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« 市川團十郎の死去 | トップページ | #1立川談春一門会(2013/2/8) »

2013/02/08

「うける」

「うける(受ける)」というのは今では「面白い」「笑える」という意味で一般化しているが、元々は大衆芸能の楽屋言葉だった。
観客から支持や評価を得るという意味で、語源は「拍手(喝采)を受ける」から来たらしい。
してみると客の拍手というのは本来、芸そのものに対する評価でなくてはいけないのだろう。

親に連れられ初めて寄席に行き始めたのは小学校低学年だったから、客としての作法は周囲の大人を観察して見倣うしかなかった。
拍手にも作法というかルールのようなものがあるのに気付き、噺家が高座に上がってきて座布団にすわり頭を下げたときの拍手は「これからアンタの噺をきくぞ」という期待の拍手であり、終わりに再びお辞儀をするときの拍手は「今の高座は良かった」という評価の拍手だと理解できた。
楽屋から高座に上がってきた時の拍手は、いわば歓迎の拍手であることも知った。

昔の寄席と今の寄席のいちばん大きな違いは、観客の拍手の仕方だと思う。
驚くのは幕が上がって前座が出てきた途端に、盛大な拍手がおくられることだ。
以前は前座に拍手をする客などいなかった。あれは興行外であり、見習いが稽古として喋るのだから拍手は不要ということだったんだろう。
二つ目、真打となるに従って拍手の音は大きくなり、大看板や人気者が出てくると更に盛大になった。
一席終わったあとは、出来が良ければ拍手はより大きく鳴り、悪ければ小さくなる。拍手をおくる人数が増減するからだ。
無名の若手でも好演・熱演すれば惜しみない拍手がおくられていた。

寄席の世界なら「笑い」の大小も評価の大きな要素ではあるが、これは芸風やネタによっても左右され、やはり拍手が評価のバロメーターに相応しい。
万遍なく拍手していたのでは、演者としても客の反応がつかめないのではなかろうか。
近ごろ落語会でアンケート用紙を配り客の評価を書かせるケースが多いが、あれは邪道。
その日の高座に客は拍手で応え、芸人や主催者はその結果で判断すれば済むことだ。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

アンケートに答えるのが面倒な私はいつも用紙を受け取らないのです。
ちょっと申し訳ないかな、と思っていたけれど、本記事で少しほっとしました。

佐平次様
私もあのアンケートやらを一度も書いたことがありません。
アンケートを見なくちゃ評価が分からないようでは、プロとは言えないでしょう。

昔の音源を聴くと、高座の途中では、拍手よりも屈託のない“笑い”が多いように思います、
仕種や科白が可笑しい場面、立て板に水の“言い立て”、蕎麦などを食べるしぐさの秀逸さ、今日では、拍手を先導するような野暮なお客さんがいますが、とにかくタイミングの合った笑いが多いですね。
場違いの「待ってました!」にも閉口しますが、息の合わない拍手も興醒めですね。

小言幸兵衛様
近ごろは「ガマ」の口上を言い終わると拍手が普通になっているようですが、三代目柳好の録音を聴いてもここでの拍手はありません。特に落語家が歌を唄うと拍手するという風潮は避けたいものです。
こういう時代遅れの人間も一人位いても良いのでしょう。

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