芸の饗宴シリーズ・昼(2013/3/18)
3月18日、東京芸術劇場プレイハウス(白酒にいわせると”イヤらしい名前”)で行われた”芸団協主催 芸の饗宴シリーズ「披き・落語~醸と贅~」”の[昼舞台~醸~]へ。
主催者によればなんでも20年ぶりの開催とか。これから定期化するようだがその手始めとして今回は能楽と落語という組合せ。
【能楽】
舞囃子「高砂」 武田宗和(シテ方観世流)
解説に因れば「舞囃子」というのは能一曲のサワリを、地謡と囃子の演奏にあわせて舞う上演形式のこととある。
能の舞としてはかなり激しい動きだと思った。
謡も”高砂や この浦舟に 帆を上げて この浦舟に帆を上げて 月もろともに 出潮(いでしお)の 波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて はやすみのえに 着きにけり はやすみのえに 着きにけり”という出だしなので落語ファンにもお馴染み。
鼓、太鼓、笛と相変わらず美しい音色に陶然となるが、周囲は寝ている人が多かったなぁ。そりゃそうでしょう、入場者の大半は落語目当てだから退屈してしまったんでしょうね。もったいない。
【落語】
春風亭昇々「生まれる!」
三遊亭遊雀「悋気の独楽」
笑福亭三喬「月に群雲」
柳家喬太郎「ハンバーグができるまで」
~仲入り~
桃月庵白酒「松曳き」
春風亭昇太「花筏」
昇々「生まれる!」
この人選が分からない。
出演者のリストにはのっていないし、前座でもなく二ツ目だ。
敢えて二ツ目を出すならもっと上手なのがいるだろうに。
遊雀「悋気の独楽」
得意ネタを手堅く。
芸協の将来をになう人材だと期待しているが、どうも三太楼時代に比べ輝きを失っているような気がするのだが、どうだろうか。
三喬「月に群雲(むらくも)」
三喬を知らん? そりゃあきまへんで、あんたモグリと違いまっか。
この会へこの人を送り込んだ上方落語協会は正解だ。わたしのイチオシです。
「月に群雲」、変わった古典だと思ったら、小佐田定雄の新作のようだ。
主人公は盗人ではなく、盗品を買う闇の道具屋だという点が特色。
盗人と道具屋の合言葉で、盗人が「月に群雲」と言うと道具屋の主が咳払いしてからやおら煙管で一服、決めポーズをした後で「花に風」と答える。
この「間」が実に良く、これだけで会場を沸かせる。
泥棒二人のうち一人が何かというと「諺」を言うのだが、これがみな見当はずれ。
盗人が持参した盗品というのが、まったく売り物にならない。
「まずは国宝級のお宝から、七面観音像!」
「七面?十一面は聞いたことあるけどな」
「この男がぶつけて四つ取れてしもうて七面」
「幸せそうに乗っている六福神!」
「一人足らんやないか」
「弁天さんが海に落ちたんです」
「じゃあこれはどないです?九百九十八手観音!」
「お前それ、手が二本取れたんやろ」
「わかりまっか?」
「わからいでか」
終いに現れた盗人は、木彫りの腕2本、弁天さん、そして小さな観音像が4個・・・。
この会話の面白さ、関西弁でしか表現できまい。
喬太郎「ハンバーグができるまで」
いつものマクラに、いつものネタ。
白酒「松曳き」
朝日名人会と同じマクラで、同じネタ。
昇太「花筏」
これまでの流れから「花筏」を演ると分かってしまった。出る前にプログラムに「花筏」とメモしていたら案の定。この日は三喬を除けば、全員が十八番を披露する会だと分かったからだ。
昇太のマクラは面白い。噺家のキャリアは30年で、志の輔と同期(場内から小さなドヨメキ)だとか。
TV番組の話とかオリンピックの話題とか、内容は別にどうということも無いのだが、とにかく場内は爆笑の連続。
ところがネタに入ると途端にテンションがガクンと落ちてしまう。
どうも昇太の落語というのはマクラが本題でネタは付け足し、そんな印象を受けるのだが。
終わってみれば三喬が全てだった、そういう会。
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コメント
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企画倒れ、というか思い付き?
能と落語をどういう接点で結び付けようと考えたのか、腹ができていないようですね。
どちらの出演者にも失礼です。
投稿: 佐平次 | 2013/03/19 16:07
佐平次様
芸団協というのは69団体加盟しているそうで、第1回だから一番格上の能楽と一番格下の落語を組み合わせたんじゃないでしょうか。
後は、落語を入れれば会場が満員になるという計算もあったんでしょう。
企画は成功したとは言い難いですが。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/03/19 22:44