「大使の座」がカネで買える米国
以前に読んだ、ジェフリー アーチャー「ケインとアベル」(訳:永井淳、新潮文庫)だが、この著者の経歴が愉快だ。若いころ芸能プロみたいな会社を興してひと山当てて財をなし、豪邸を構えて美術品を蒐集するという優雅な暮し。
やがて最年少で英国下院議員に当選という正に順風満帆。
しかし「好事魔多し」の例えあり、革命的な排気ガス浄化装置というサギ話にひっかかり全財産を失って破産宣告。おまけに議員の座まで失い妻に喰わせて貰う有り様。
そこで借金返済のために一念発起、小説を書き始めるとこれがベストセラー。今や人気作家の仲間入りという。事実は小説より奇なり。小説より著者の人生の方が面白いくらいだ。
ここまでがマクラ、ここから本題。
小説の主人公のうちアベルはポーランドの貧しい家に生まれ、当時ロシアがポーランドを侵略、アベルは家族、友人皆殺しにされ、ロシアの強制収容所に入れられる。
そこを何とか脱出し欧州を横断、米国にたどりつき懸命に働いて国籍も得る。
やがてアメリカのホテル王としてのし上がってゆくのだが、ホテル建設には政治力が要る。アベルは民主党議員に近づき資金提供の見返りに様々な便宜を図ってもらう。
やがて1960年アメリカ合衆国大統領選挙に民主党指名候補として出馬したジョン・F・ケネディを支援し、アベルは多額の選挙資金を提供する。その結果ケネディは、共和党のリチャード・ニクソンを僅差で破り大統領に当選する。
アベルはケネディ陣営に対し、自分をポーランド大使に任命するよう約束させる。
この辺りの描写は、作者の下院議員だった時の経験が活かされているようだ。
そうか、アメリカでは大使の座を金で買えるのかと思った。
そこで先日、ケネディの娘のキャロライン・ケネディが2013年秋に駐日米国大使として就任するとの発表があった。
理由は簡単明瞭、バラク・オバマの大統領選挙戦で大きな貢献をしたということ。この貢献にはもちろん多額の献金が含まれていることは言うまでもない。
やはり大使の座は金で買えるのだ。
日本ではさすがにこれは通るまい。
そういう意味ではまだまだアメリカよりはましだということ。
因みに日本では神様のごとく尊敬を集めているジョン・F・ケネディだが、1950年代に吹き荒れた共和党上院議員ジョセフ・マッカーシーによる赤狩り(マッカーシズム)に積極的に協力した。
1950年のカリフォルニア州選出上院議員選挙では、相手方の共和党候補リチャード・ニクソン陣営に秘密裏に献金している。
また1960年代にベトナムへの軍事介入を拡大させ、ベトナム戦争の引き金をひいたのもケネディだ。
そういうダーティな面も持っていたことを付言しておく。
« 「アウシュヴィッツ」見学記 | トップページ | 鈴本「さん喬・権太楼 特選集」(2013/8/13) »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 海外は右翼、国内は保守のダブスタ(2024.08.25)
- 日本のウクライナ支援は立ち止まってみてはどうか(2024.08.14)
- Terrorism by Israel and NATO(2024.08.11)
- イスラエルによるテロとNATO(2024.08.11)
- 株の乱高下で右往左往(2024.08.07)
「田中角栄の昭和」という本を読んでいますが、けっこう角さん、金でポストを買ってまっせ。
投稿: 佐平次 | 2013/08/13 13:46
佐平次様
最後は総理の座まで買いましたか。
その分で行けば大使の座も買えるのかも知れないですね。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/08/13 15:11
無罪だけは買えなかった。
投稿: 佐平次 | 2013/08/14 10:12
佐平次様
あの裁判もアメリカ側からの証拠や証言が無ければ有罪にはならなかったでしょう。
角さん、アメリカから睨まれていましたから。
投稿: HOME-9(ほめ・く) | 2013/08/14 10:57