フォト
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
無料ブログはココログ

« #20「続・志らく百席」(2013/5/1) | トップページ | 「大日本橋亭落語祭2013」(2013/5/5) »

2013/05/03

鈴本5月上席・夜「権太楼十夜」(2013/5/2)

5月2日、鈴本演芸場5月上席夜の部へ。GW特別興行として夜の部は「権太楼噺爆笑十夜」、10日間は全てネタ出し。
ちなみに昼の部は「見たい聴きたい!林家正蔵」って、もうタイトルがギャグだね。もっと他に相応しい芸人がいるだろうに。
客席に入ってオヤッと思ったのは緞帳が無いこと。どうやら故障しているらしい。あるべき物がないと不思議な感じがする。
今年はもう5月だっていうのに暖かくなりませんね。温暖化はどこへ行ってしまったんでしょう。

<  番組  >
鏡味仙三郎社中「太神楽曲芸」  
春風亭正朝「肥甕(家見舞い)」
ロケット団「漫才」
柳家三三「湯屋番」
林家正楽「紙切り」  
三遊亭歌之介「漫談」
柳亭市馬「普段の袴」
~お仲入り~
大空遊平・かほり「漫才」
春風亭一朝「初天神」
柳家小菊「粋曲」  
柳家権太楼「百年目」

前座がなく、いきなり仙三郎社中「太神楽」が、いつ見ても鮮やか。
正朝「肥甕」、通常といくつか変わった所があった。
・兄いが新しい家に越したのではなく、新所帯を持った
・1軒目に瀬戸物屋に行き断られれて道具屋で肥甕を入手ではなく、いきなり知り合いの道具屋へ行く 
・二人が肥甕に眼を付けるのではなく、道具屋の方から二人に勧める
こういう演出もあるか。
テンポ良くサラリと流す。
三三「湯屋番」、いつも思うのだが若手の中で女の描き方が飛びぬけて上手い。芸域が広いのはそのためだろう。
正楽の紙切り芸もさることながら、お題が出てからそれに相応しい曲を即座に弾くお囃子の腕前もスゴイ。この芸は紙を切る時間があいてしまうので、そこをつなげているのがお囃子なのだ。
歌之介「漫談」、この日は古典が続くので、中間にこういう爆笑モノを入れて正解。誰から教わったわけではなく全て独自に個性的な芸風をこさえたんだから、これはこれで大したもんだ。
市馬「普段の袴」、数ある出囃子の中でも一番すきなのはこの人の「吾妻八景」。華やかさとワクワク感があって寄席の出囃子にはピッタリ。

遊平・かほり、この日は「スローライフ」をテーマにしていたが、試行錯誤かな。
夫婦漫才(めおとまんざい)は大きく分けて二つのタイプがある。男が中心になるタイプと女が中心になるタイプで、この二人は後者。
このタイプでは過去の例でいうと、ミヤコ蝶々・南都雄二、島田洋之介・今喜多代、鳳啓助・京唄子、そして現役では宮川大助・花子がいる。
彼らに共通しているのは女性が極めて個性的であり、色っぽさがあった。だから女性が中心でも引っ張れたし客を惹きつけることができた。
処が、このコンビは実に平凡。近所にでもいるようなごく普通の夫婦に見える。かほりもこれといった特長がない。今のままだと、この辺が限界なのかな。
一朝「初天神」、いつもの半分ぐらいの時間で、でもツボは外さず。
小菊「粋曲」、相変わらず引き出しが多いね、もう何十回と聴いているが、それでも初めてという曲に度々出会う。
もう4年ほど前になるが、あるサイトで小菊はこう語っていた。
【最近、やっと満足に弾けるようになってきた。お客様たちが味わうように聞いて下さる。 「これで良いだろ。で、人生止まる。」 これからも、大好きな三味線と共に・・ そう、人生を止めることなく!】
こうした絶え間ない向上心、研究心が彼女の芸を支えているのだろう。
確か今年で芸歴が40年、あと40年は頑張って欲しい。

権太楼「百年目」
金毘羅舟舟にのってムスッとした表情で高座に上がるのはいつものこと。その後、顔を上げた時の表情が実に良かった。「寄席っていいですよねぇ」と言ってニコニコしている。こういう時の権太楼は期待できる。この人は結構神経質なんだと思う、不機嫌が顔に出るタイプだ。そういう時はたいがい出来が良くない。あたしの経験値だけど、多分間違ってないでしょう。
冒頭は店先で大番頭が他の奉公人に小言をいうのだが、まるで閻魔様のような恐い表情。でもこの小言は親身になって言ってるんじゃない。飽くまで早く店を出るきっかけにしたくて言ってるのだ。
やがて芸者、幇間の待つ舟に乗り込み、始めは慎重に、酔いが回るほどに次第に大胆に変身する大番頭。ここではすっかり旦那の扱い、顔は恵比寿様だ。
向島の土手は満開の桜、店から解放され周囲からはチヤホヤされすっかりいい気分になった大番頭、気が緩んでしまう。扇で顔を隠しながら、七段目の由良之介気取りで鬼ごっこ。
そこへ通りかかったのが、出入りの医者を連れた店の主人。大番頭といえども所詮は奉公人、主とは天と地の差がある。この場面で、権太楼は主の風格を示していた。
番頭は慌てて店に戻り、風邪だと言って二階に上がってしまう。後から戻った主人、この時には未だ不安と苛立ちが隠せない。
主は一晩かけて帳簿を検査する。しかし穴が一切みつからない。さすれば大番頭の才覚で稼いだ金で遊んだんだと納得する。もう暖簾を分けて独立させてやろうと、ここで主は決心する。
翌朝、大番頭を呼び、「旦那」の謂れを説明しながら上に立つ者の心構えを説くのも、大番頭の独立を見据えてのことだ。その主人の心が分かって大番頭は号泣する。
権太楼の演出は場面場面に応じた細かな心理描写が的確であり、笑わせるところは笑わせ、最後の主の説教の場面はしっかり締めるといった具合で、メリハリのある上出来の高座だった。
ここ数年の「百年目」ではこれがベストであり、今まで聴いた権太楼の高座の中でもベストだと思う。

久々に権太楼の良い高座に出会えた。
この日に来て良かった。

« #20「続・志らく百席」(2013/5/1) | トップページ | 「大日本橋亭落語祭2013」(2013/5/5) »

寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

権ちゃん、神経質説、同感です。
もっともうまい噺家はたいてい一緒に呑みたくないですね。
ことしはこの企画パス、なぜか。
そうしたらこんなのがあったとは残念^^。

佐平次様
ご賛同者が1名いて嬉しいです。
10個のネタ出しを見てこれ一本に絞り、正解でした。

権太楼の「百年目」、目に浮かぶような記事ですね。
鈴本、しばらく行ってないなぁ。
どうしても「友の会」に入っていることと地の利で、末広亭が中心になってしまいます。
今年は、何とか鈴本にも足を運ぼうかと思います。
それにしても、そろそろ芸術協会とヨリを戻すわけにはいかないものでしょうかね。

小言幸兵衛様
終演後、膝が悪い権太楼は立てない。普段は緞帳があるが、この日はあいにく緞帳が下がらない。立ちあがるのに苦労する権太楼は、「どうぞ気にせずお帰り下さい」と呼びかけると、会場から再度一斉に拍手が起きる。
どうです、いい光景じゃありませんか。
これだから寄席は堪りませんね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 鈴本5月上席・夜「権太楼十夜」(2013/5/2):

« #20「続・志らく百席」(2013/5/1) | トップページ | 「大日本橋亭落語祭2013」(2013/5/5) »