#20「続・志らく百席」(2013/5/1)
2013年5月1日、横浜にぎわい座で行われた第二十回「続・志らく百席」へ。ここのところ何だか立川流づいている。
5月1日といやぁメーデー、昔は家族連れかなんかでよく行ったもんだ。近頃はこの日にまとまった集会なんてやってるのかなぁ。あまり聞かないねぇ。
そんだけ労働組合運動が低調になってきた証拠か。だから法律を変えて、簡単に従業員を解雇できるようにしようなんて声が出てくるわけだ。
組合幹部だって今どきはすっかり出世の道具になってしまった。任期中に会社のいいなりになっておけば、幹部を辞めたとたんに管理職、出世コースが待ってるっていう寸法よ。これじゃ骨抜きにもなるさ。
このまんまじゃ、政府の攻勢をはね返すのは難しいかな。
さて6年かけて百席を演じた志らくが、次の百席に挑んでいるこの会、この日も前売り完売。
< 番組 >
立川志奄(しえん)「猿後家」
立川志らく「欠伸指南」
立川志らく「茶の湯」
~仲入り~
立川志らく「たちきり」
志らくがマクラで、林家たい平(志らくに言わせれば林家の突然変異、ただ一人まともな古典を演じられる)と二人会で地方公演をした時のエピソード。「林家たい平、本名を山田隆夫と申します」で会場はドッカーン。要するに落語を聴くというより、「笑点」に出ている有名な人を見にきてる。クスグリは全て「笑点」ネタ。これだけで終始大受け。後から志らくが出て行ったら会場は静まり返っていたとか。
たい平のこんなギャグも、東京の寄席でやれば白ける。だけど「笑点」を背負っている以上お約束で、演らなくてはいけなくなる。かくして「笑点」出演者は芸が荒れてくる。まあそういった所ですか。
志らくって落語が上手いですかね? ビミョーでしょう。
何がこの人の魅力だろうかと考えた時、あたしは「狂気」だと思う。要はマトモじゃないってこと。
先日の立川流落語会とこの日で、志らくの弟子たちの高座を観て思った。
弟子たちが何とか師匠の芸に追いつこうとする。次第に芸風は近づく。でも志らくの芸とは似ても似つかぬものになってしまう。それは狂気が無いからだ。
サイダーだって、炭酸が抜けりゃただの砂糖水。砂糖水のんだって旨くないでしょ、ヒリヒリしないもん。
喉がヒリヒリするのが気持ちいい人が志らくの独演会に来るんだろうし、そうでない人は遠ざかる。そんな気がする。
「欠伸指南」では、便所の欠伸や落語の欠伸(木久蔵、正蔵、金馬の高座だそうな)から歌舞伎で掛け声をかけながらの欠伸などを披露。数ある噺の中でも最もバカバカしいネタ、そのバカバカしさを増幅させる演出だった。
談志の録音では、ネタを先にして後からマクラを振るという演出が残されていたっけ。
「茶の湯」では、隠居が赤ん坊の時、片手で母親の乳を吸いながらもう片方の手で茶の湯を飲むという仕種を入れていた。しかもこの動作を何度も繰り返す。ね、マトモじゃないでしょ。
「青きなこ」は使わずに茶葉を包丁で細かくきざみ海苔で青みをつける。「ムクの皮」の代わりに石鹸を入れる。泡がたって飛んで行くと、隠居と小僧が「シャボン玉とんだ」を歌う。茶菓子はサツマイモをふかし練ってそこに灯し油と墨汁を加えて羊羹風の菓子にして、名前はジョンソン。ね、マトモじゃないでしょ。
三軒長屋も一軒目は商売が不明、三軒目は剣術指南と、これもオリジナルを変えている。
爆笑版「茶の湯」の一席。
「たちきり」では、百日の蔵住まいを終えた若旦那が置屋に駆けつけて芸者に合わせてくれというと、オリジナルでは女将が出て来て芸者は若旦那に捨てられたと思い込み死んだと告げる。そこを志らくは、芸者の幽霊が出て来て死に至る過程を語るという演出にしている。三味線も幽霊が弾く。
これはさすがの志らくファンでも評価が分かれるだろう。
下座が三味線で「黒髪」を弾くという演出もなく、「たちきり」(立ち切れ線香)の情緒が失われていたように思われた。
若旦那を説教する際の番頭の「肚」の見せ方も中途半端に感じた。
昨年末に聴いた桂宗助の高座の方が遥かに優れていたと思う。やっぱりこのネタは上方に限るか。
さて、猪瀬知事の失言で東京への五輪招致はさらに難しくなった。そこで、
「飛んで灯に入るイスタンブール」。
ダメだ、こりゃ。
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コメント
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あの「立て飢えたるものよ」のメーデーが懐かしいです。
やっぱり権力を弛緩させてはいけません。
志らく、切符が入らないことぉ言い訳にして聞いてないです。
そういう感じがします。
猪瀬、見苦しい!品格ゼロですね。
元国労書記のコンプレックスがあるのかもしれないです。
投稿: 佐平次 | 2013/05/02 11:48
一時、志らくを集中的に聴いていた頃があり、「志らく百席」は、ブログを書く前も含め三度ばかり行きました。記憶に残るのは「抜け雀」ですね。
「続」は、同じ百席をもう一度かけているんですよね。順番も同じなら、次回以降は次のようなネタの予定かと察します。 強情灸、野ざらし、ちぎり伊勢屋、松竹梅、崇徳院、与話情浮名横櫛、元犬、おしの釣、居残り佐平次・・・・・・
ほめ・くさんご指摘のように、あの「狂気」に、ついていけるかどうか、が志らくファンか否かの分水嶺なのでしょう。私は途中から、ついていけなくなった口かもしれません。
投稿: 小言幸兵衛 | 2013/05/02 21:42
佐平次様
志らくは人によって評価が分かれるでしょうね。独演会で3席演じるという姿勢は評価しますが。
猪瀬はあんなもんでしょう。選んだ都民が悪い。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/05/02 23:07
小言幸兵衛様
ホントだ、ご指摘の通りです。私も何回か行きましたが気が付かなかった。
そうすると、「続」のタイトルは不適切ですか。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/05/02 23:12
知的で現代的な課題に取り組める。
風貌は青春ドラマの二枚目。
「男はつらいよ」「懐メロ」に対する造詣が深い。
最も熱い調子で師匠談志の人と芸とを語り継ぐ弟子。
以上、志らくについてです。
ご指摘の狂気と、理屈っぽいところが談志似かなと思っております。
投稿: 福 | 2013/05/06 07:43
福様
談志を継ぐのはこの人しかいないでしょう。芸風だけでない精神も受け継いでいます。
マクラの社会風刺も鋭く、この人の魅力のひとつです。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/05/06 11:09