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2013/04/10

「木の上の軍隊」(2013/4/8)

4月8日、シアターコクーンで上演中の「木の上の軍隊」を観劇。
この作品は、井上ひさしが存命中に何回か上演に向けて準備がなされたが実現に至らず、幻の作品となっていた。
今回、井上ひさしが残した膨大な資料をもとに、蓬莱竜太が脚本を書きあげたものだ。
井上が生前語っていた、「私はいつも沖縄がどこかにこびりついている」「同じ日本人なのにひどい目に遭った人たちのことをずっと書くのが仕事だと思っていた」という思いが、ようやくこういう形で実現できた。

原案:井上ひさし
作 :蓬莱竜太
演出:栗山民也

<  キャスト  >
藤原竜也 :新兵
山西惇  :上官
片平なぎさ:語る女
************************
徳高真奈美:ヴィオラ演奏

この物語は沖縄で戦中から戦後にかけて二人の人がガジュマルの木の上に、2年あまり隠れ住んでいたという実話をもとに着想された。
ストーリーは。
ある島で激しい戦闘が行われ、敵、味方も区別つかぬような死体が累々と横たわる惨状。その中で二人の兵士が巨大な木の上に逃れ、そこに隠れ住むことになる。
一人はこの島の若者で志願兵、もう一人は本土の人間で各地を転戦してこの島にやってきた上官。
木から双眼鏡で見える位置に敵の基地があり、援軍が来れば攻撃に参加すべく準備を整えている。
しかしいつまで経っても援軍が来ず、目の前の基地は大きくなるばかり。食糧に困った二人は、夜陰に紛れて敵基地の残飯で飢えをしのぐ。
現地出身の兵士は島の敵軍がどんどん勢力を伸ばしていくことに危機感を持ち、早く反撃に出たいと焦るが、本土から来た上官は島より大事なのは国を守ることだと説く。
そうした立場の相違が二人の間に溝が生じ、いつしか木の上での二人だけの「戦争」が始まる。

舞台をみながら、井上ひさしだったらどんな芝居を書いたんだろうと、ずっとそれが頭の隅に引っ掛かっていた。
木の上の二人を通して、沖縄戦から終戦、そして戦後の占領を描くというのは容易なことじゃない。井上が何回もトライしたが実現できなかったのは分かる気がする。
蓬莱竜太の脚本は分かり易いし随所に笑いも散りばめ楽しい作品に仕上げている。しかし問題の本質にどこまで踏み込めたというと、それには疑問が残る。
例えば日本軍の上官と部下の関係はもっとシビア-なものだった筈で、芝居とはいえ「ユルサ」を感じてしまう。島の中で敵軍がどんどん勢力を拡大していくことに対する若い兵士の怒りも、いまひとつ胸に迫ってこない。
演劇としては決して出来は悪くないのだが、どうしても作品の背後に井上の影を思い描いてしまうため、点数が辛くなるのだ。

藤原竜也と山西惇の二人は揃って芸達者で楽しめたが、山西にはもう少し冷酷さが欲しかった。
二人を冷静に見続ける木の精を演じた片平なぎさは声が美しい。凛とした佇まいも良かった。
劇中流れる徳高真奈美のヴィオラ演奏が舞台効果を高めていた。

公演は6月2日まで全国各地で。
ただ、沖縄公演がないのは残念。

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コメント

この公演は大阪にも来ますが、迷った末パスしました・・・。
井上作品でないのに10500円出せるか、そもそもせめて故斎藤憐さんか永井愛さんならともかく、蓬莱氏(作品は2本だけ観ています)に「代役」が勤まるものか、と思えたのです。
そして諸事情の想像が付くとしても、ここ四半世紀の井上ファンの端くれとして、今のこまつ座の商業化への反発もあるのですが。

井上さんは、『父と暮せば』の二幕として、朝鮮人被爆者の問題も扱おうと思いながら、ついに書けなかったとか・・・。
「書けなかった」理由の重さは尊重すべきではないでしょうか。
取り敢えず活字になった戯曲は読んでみます。

投稿: 明彦 | 2013/04/18 00:00

明彦様
所詮、無理がありました。
それと敢えて書かなかったのですが、この芝居で1万円は高過ぎです。
それ程の価値があるとは思えません。

投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/04/18 03:00

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