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2013/04/14

#18大手町落語会(2013/4/13)

4月13日、日経ホールで行われた第18回「大手町落語会」へ。
主催がサンケイリビング新聞社で、協力が日経ホールというこの会も、4年目を迎えた。

<  番組  >
前座・柳家おじさん「牛ほめ」
三遊亭兼好「野ざらし」
林家正蔵「四段目」
笑福亭鶴瓶「お直し」
~仲入り~
柳家権太楼「子別れ(下)」

なにせ土曜の昼下がりに加え椅子の座り心地が良過ぎて、前座は夢の中。
兼好がマクラで言っていたが、木の芽時というのは露出狂が出没しやすいらしい。孫娘の通う小学校では不審者情報というのを保護者にメールで連絡してくれるのだが、道路で「開チン」の目撃情報が毎日のように来るそうだ。それほど愛好家が多いということだ。でも、どこが楽しいのか理解できないですね、あれだけは。
そんなマクラから兼好「野ざらし」へ。
このネタ、近年では三代目春風亭柳好と八代目春風亭柳枝にとどめをさす。両者とも内容はほぼ同じだが、隣室の隠居が元は侍で名は尾形清十郎というのは柳枝の方だ。現役の噺家の多くは柳枝の型で演じていて、兼好も同様。
ただ後半はガラリと変えて、オチを分かり易いように工夫していた。
やや稽古不足だったのか細かな言い間違いが多く、リズムに乗り切れなかったようだ。人物の演じ分けも不十分で平板になってしまった。

新歌舞伎座のこけら落としに招待されたことをマクラに振って、意外なことに初出演の正蔵「四段目」へ。
招待とはウラヤマシイが、きっと祝儀が大変だろうな。相場がよく分からないが、入場料の10倍位包むんだろうか。着物も上等なものを着なくてはいけないしね。松竹も改修費用を回収しないといけないんだろうが、入場料2万円で3部制はないよな。
さて正蔵のこのネタ、あたしはお初だったが頻繁に高座にかけているようだ。
判官切腹の場面を丁寧に描いていて悪くはなかったが、全体が暗くなる。正蔵の芸風がどちらかといえば「陰」だからだろう。本来はもっと明るく派手なネタだと思うのだが。

今年に入って今日で30回目の高座、ねえ落語、頑張ってるでしょうと鶴瓶「お直し」。
人気タレントの鶴瓶だが、10年ほど前から本業に力を入れ始めたようだ。ちょうどその頃、自前の新作「青木先生」の高座を観たが、まだトークの域を出なかった。だから今回「お直し」ときいて少々驚いた。
このネタは元々が東京なので、舞台を吉原から大阪最大の遊郭だった新町に置き換えている。
ストーリーは、売れなくなった遊女と見世の若い衆が深い仲になる。もちろん御法度だが、主人が所帯を持つことを許し、男はそのまま牛太郎、花魁の方はオバサンとなって共稼ぎ。
二人で稼いで家財や蓄えができたら、今度は亭主が飲む打つ買うの道楽で元の木阿弥。スッカラカンで職も失い借金だけ残る。
亭主はこうなったらケコロ(最下層の遊女)をやるしかないと、嫌がる女房を説得し営業を始める。
この商売は線香一本で200文の世界。いかに客を引き付けておいて、「お直し」「お直し」を重ねさせて金をむしり取るかがコツ。
だから女房の方は客に取り入り、色仕掛けで夫婦約束までしながら客をつなぐ。
傍で聞いている亭主は気が気じゃない。ついつい本気にしてヤキモチを焼き、挙げ句の果てに痴話喧嘩。それでも惚れた同士、最後は仲直りするしかない。
遊び好きなくせに生活力に乏しい男、半分愛想がつきながら最後はそんな男に惹かれていく女、今でも続く永遠のテーマだ。
この噺の聴かせどころは、
1.夫婦が同じ店で働く時の、若い衆の客引きとヤリ手の呼吸
2.主人が二人が所帯を持つのを許す場面
3.亭主が女房にケコロをしてくれと説得する場面
4.ケコロになった女が酔っ払い客を口説く場面
5.嫉妬に狂う亭主と女房との痴話喧嘩と仲直り、サゲ
そのいずれのシーンいおいても鶴瓶の話芸が光った。
1ではオバサンが客を裸にして足袋まで脱がせて金を取る場面を加え、2では見世の主人のハラを見せ、3ではケコロを受け容れる女房の覚悟を見せ、4では口先だけで客を籠絡させる女の口説き術を披露し、5では切ないまでの男女の情愛を表現していた。
このネタは志ん生・志ん朝親子が極め付けだが、鶴瓶の高座はそれに迫る。

仲入り後は権太楼の1席だけということで長講を期待したが、「子別れ」の上では最初の弔いの場面だけで、粗筋を追った後は下の「子は鎹」のみ。
先ずネタの並べ方に疑問を感じる。仲入りを挟んで「お直し」と「子は鎹」はなかろう。
権太楼の演出で、登場人物が皆泣きすぎる、あれだけ泣かれると、聴いてる客が白けてしまう。
鰻屋の二階で親子3人が再会する場面に、店の番頭が同席するという設定も感心しない。やはりここは水いらずで行きたかった。
追い出しで、緞帳が下がり切る前に頭を上げてしまったのは失態だ。
それやこれやで不満の残る高座だった。
どうもここ最近、権太楼の高座には当たらない。
5月の鈴本のトリに期待しよう。

この日は鶴瓶が全て。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

鶴瓶は内心期する者があったんでしょうね。
聴きたかったなあ。

佐平次様
鶴瓶は東京の落語会にゲストで出たので、敢えて東京のネタを選んだのかも知れません。
TV人気だけじゃない実力を見せてくれました。

権太楼は3月のはじめ、練馬と浜松(浜松町じゃないですよ)で「らくだ」を観ましたが、歴史的名演といいたいくらいの出来でした。特に浜松は練馬から四日後でしたが震えがくるほど感動しました。どちらもたっぷり1時間の熱演でした。いい高座は同じ演目であっても何度でも感動できるものなんですね。私は行けませんが、5月の鈴本のトリ、「らくだ」はお薦めです。

末広亭で「青木先生」を聴いて、少しだけ鶴瓶を見直したのですが、「お直し」ですか・・・・・・。
鶴瓶の独演会は木戸銭の高さで閉口していたのですが、一度は彼の落語も聴いてもようかと思う、ほめ・くさんの記事でした。
権太楼、最近は良い時とそうではない時のブレが大きいみたいですね。

nansemi様
練馬と浜松の両方とはスゴイですね。
権太楼の「らくだ」は他のサイトでも高い評価をされていますので、是非聞いてみたいと思います。ただ鈴本ですと1時間の高座は無理かも知れませんね。

小言幸兵衛様
ライブなので当り外れは仕方ありません。本人の体調もあるでしょうし。
一時期、鶴瓶の実兄の方と仕事上のお付き合いがありましたが、顔も喋りも良く似てました。ただ髪の毛はフサフサでした。

鶴瓶師の『お直し』は繁昌亭と、寂れたスーパーでの地域寄席で2度聴いています。
幸兵衛さんがおっしゃるように、鶴瓶師の正式の独演会は高いのですが・・・定席に加えて地域寄席も大切にしているのが、この「大スター」が悪く言われない由縁でしょうね。
『お直し』本家・志ん生のCDも持っていますが、鶴瓶師の演じる駄目男の独特の存在感は、鬼気迫るものがあると思います。
(その点で、映画『おとうと』は、評価の高かった『ディア・ドクター』よりも本領を発揮していました)
どんなに売れても鶴瓶師は、松鶴一門が持っている筈の「弱い立場からの視点」を失っていない、と勝手に思っているのですが。

明彦様
鶴瓶の「お直し」の良さは、ダメ男である亭主に対する温かい目だと思います。
こういうネタは演者の人間性がモロに出ます。
映画でいえば川島雄三の世界ですか。

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