「ザ・ニュースペーパー~演じる新聞、観る新聞~」(2013/9/21)
9月21日、日経ホールで行われた「ザ・ニュースペーパー~演じる新聞、観る新聞~」へ。タイトルは主催が日本経済新聞社だからのようだ。
「ザ・ニュースペーパー」は、メンバーがそれぞれの政治家を物真似してパフォーマンスを披露する「社会風刺コント集団」として活躍中。
TVの演芸番組や報道番組などで見たことはあるが、ライブは初めて。
一緒に行った女房が「日経新聞社主催じゃ、風刺が弱くなるかも」と心配していた。
<出演者と主な役どころ>
渡部又兵衛:福島ミズホ
松下アキラ:コイズミ元総理、甘利アキラ
福本ヒデ:アベ総理
竹内康明:小沢イチロウ
山本天心:田原ソウイチロウ、猪瀬ナオキ
浜田太一:細野ゴウシ、高市サナエ
石坂タケシ:石原シンタロウ
土谷ひろし:谷垣サダカズ、志位カズオ
谷本賢一郎:歌手
社会風刺のお笑い芸人というと、先ず頭に浮かぶのが「のんき節」で一世を風靡した「石田一松」を思い出す。添田唖蝉坊に連なる本物の演歌師、演歌歌手だった。
「酋長の娘」や「いやぢゃありませんか」も石田の曲だ。
石田をお笑いに含めるのは失礼かも知れないが、寄席の舞台に立っていたのでお笑い芸人の範疇に入れても良いだろう。残念ながら実物は見る機会がなかったが、ラジオでは度々彼の「のんき節」を聞いた。
むろん歌詞は憶えていないが、資料をみるとこんなのが載っていた。
♪鮹に骨なしナマコに眼なし 政府に策なし議員に抱負なし 民に職なし 愛もなし 皮肉にや抱負と骨がある へゝのんきだね♪
こんな調子だったから、軍部には相当睨まれたらしい。
社会風刺というのは元来、権力を揶揄するものだから、どうしても弾圧の対象になりがちだ。
戦後の作品ではこんなのがある。
♪鬼畜米英アメリカという字は米と書く 米は朝日にてらされて やがて日本のままになる へゝのんきだね♪
戦前「鬼畜米英、贅沢とアメリカは敵だ」などと煽っていた連中が、戦後になったとたん掌を返して、アメリカ様様に転向していったことを皮肉ったのだろう。そして米国は今も日本のママである。
「のんき節」はその後、三味線漫談家「瀧の家鯉香」が寄席の高座にかけていたが風刺色は薄まっていた。
戦後の漫才界で社会風刺といえば、コロムビアトップ・ライトのコンビだ。芸協に所属していたが寄席にはめったに出ず、私も一度しか見ていない。
ラジオ番組ではニッポン放送の早朝番組「トップ・ライトの起き抜け漫才」を毎日のように聞いていた。
彼らの漫才はほとんだが時事ネタで、60年安保の時代にはかなり辛辣な内容だったと記憶している。
そういえば、石田一松もコロムビア・トップも、その後国会議員になっている。
時代が下がって社会風刺コントで売り出したのが「コント・レオナルド」。レオナルド熊と石倉三郎のコンビで、熊が建設作業員、石倉が学生という役割だった。
主にTVの演芸番組で活躍していた。
鋭い社会風刺でお笑いブームの一角を占めたが、人気絶頂の中、二人の不仲が原因で僅か6年でコンビを解散したのが惜しまれる。
これ以後、主に社会風刺をテーマとしたお笑い芸人は姿を消したと思う(上方は別)。
そういう意味では「ザ・ニュースペーパー」は貴重な存在だとは言える。
この日も時節柄オリンピック招致や福島原発の汚染水漏えい、消費税増税などで安倍政権を揶揄するコントをくり広げていた。
時事問題を題材にしたコントの難しさは、常にネタを新しく仕入れ台本に組み入れていかねばならぬことだ。この日も朝刊で報じられた内容を早速とりいれていた。
しかし、今回の舞台を見た限りでは以前に比べ毒がなくなったというか、風刺の切っ先が鈍っているように感じた。それは主催者への遠慮なのか、はたまた松元ヒロや松崎菊也ら主要メンバーの退団の影響なのか。
それと中途半端なショーアップは、このグループの持ち味とチグハグになっていたような気がする。
出演者では、やはり渡部又兵衛がいい味を出していた。
形態模写で山本天心が演じた田原総一朗がよく出来ていた。本人が見たら腹を抱えて笑うだろう。
今日はマクラが長すぎたから、この辺で。
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