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2013/07/08

神楽坂落語まつり「扇辰・三三 二人会」(2013/7/7)

7月7日、新宿区四谷区民ホールで行われた”神楽坂伝統芸能2013 神楽坂落語まつり・夜の部「扇辰・三三 二人会」”へ。
猛暑日だった七夕、都心では夕方に盆を返したような俄か雨が降り、新宿御苑駅から会場へ入るのが少し遅れた。扇辰によればこういう雨を「大夕立(おおゆだち)」と言うのだそうだ。
場内はざっと8分の入り。

<  番組  >
前座・林家扇兵衛「道具屋」
柳家三三「真田小僧」
入船亭扇辰「阿武松」
~仲入り~
入船亭扇辰「野ざらし(通し)」
柳家三三「転宅」

扇辰の1席目「阿武松」
この日が大相撲名古屋場所の初日、それに因んで相撲ネタという選定がいい。
数ある相撲ネタの中でこれは講釈から落語に転じたネタで、いわゆろ出世物語。
近年では6代目圓生が高座にかけていた。
それほど笑いの取れる噺ではないし、登場人物が武隈親方以外はみな善良という扇辰が言う通りクサイ噺だ。
それだけに演者の力量が試されるわけだが、扇辰は主人公の長吉(阿武松)―恐らく芝居の「一本刀土俵入り」の駒形茂兵衛をイメージしたかと思われるが―、旅篭屋善兵衛、錣山親方、そして敵役の武隈親方を鮮やかに演じ分けて好演。
同じ力士でも善兵衛が長吉を伴って相撲部屋を訪れた際に、玄関先を掃除している新米、次の兄弟子、それから親方とそれぞれの話し方を微妙に変えていた。
こういう細部への目配りがこの種のネタには大事なのだ。

扇辰2席目「野ざらし(通し)」
軽いネタかと思いきや、野ざらしの通しできた。
1席目とはガラリと変わって、主人公の八五郎が狂ったように弾ける。扇辰の良いところは整然と人情噺を語るかと思えば、滑稽噺では一転してひたすら陽気になれることだ。
前半で切るのが普通だが、扇辰は後半まで演じることが多いのは、最後まで面白く聴かせる自信があるからだろう。
オチも今の人にも分かり易く変えていたが、ムリがない。
噺家というのは、どこかに狂気を持っていることが必要なのかも知れない。

三三の1席目「真田小僧」
上手いですよ、とりわけ下手な前座の後だからさすがと思わせる。
でもネタの選定はどうなのかな、もっと季節感のあるネタを選ぶべきではなかったのか。
それとも1席目は前座噺と決めているのだろうか。

三三の2席目「転宅」
ウ~ン、いくつか不満がありましたね。
先ず妾のお菊が部屋で泥棒を見つけた時、最初は驚くし恐怖心もあった筈だ。そうでなけりゃ、泥棒が帰った後で直ぐに向かいの煙草屋へ駆け込むことはなかった。
その恐怖心を克服し、次第に冷静になって行く過程がこの場面では必要とされる。
だから通常は次のようなヤリトリでその過程を表現している。
お妾 ちょっとお前さん、どっから入ったんだよ
泥棒 ん? ...うっ、む、むぁ...し、静かにしろ
お妾 なに言ってんだよ、この人は。 なに、お前さん
泥棒 なんだとは何だ!
お妾 なんだとは何だ、とはなんだよ?
泥棒 なんだとは何だ、とはなんだ、とは何だ!
お妾 なんだとは何だ、とはなんだ、とは何だとはなんだ?
泥棒 な...なんだ?
お妾 な、何だってぇの?
泥棒 なんだって、決まってんじゃねぇか、人のうちに黙って入ってんだ。言わずと知れた、こちとら泥棒よ!
お妾 まぁ、ちょぃとお前さん、泥棒?

こういう会話を交わしながらお妾の気持ちが次第に治まり、相手の値踏みも出来て行く。だからこの部分はカット出来ない。
翌日の泥棒と煙草屋の主人との会話で、主人が泥棒は間抜けだという度に泥棒が反論していたが、あれは不自然。これではまるで自らの身分を明かしているようなものだ。話としてはこの方が面白いが禁じ手だと思う。

二人並べると扇辰と三三の実力差は歴然としている。
もっとも今、扇辰を圧倒できる落語家は限られているだろうけど。

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コメント

扇辰が聴きたい!
喜多八、雲助、扇辰、小満ん、新治、みんないいなあ、たしかに常ならぬ一面があります。

佐平次様
落語家に限らず芸人一般に、どこか尋常でない人の方が魅力がありますね。
芸人にならなくて良かった。

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