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2013/02/16

鈴本演芸場2月中席・昼(2013/2/15)

2月15日、鈴本演芸場2月中席・昼の部の中日へ。
土日に行こうと思っていたが、この日が休演代演がほとんど無かったので予定を変更。
平日の昼間にもかかわらず一杯の入りだったのは顔づけの良さか。
少し遅れて二ツ目から聴く。

<  番組  >
柳家右太楼「真田小僧」
林家二楽「紙切り」
春風亭一之輔「子ほめ」
古今亭菊之丞「幇間腹」
三遊亭小円歌「三味線漫談&かっぽれ」
五明楼玉の輔「マキシム・ド・のん兵衛」
桂藤兵衛「商売根問」
江戸家小猫「ものまね」
柳家さん喬「湯屋番」
~仲入り~
昭和のいる・こいる「漫才」
宝井琴調「木村重成堪忍袋」
柳家喬太郎「時そば」
ストレート松浦「ジャグリング」
古今亭菊丸「片棒」

寄席の楽しみ方というのは様々だが、一つは初めてという噺家に出会えることだ。
この日でいえば右太楼。
寄席の二ツ目というのはとても大事な位置だ。
入場してくる客、軽い食事をする客、連れと会話を交わす客といった、ざわついた空気を鎮めながら、客の目を、耳を、高座に向けさせるという重要な役目を負っている。
従って二ツ目の出来不出来はその日の寄席全体に影響する。
右太楼は先ず明るいのがいい。口調も明解だ。客の惹きつけ方も上手い。自分の役割は十分に果たしたといえる。

もう一つは、顔はお馴染みだが、この人のこのネタは初めてというのがある。
以下。
一之輔「子ほめ」
浅い出番だったせいか前座噺を。
この人の高座姿を見ていると、既にベテラン真打の領域に達しているかのようだ。
こういう軽いネタを演じても貫録さえ感じる。
よけいなクスグリを入れず、過不足なく、笑いが取れるというのは並の若手ではない。
玉の輔「マキシム・ド・のん兵衛」
確か白鳥の新作だと思うが、本家より面白かった。なによりリズムが良い。程の良い軽さが活かされていた。
この人に対していつもは辛口だが、今日は甘口。
藤兵衛「商売根問」
ネタ自身も初めて。
通常は「鷺とり」で演じられることが多いが、そのバリエーションらしい。
雀とり→鶯とり→河童とり、とつなぐ。河童とりが奇想天外。
この人らしい丁寧な語り口で結構でした。
さん喬「湯屋番」
ほぼ先代小さんの演出通り。だから若旦那が客に木村長門守のエピソードを持ち出すと、客「木村ってなんだ? 銀座のパン屋か?」、若旦那「あのへそパンが旨い」というクスグリが入る。
若旦那の番台での一人キチガイぶりを見せられると、やはり喬太郎がこの人の弟子であることが実感できる。
琴調「木村重成堪忍袋」
落協の講釈師というと最近では専ら琴調だが、その理由は読みが非常に柔らかいし適度に笑いを散りばめていて、寄席の講談にふさわしいからだろう。
そういう意味で心得た芸ということができる。
ただ若い人は木村重成という武将の名前、なかんずく大阪夏の陣で討ち死にするのだが、その戦にあたって頭髪に香を焚きこめていたという逸話を知らないだろうから、この話の中身が理解できないかも知れない。
関ヶ原の合戦から大阪城落城にいたる物語は、常識として知っておいた方が良いと思う。

後は毎度お馴染みの十八番で、
菊之丞「幇間腹」
喬太郎「時そば」
で客席をワッと沸かせ。
間に挟んだ色物で楽しませて、

トリの菊丸「片棒」
3兄弟の名前は「松竹梅」の方ではなく「金銀鉄」。
息子らに、父親が死んだらどんな葬儀をしてくれるのかを尋ねると。
長男のアイディアは、お昼ごはんに黒塗り金蒔絵の重箱、一段目は練り物、二段目は煮物とか焼き物、三段目らはご飯を仕込んだ三つ重ねで、丹後縮緬で作った特注の風呂敷で包む。それにお車代を付ける。
酒は勧進よりのついた徳利に入れて用意。
香典返しは金貨銀貨の詰め合わせ。
実にゴージャスだが、これじゃ身代がもたない。
次男は、木遣り、手古舞、山車、神輿の行列という江戸前。
最後は花火を上げて万歳で締め。
親の葬儀を祭りと間違えてやがる。
三男はぐっと地味。
葬式を行わず、お棺の代わりに菜漬けの樽に遺体をおっぺしこんで、と言う。
父「それは親孝行(香香)の洒落か?」、三男「いや、臭いものには蓋」。
どうも息子三人ともに親父の死を悲しむ風が無いのは、あまりに吝嗇だったせいか。
菊丸らしい端正な語り口に、囃子の口真似をたっぷり聴かせて真に結構。

「当り」の寄席。

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コメント

菊丸、行きたいけどなあ。

佐平次様
菊丸は外見も語りも端正、そこが魅力ですが、噺家としてはもうちょっと愛嬌が欲しい。より芸の幅が拡がると思うのですが。

まさに「当り」の日だったようですね。
私も久し振りに土曜昼に鈴本に行こうかと思ったのですが、一之輔、菊之丞、さん喬、喬太郎が休演では、気が萎えました^^

はじめまして。いつも楽しく読ませていただいております。
私はほんの4か月ほど前から落語にはまり始めた超初心者です。
「喬太郎」で検索してこちらのサイトにたどり着き、すっかりとりこになって過去の記事もさかのぼって読んでおります。

いろいろな情報もさることながら、見る側の姿勢などについてもとても勉強になります。
これからも更新を楽しみにしております!

小言幸兵衛様
そうなんです、土日と代演が多いので金曜にしました。
傑出した高座は無かったんですが、バランスの良い構成だったと思います。

りつこ様
貴サイトを拝見しましたが、初心者どころではない、かなり鋭い鑑賞眼をお持ちです。
当方はご覧のように好き勝手なことを書いており、あまり参考にはならないと思いますが、宜しければ又お立ち寄りください。

寄席の二ツ目は前に出た前座の初々しさを損なうことなく、それでいて前座よりも上の話芸を展開し、客席の雰囲気をしっかりとつくる。
起承転結の「承」にあたるでしょうか?

右太楼は「崇徳院」を聴いたことがありますが、たしかに口調が良かった記憶があります。
有望な二ツ目でしょう。

福様
よほど実力のある前座は別として、やはり寄席の場をつくるのは二ツ目の役割だと思います。
右太楼はご指摘のように将来性を感じます。

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