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2013/03/10

#406花形演芸会(2013/3/9)

今日3月10日は東京大空襲、そして11日は東日本大震災と福島原発事故と、悲しい記憶の日が続く。
大空襲は1945年だが、当時小学生だった兄は前年の春に学童疎開で福島に行っていた。既に東京が爆撃を受けることが予想されていたのだろう。
ところが45年の初めに6年生の男子だけ東京に戻されてしまった。教師からは本土決戦になるので、この年に中学生になる男子生徒は戦闘に参加するためと説明されたそうだ。幸い大空襲の時は親類の家に疎開していたので難を逃れたが、都内にとどまった生徒の中からは犠牲者が出ている。当時の軍部の非人間性を示している。
原発事故でもそうだが、為政者というのは常に国民の犠牲など顧みないものなのだ。

3月9日、国立演芸場で行われた「第406回 花形演芸会」へ。
今年は冬から一足飛びに初夏になったような暖かい日が続く。花粉症の人たちには辛い時期だ。周囲がみな花粉症だと、そうでない人は奇異に見られるような気がする。
開演時間を間違えて二ツ目から。

<  番組  >
鈴々舎馬るこ「新牛ほめ」    
古今亭志ん陽「熊の皮」    
ロケット団「漫才」         
三遊亭遊馬「小間物屋政談」  
ー仲入りー
ゲスト・柳家花緑「野ざらし」
ポカスカジャン「ボーイズ」          
三遊亭王楽「ねずみ穴」 

この日出演した落語家の入門年次を並べてみると、こうなる。
1994年 遊馬
1998年 志ん陽
2001年 王楽
2003年 馬るこ
この日の見所は三遊亭圓生の得意ネタを遊馬、王楽という三遊の若手真打がどう演ずるかだ。

・馬るこ「新牛ほめ」
タイトル通り古典の改作、この人はこの路線で行くんだろうね。
ギャグに会場はけっこう沸いていたが、この手のネタは二度目三度目でも面白いかどうかだ。   
・志ん陽「熊の皮」
本来は典型的なバレ噺だが、近ごろはオチを変えてソフトに仕上げている。
難点はこのサゲだと何も熊の皮じゃなくて普通の敷物でも良いという点だろう。そこいくとオリジナルではどうしても熊の皮であることが必要なのだ。
志ん陽の演出は、甚兵衛が気が弱く善良で正直な性格という特質を良く示していた。医者との会話のすれ違いが面白く、ご機嫌だった医師が少しイライラしてくる様も巧みに表現されていた。
この人は着実に自分のスタイルを築きつつある。
・遊馬「小間物屋政談」  
芸協期待の若手の一人、特長である重低音を響かせての高座は魅力的。
時間の関係からか少し端折った演出だったが、却って余計な枝葉を取り払い緊張感のある高座だった。
演じ手によっては暗い印象になりかねないのだが、この人持ち前の明るさで万事メデタシメデタシの楽しい一席に仕上げた。
大らかさは5代目圓楽を彷彿とさせる。
・花緑「野ざらし」
この会のゲストというのは若手を盛り立てながら、同時に先輩としての貫録を示さなくてはいけない難しい位置だ。
このネタ、確か先代小さんは演っていないように記憶しているが、花緑は小三冶の演出を踏襲している。
あまり「間」を置かずサゲまでスピーディな展開で、仲入り後の客席を一気に温めた。
久々に花緑の良い出来の高座に出会えた。
・ポカスカジャン「ボーイズ」
何を演らせても音楽がしっかりしてるから楽しめる。
今や「ボーイズ」ものの第一人者と言って良いだろう。
・王楽「ねずみ穴」 
大受けのポカスカジャンの後はやりにくいのだろう、本来は直ぐにネタに入るつもりだったようだが、マクラから。王楽の二つ上に三三と木久蔵がいるのだそうだ(客席から微妙な反応)。こう見ていくと年齢と芸は無関係だね。
久々にこの人の高座を観たが上手くなった。トッポさが陰をひそめ重厚な感じが出てきた。今世紀に入門した噺家では文菊とツートップかな。
ほぼ圓生の演出通り。このネタは一歩間違えると陰惨な印象になりかねないが、明るいキャラを活かした見事な高座。

三遊から有望な若手が生まれてきていることは真に喜ばしい。
二代目はどうもイケナイ・・・を、改めなくちゃ。

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コメント

王楽は二枚目ゆえ人気先行かなと思っておりましたが、そんなことはありませんね。
いつぞや聴いた「祇園祭」、非常によかった記憶があります。

福様
王楽は真打に昇進したあたりから次第に良くなってきました。軽薄感がうすれ重厚感が出てきました。

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