「密告条例」とはイヤな感じだ
【密告歓迎などというのも、またひどい。脱税の密告、イントク物資の密告、政府は密告の国風を熱情こめて作りつゝあるもののようだが、脱税やイントク物資よりも密告の国風の方が、どれだけ祖国を害(そこな)い、祖国の卑劣化をもたらすか分らない。】
(坂口安吾『ヤミ論語』より)
生活保護費などの受給者がギャンブル依存で浪費しないよう求め、浪費を見つけた市民に情報提供を「責務」とした兵庫県小野市の条例が可決された。
条例は「パチンコ、競輪、競馬、賭博」などと列挙して、受給者に対し給付金をこれらに使い切って「生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」と規定している。
一方、市民には受給者がギャンブルに使い切るのが「常習的に」なっている場合や不正受給の疑いがあるとき、市への情報提供を義務づけている。
いずれも罰則規定はない。
こうした条例により不正受給が摘発され、その結果として生活保護費が圧縮できる効果はあるかも知れない。
そうした効果より、わたしは坂口のいうように「脱税やイントク物資よりも密告の国風の方が、どれだけ祖国を害い、祖国の卑劣化をもたらすか分らない。」という意見を支持する。
こういう事をやりだすと歯止めがなくなるのだ。
今は生活保護だけだが、やがて母子家庭やら障碍者といった人たちにまで監視の範囲が拡がるだろう。
効果が上がらなければ、知っていて通報しない者に対する罰則が設けられるようになるかも知れない。
いや、決して冗談ごとではない。
住民同士の相互監視や密告が義務付けられている国は決して少なくないのだ。
以前にも書いたが、わたしは日本は世界で最も住みやすい国だと思っていた。
処がここ最近、次第におかしくなりつつあるような気がしてならない。
今回の兵庫県小野市の条例などは、その典型といえる。
« 【1票の格差】自民党の本音 | トップページ | 「雲助蔵出し ふたたび」(2013/3/30) »
「ニュース」カテゴリの記事
- 迷惑系YouTuberと杉田水脈(2023.11.18)
- クズ(2023.09.07)
- 天網恢恢ビッグモーター(2023.08.01)
- 悪魔の所業(2023.07.26)
- しょせんは宰相の器に非ず(2023.07.18)
小さな正義とでもいうのでしょうかね。
息苦しいです。
さればとて脱税してのうのうと暮らす連中も許しがたい、負け犬の遠吠えですが。
ゲリマンダーなんて学生時代に習った言葉↓最近見かけないですね。
投稿: 佐平次 | 2013/03/29 12:48
佐平次様
通報を義務付けるのは明らかに行き過ぎです。
YAHOOのクイックリサーチでは8割以上の人が通報すると答えています。
もし隣近所に生活保護を受けている方がいあると、しょっちょうその人の動向を気にしなくてはいけなくなるでしょう。片方は常に監視される立場に立たされます。
間違った通報も起こるでしょうし、なかには悪意のある通報も出てくるでしょう。
そうした事が地域の人間関係を壊していくと私は思うのです。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/03/29 13:18