち、吉弥、かい枝、春蝶の3名は1994年入門の同期だそうだ。この中では、かい枝が頭ひとつ抜けている(頭髪のことじゃないですよ)。上方落語の将来を担う人材として期待される。
アタシがブログを始めたのは2005年だが、その当時にブログで落語の記事を書いていた方が、既にまん我とたまに注目していた。東京在住の方だ。
当方は名前さえ知らなかったが、いま考えると、その慧眼おそるべし。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。この回のことは気になっていたのですが、足をお運び頂き嬉しく思います。
たまさんは、とにかく独自の芸を確立しようと努力しています。高学歴二枚目ということもあるので、さらに伸びて欲しいものですね。
春蝶さんも、柄を生かした独特の芸風を押し出しています・・・このお2人については、好みが分かれると思うのですが。
その点まん我さんは、安心し誰にでも薦められますね。
かい枝さんの『堪忍袋』同じ型を文三さんが襲名披露で演じられた音源・映像が出ています。
これは実は鶴瓶師(!)が上方に移し替え、弟弟子の竹林師を通じて広まったようです。
吉弥さんは吉朝一門では一番頼りになりますので・・・さらに大きな存在になって欲しいものです。

ところで、来月の上方落語ですが・・・。
5日18時半より、文我師と春團治一門有数の実力派・梅團治師との二人会が国立演芸場であります。
文我師の会は前売三千円が当日では千円増ですが、梅團治師(06-6606-5632)でも予約が出来るようです。
また16日19時15分からは、亀戸文化センターで枝雀門下で幅広い活動を続けている九雀師の定例会(こちらは一律二千円)があります。
ゲストが枝雀師匠の子息・前田一知さんとありますが・・・。
差し支えなければ御検討をお願いします。

かい枝です。ご来場ありがとうございました!これからも精進します。お褒めを頂き、恐れ多いです。現時点では三人で僕が一番下手です。でもめっちゃ励みになりました。もう一度頑張ろうという気になりました。感謝します。ありがとうございました!

ちょっと落語から離れていると人のカンラク記が羨ましく、ああ、見なくて損したと思います。
上方の言葉が飛び交う世界もいいですね。
堪忍袋、仲が良くなければあんな工夫でおさまりゃしないですよね。
好きだけど嫌い、嫌いだけど好き、一面的でない人と人の関係。
先日ご指摘いただいた「寝床」で長屋の衆が旦那の義太夫をくさすのも、みんなにじつは愛されている社長の酒癖をくさすようなものかもしれないですね。
三田落語会は取れないものと諦めていますが、こんどの新治だけはなんとか!

明彦様
私が上方落語に初めて接したのが国立での上方落語会でした。その時はトリが米朝で、目が開かれた思いがしました。
今回は若手中心でしたが、これはこれで十分に楽しめました。
さて折角のご案内ですが、両日とも既に他の会のチケットを取っていて行かれそうもありません。
2月の新治の独演会も完売で取れなくて、なかなか思うに任せません。

かい枝さんの実力は私がどうこう言うまでもなく、多くの方が認めているのではないでしょうか。
吉弥や春蝶のような芸風はスマートですが、私たちが求める上方落語とは少し違うように思います。
かい枝さんや文我、新治、八天さんたちの高座を聴くと、しみじみ上方だなぁという実感が湧いてくるのです。
益々のご健闘をお祈りします。

佐平次様
落語に出てくる夫婦というのは例外なく仲良しです。長屋の衆にしても同様で、たとえラクダのような男でも亡くなれば周囲はそれなりに対処してくれます。
悪口や喧嘩も好きのうち、本当に嫌いなら無視です。
そういう人間関係に対する憧れがあるから、古典がいつまでも愛されるのではないでしょうか。

あぁ、土曜の夜にこんな会があるなんて・・・・・・。

かい枝さんは謙虚で真面目、将来が本当に楽しみですね。
私も5日は他の落語会の予定が入っているのですよ。
もしかして、同じ会かどうかは、分かりませんが^^

小言幸兵衛様
この企画はグッドアイディアでした。これからも是非続けて欲しいところです。
5日、もし人相の悪い男を見かけたら、それが私です。

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