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2013/03/03

入船亭扇辰独演会(2013/3/2)

寒さの戻った3月2日、国立演芸場での”《噺小屋》弥生の独り看板「入船亭扇辰独演会」”へ。
雪国出身の扇辰が雪の「鰍沢」を演じるという趣向。こいつぁ行かざぁなるめぇ。

<  番組  >
入船亭小辰「一目上り」
入船亭扇辰「鰍沢」
~仲入り~
入船亭扇辰「百川」

扇辰の国立での独演会は初めてだそうで感無量の面持ちだった。やはり落語家になったらいつか国立演芸場の高座で独演会を開くというのは夢なんだろう。いわゆる「檜舞台」。
マクラで大嫌いなものとして「雪」をあげていた。新潟の長岡といえば雪の多い地方、普段から雪には苦しめられてきたので良い思い出なんて一つもないと。
上越新幹線で県境の長いトンネルを抜けると冬場は一面の雪景色。そこで乗客が歓声をあげるのを見てマシンガンで撃ちたくなるとも。この人、見かけによらず気性が激しそうだ。
似たような話が我が妻にもあり、世間で「棚田」が美しいだの「棚田」を守れだのという声を聞くと腹が立つんだそうだ。棚田の農作業というのは非常に大変なんだそうで、安易に守れなんて言って欲しくないと息巻く。
そういえばインドネシアのバリ島で「棚田」が観光コースになっているが、観光業者と農民との争いが絶えないと言っていた。
そりゃそうだろう。
一方で辛い思いをして農作業を行っているのを尻目に、他方ではそれを見せて商売にしているんだから、面白い筈がない。棚田に反射板を取り付けて妨害したこともあったそうだが、その気持ちも分かる。
同じ景色でも立場が変れば見方も変わる。

さて「鰍沢」、この噺は難しい。先ず現役では満足のいく高座は皆無といって良い。
近年では三遊亭圓生にとどめをさすが、これも手元にある録音では1970年2月の「落語研究会」のものが素晴らしいのだが、他は落ちる。あの圓生でさえ、というネタなのだ。志ん生は全くダメ。
何が難しいのかというと、月の輪お熊と旅人との会話の「間」だ。
最初に宿を求める場面、囲炉裏にあたりながらの会話、次いでお熊がかつて吉原の花魁だったと分かる場面、それ以後の身の上話、そして玉子酒を勧める場面、それぞれに会話の「間」が微妙に変わってくる。ここがクリアー出来ていたのは先の圓生の高座だけだと思う。

扇辰の「鰍沢」だが、全体の出来としては悪くない。雪景色の描写や厳しい寒さの情景はよく描かれていた。
気になった点といえば、動きがリアル過ぎたことだ。
落語の動作というのは歌舞伎の所作に似て、一種の様式美だと思う。それらしく綺麗に見せることが基本ではなかろうか。
扇辰の動きはあまりに写実的過ぎて、この噺全体のリズムを崩していたように思えた。
それと、お熊と旅人にもう少し「艶」が欲しかった。
無いものねだりみたいだが、扇辰だからこその注文だ。

扇辰の2席目「百川」
百兵衛の造形がいい。奉公は初めてというのだから、田舎から出て来たばかりなのだろうが、実直で可愛らしい人物に描かれている。
河岸の若い者の中で百兵衛に応対する初五郎のイナセぶりとの対比が良く出来ていた。
クワイの呑み込み方も上手い。
全体の切れ味とテンポの良さは、かつての古今亭右朝の高座を思わせる。
このネタでは、つい先日の一之輔の高座を褒めたばかりだが、ここは扇辰が一枚上。

小辰は並べて演じると師匠そっくり、弟子だから当たり前か。
上手いし色男だから、きっともてるんだろう。でも、程々にね。

扇辰の国立での初の独演会、先ずは成功にてお開き。

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コメント

またもや接近遭遇でしたね。
そう、リアリズム、鼻につくといえば鼻につくかも。
でもリアリズムを徹したその先に見えてくるものに期待したいです。
好い落語会でした。

投稿: 佐平次 | 2013/03/04 10:22

佐平次様
国立での独演会は扇橋一門では初めてかと思います。
それだけ扇辰の実力が評価されてということで喜ばしいです。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/03/04 11:26

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