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2013/06/16

#130朝日名人会(2013/6/15)

6月15日、有楽町朝日ホールで行われた第130回「朝日名人会」へ。
およそ1ヶ月ぶりの落語会で、これだけ空けたのは久々だ。
梅雨に入ったというのに好天が続いていたが、週の後半あたりから雨が降り始めた。5月に継いで西日本は雨がすくないようだが水源は大丈夫だろうか。

<  番組  >
前座・柳亭市助『出来心』
金原亭小駒『四段目』
柳家花緑『火焔太鼓』
五街道雲助『舟徳』
~仲入り~
柳家喬太郎『あの頃のエース』
柳亭市馬『らくだ』

前座の市助『出来心』、泥棒モノは柳のお家芸。落ち着いていたし喋りがしっかりしている。

小駒はこの9月に真打昇進し、金原亭龍馬と改名する。落協の真打昇進が抜擢から年功序列に戻したが、今回の新真打にとってはそれはそれでプレッシャーになるだろう。
『四段目』は、芝居の真似事をかなりキッチリ演じて良かった。折り目正しい芸風に期待したい。

花緑『火焔太鼓』、「なんでも鑑定団」の司会のエピソードからネタへは自然の流れ。
花緑は女性を演じる時になぜ現代人になってしまうのだろうか。道具屋夫婦の会話がまるで若者同士のように聞こえてくる。この癖が直らないと花緑の落語には入り込めない。

雲助『舟徳』
トリが当初予定の雲助から市馬に入れ替わったようだが、特に説明はなかった。
「船」を「舟」に替えているのは徳が漕ぐのは小舟(猪牙舟のような)という設定なのだろう。
徳が舟を漕ぎだす前に、役者ばりに見得を切って見せるのはご愛嬌。
お決まりの二人の客が煙草盆で火を点けあうという場面をカットし、代わりにポンポン蒸気と衝突しそうになって、汗で目が見えなくなった船頭の代わりに、客が必死で両手を振り相手の船に位置を知らせる場面を加えていた。
古今亭のお家芸をしっかりと継承した雲助の見事な高座。

喬太郎『あの頃のエース』、喬太郎はこのネタが好きなんだろう、何度も聴いているのだが良さが分からない。先ず噺の中身がマニアックでサッパリ理解できない。大半のお客も同じだと思うがそれでも会場を沸かせるのは話術の力だとは言える。
社長が幼馴染と一緒になりたくて、出入りの弁当屋と合併するというのは明らかなムリスジ。喬太郎の新作の中でも出来の良いネタとは思えない演目に拘る理由はなんなのか。
近頃の喬太郎にはガッカリさせられる事が多い。

市馬『らくだ』
この噺の一番の聴かせどころは、当初はラクダの兄いに脅されていた屑屋が、呑むにつけ酔うにつけ次第に立場を逆転させてゆく場面だ。ただこのシーンを理解する上からも大事なのは、なぜ屑屋が頼まれもしないのに自らリーダーシップを取ってまでラクダの遺骸を火葬場まで運ぶことにしたのだろうかという点だ。
着目せねばならないのは、主な登場人物の内の屑屋、隠坊(死者の火葬・埋葬を行う人)、願人坊主(乞食僧)、そして説明はないが恐らくラクダやその兄いを含めて、江戸時代に賤民身分扱いされ、差別を受けてきた底辺に生きてきた人たちだ。
ラクダは乱暴者であったとはいえ、死んでも誰も弔いに来ない。香典や通夜のお供えさえ拒否される。それどころかまるで長屋はお祝いムードだ。
酔った勢いで屑屋は兄いに啖呵を切るが、彼の怒りの矛先は実はそうした差別に対するものだ。自らが日常的に受けてきた屈辱に怒りを爆発させたのだ。
だからラクダの遺体をそのままにして帰ってしまうわけには行かない。それは差別を受けてきた者同志の連帯感ともいうべき感情だったと推察する。
後半で屑屋が主導してラクダの火葬を行うという行動も、こう考えれば説明がつく。
酔った屑屋が怒る場面では、単なる酒乱なんかではなく、その底にあるマグマを感じさせねばならない。
私が『らくだ』は八代目三笑亭可楽が絶品という由縁はそこにある。
さて市馬だが、結論からいうと想像以上の出来だった。余計な小細工はせず本寸法でキッチリ仕上げていた。
ただ屑屋が怒る場面は、上記の点からすると物足りなさを感じる。これは致し方あるまい。

喬太郎が終わった時点で席を立つ人や、市馬の終演で幕が下りきらない内に帰り始める客がいたのは残念。

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寄席・落語」カテゴリの記事

コメント

屑屋はカンカンノウをやってそれが楽しくなりますね。
らくだが乗り移ったのではないかな。
この噺は後半をやると深みが増すと思います。

佐平次様
前半の山場のカンカンノウ、嫌々始めた屑屋が途中から楽しんでいきます。いつもバカにされてる大家がビビッているのを見て、胸がすく思いだったんんでしょう。
これも後半の伏線になっています。

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

添え状の見本様
あまり期待しないでください。ガッカリしますから。

これはまあ、落語協会オールスターズといった趣のある顔ぶれですね。

「火焔太鼓」は志ん生、志ん朝親子の名演の印象が強いぶん、難しいんでしょうね。
そういえば、あの橘家円蔵が得意にしています。

福様
このネタのポイントは、道具屋の女房の造形にあると思っています。志ん生父子は別格といって良いでしょう。
円蔵のは聴いたことがありませんが、先代文治の高座が印象に残っています。
若手では白酒を推します。

朝日名人会は行かなくなってずいぶん時間がたちました。
最初に行った時の、ゴージャス感は忘れられないのですが、次第にその感慨も薄れ、値上げしてからは、足が遠のきました。
落語会で4,000円を越える木戸銭は、どうも腑に落ちません。

それにしても、客層も変わったのでしょうねぇ。この顔ぶれでトリの市馬の前で帰るとか、幕が降りる前に帰る
というのは、どうかと思います。

雲助の『舟徳』、いつか聴きたいものです。

いつも拝見しております。
ところであの頃のエースは去年の池袋の三題噺の会で作られたものですが、それ以降私も何回も遭遇しております。お気に入りのウルトラマンと喬太郎師が以前何処かで言っていた中高年のペーソスのある噺と言うことでご本人が気に入っているのだと思います。

小言幸兵衛様
確かに朝日名人会あは高い気がしますが、近頃は他の会も値上がりしているので割高感は薄れたような印象です。
雲助の『舟徳』は師匠譲りで飄々としていて結構でした。何を演らせても上手いですね。

源田昌一郎様
このネタは昨年10月の創作だったかと思いますが、それからかなり頻繁に演じていますね。演出も少しずつ変えて完成度を高めている点は評価します。
しかし中高年のペーソスという点では、弁当屋の女性の背負ってきたものは描かれていますが、肝心の社長の背負ってきたものが不明確です。切なさが今ひとつ胸に迫ってこないのはそのせいだろうと思われます。

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