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2013/03/17

「朝日名人会」変じて「志の輔独演会」(2013/3/16)

3月16日、有楽町朝日ホールで行われた第127回「朝日名人会」へ。
この会、発売日を忘れていて、ダメモトで電話してみたらチケットが取れた。しかも前から2列目の通路側、なんとラッキー。
しかし人間いいことばかりは続かない。トリを予定していた小三冶が体調不良で休演。朝日ホール・チケットセンターから数日前に手紙で連絡があった。ご苦労さんなことだ。
寄席では休演、代演は日常的だが、こうした会では珍しい。
録音で残されているのは昭和39年10月の「東宝演芸場」で、三代目金馬が休演し、代演で志ん生が二席演じている。この時の金馬は本当に具合が悪かったようで8日後に亡くなった。志ん生も大病の後だったので「本当ならこっちのほうが具合が悪くなっている」とマクラで語っているが、34分かけて「わら人形」を演じたのだから大したもんだ。
小三冶の体調については出演者たちが心配するような状態ではないと口々に言っていたが、実際はどうなのだろうか。
この日の代演は志の輔で、2席つとめることと相成った。

<  番組  >
前座・柳家おじさん「平林」
三遊亭萬橘(きつつき改メ)「本膳」
古今亭志ん丸「はなねじ」
立川志の輔「ハナコ」
~仲入り~
桃月庵白酒「松曳き」
立川志の輔「ねずみ」

前座のおじさん「平林」、なんか陰気だね。この芸風じゃ人気が出ないだろう。

三遊亭萬橘「本膳」
3月に真打に昇進し、きつつきから改名、四代目として実に76年ぶりの名跡を復活させた。初代は「へらへら節」という珍芸で大変な人気を博したそうだ。
以前この人の会で最前列にいたら、「お客さん、目を見てくれてないね」といじられたので、この日は目をしっかりと見た。
フラがあって、なんとなく面白いというのがこの人の特長。存在それ自体が可笑しいというのは落語家にとって大きな武器だ。だから自虐ネタのマクラでも嫌味にならない。
本題のネタはまだまだと云ったところ。

志ん丸「はなねじ」
先日”落語家の「声」”という記事をアップしたところ、”ぱたぱた”という方からコメントが寄せられ、さん喬がボイストレーニングを受けてるようだとの情報提供があった。確かにさん喬なら肯ける。あの発声は声帯に負担をかけていない。だからいくら大声を出しても声がかすれたり割れたりしないのだ。
さて志ん丸だが、わたし同様この人の声が苦手という方は少なくないのではなかろうか。我太楼と並んで苦手な声だ。
地声であれば本人には責任がないのだが、こればかりは好みの問題なので致し方ない。
「鼻ねじ」は上方の噺なので東京の落語家が演じるとどこか無理がある気がする。
ダラダラしたマクラに引き摺られたのかネタのテンポも悪く、面白くない。
先日きいた”たま”の方が数段上だ。

志の輔「ハナコ」
志の輔の魅力ってなんだろうと考えると
・古典と新作を両立させている
・新作が従来の新作落語を枠を超えた独自の視点で創られていて、「はんどたおる」「みどりの窓口」「バスストップ」「踊るファックス」「バールのようなもの」などの傑作がある
・古典はネタ数は多くないが完成度が高い
・マクラからネタへの入り方が自然で上手い
といった諸点かと思われる。
これにサービス精神を加えたい。
もちろんテレビ出演での人気もあるが、それだけではない。
実力に比べて人気が異常に高すぎるという批判もあるが、本人の責任とは言えまい。それはプロダクションや興行主の問題だ。
「ハナコ」は新作、テーマは「あらかじめ」。
日本のサービス業というのは実に親切で、なにか問題になりそうだと「予めお断りしておきます」という前置きがつく。一見親切なようで、要は後でクレームになった時に「予めお断り」が言い訳になるという予防線の役割もある。
せっかく温泉宿にでかけても、女将にこの「あらかじめ」を連発された日にゃ興醒めもいいとこだ。
加えて近ごろの流行り、生産者の「私が作りました」という広告、あれって一体どんな意味があるんだろう。「これが、これから皆さんに食べて頂く黒毛牛のハナコです」と見せられたら食えたもんじゃない。
この辺りに視点をおいた作品で、会場は大受け。
そう言われりゃそうだ、というのがいつもながらの志の輔の作品の特長。

白酒「松曳き」
マクラで小三冶の休演について「スキーに行ったらしい」と、いつもの小三冶いじり。
白酒のこのネタは解説不要でしょう。何度きいても面白い。

志の輔「ねずみ」
今回で確か3度目になると思うが、志の輔はこのネタを頻繁に掛けているようだ。
古典とみなされているが、実際は昭和に入ってから広沢菊春の浪曲を三代目三木助が落語に移したもの。
もっとも菊春の浪曲自体が半分は落語みたいなものだったから、この移行はスムースだったんだろう。
ご存知、左甚五郎もの。
噺の山場は「ねずみ屋」の主が語る身の上話しで、この場面の出来で全てが決まる。
志の輔の演出はここを淡々と語らせるが、とにかく「間」の取り方が上手い。ここで観客を引き付ける。
子どもの健気さ、甚五郎の風格も出ていて良かった。ただ彫刻の鼠が動くのを見た近所の者の驚き方が大袈裟で、クサく感じたのが難か。

小三冶お目当ての人はガッカリだったかも知れないが、志の輔の2席というのは独演会でしか聴けない。
そういう意味で、小三冶の休演を立派にカバーしたと言えるだろう。

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コメント

志の輔のような当代の人気者(他に喬太郎・白酒)の魅力は、人物造型の巧みさにあると思っております。
ときにわざとらしいほど、その性格(キャラ)を強調して・・・そこには彼らが幼い頃親しんだ劇画やアニメの影響があるような気がします。だから一方では鼻につく、という見方も出るんでしょうね。

投稿: 福 | 2013/03/20 07:22

福様
確かに好みが(評価も)分かれますね。
落語は大衆芸能である以上、時代の変化と無関係ではいられません。
志の輔や喬太郎の新作には、彼らが一度サラリーマンを経験している経歴が活かされているように思います。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/03/20 08:40

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