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2013/09/29

「雲助蔵出し ふたたび」(2013/9/28)

ようやく季節が秋めいてきた9月28日、浅草見番での「雲助蔵出し ふたたび」へ。
9月28日というのは記念すべき日らしい。近ごろ「あまロス」という言葉が聞かれるが、この日最終回を迎えたNHK連続ドラマ小説「あまちゃん」が見られない喪失感による「あまちゃんロス症候群」の略だそうだ。
私は生来の無精者で何ごとにせよ日課が苦手だ。まして毎日同じ時間にTVをみるなぞは到底ムリで、NHK連続ドラマ小説という番組を一度もみたことがない。だから噺家が高座で「じぇじぇじぇ」などと言ってもなんのことやらピンと来なかった。
この日、雲助がマクラで「あまロス」であることをカミングアウトしていたが、今年は物悲しい秋を迎える人が多いのかな。
外は爽やかだったが会場は蒸し暑く、途中からエアコンが入っていた。

<  番組  >
前座・林家つる子「子ほめ」
入船亭遊一「目黒のさんま」
五街道雲助「庭蟹」(にわかに、別名「洒落番頭」)
五街道雲助「風呂敷」
~仲入り~
五街道雲助「星野屋」

遊一「目黒のさんま」
このネタにはピッタリの季節になった。演出は師匠より扇辰の高座をなぞったように見えた。テンポ良く聴かせていたが、途中のクスグリ(例えばアベノミクス)が受けずにリズムを崩していた点が気になった。

雲助の1席目「庭蟹(にわかに)」
先ず前座噺からというイントロだったが、初めてのネタだ。調べてみたら志ん生が高座にかけていて音源も残されているようだ。
世の中には洒落が通じない人ってえのがいる。
得意先からお宅の番頭は洒落が上手いと聞かされた旦那、店に戻って番頭を呼び、洒落をいわせる。
番頭が何かお題をといえば、旦那はそこの踏台を使えという具合。
ようやく題を出して番頭が洒落ても、旦那なチンプンカンプン。
「庭に蟹が這いだしたが、あれはどうだ」
「そうニワカニ(俄に)は洒落られません」
旦那は「主人のあたしがこれほど頼んでいるのに、洒落られないとは何だ」と、カンカンに怒ってしまう。
そこへ小僧が来て、ちゃんと洒落になっていることを旦那に説明する。
番頭を呼び戻して謝り、ほめるからもう一度洒落てくれと頼むと、番頭は、
「そう早急におっしゃられても、洒落られません」
「うーん、これはうまい」
他愛が無い、いわゆる逃げ噺だが、とても面白かった。
こういうネタは軽く見えるが、前座では無理。
「間」の取り方だけで笑わせるネタなので、雲助クラスの人でないと高座には掛けられないだろう。

続いて雲助2席目「風呂敷」
これも大師匠志ん生の十八番で、どの噺家も志ん生の演出に従っている。
原型はオカミサンが間男と不貞をするという艶笑噺だったので、これを改変した志ん生の演出にも、どこか名残りがある。
例えば酔った熊五郎を早く寝かせたがる女房に対し熊がいうセリフ、
”これが所帯を持ってせいぜい半年、湯上りに長襦袢を伊達巻で巻いて、くの字になって「あんたぁ、もう寝ましょうょ~」と言われりゃ、こっちもソウカとなるわ。それがまるで油虫の羽みたいな顔をして「寝ましょう」たぁ、なんでそぉ亭主を脅かす。”
いうくだりでは色っぽさが必要だ。
雲助の「もう寝ましょうょ~」は一段と色気があった。
兄いが熊の女房にトンチンカンな諺で訓戒を垂れる場面や、兄いの女房というのがやたら勇ましく兄いを容赦なく怒鳴りつける場面に雲助らしい工夫がみられた。
とりわけ兄いが熊の頭に風呂敷をかぶせ若い衆を逃がす場面では、兄いの細かな表情がリアリティを高めていた。
このネタ、近年ではこの雲助がベスト。

雲助「星野屋」
8代目文楽の十八番で、死後しばらく演じ手がなかったが最近になって頻繁に高座にかかるようになった。
ストーリーは。
旦那が弁天山の下の茶店「すずしろ」のお花を世話しているのが女房にバレてと、「良いきっかけなので、ここで別れよう。」と女房に口約束する。
お花の家に行って50両の金を出して別れ話を切り出しすと、お花は「そんな事言われたら死んでしまいます」と言う。
旦那は、実は私も死のうと思っていたので一緒に死のうとお花に約束させる。
夜になって旦那が迎えにきてお花と一緒に吾妻橋へ。旦那が「人が来た。先に行くぞ。」と、ドブンと飛び込んでしまった。
続いてお花がと思ったその時、大川に屋根舟が一艘やって来て、一中節の「小春」の一節が聞こえてくる。
♪さりとは狭いご了見、死んで花が咲くかいな。楽しむも恋、苦しむも恋、恋という字に二つはない♪
「そうだよね、死んで花が咲かないよね。旦那、おっかさんもいるんで、失礼します」と、お花は家に戻ってしまう。
そこへ重吉が尋ねてきて「星野屋の旦那が来なかったかい」と切り出した。お花は否定すると、重吉が家に旦那の幽霊が現れて「お前が世話してくれた女だが、一緒に死ぬと言うから、吾妻橋から身投げしたのに、あの女は帰ってしまった。あんな不実な女だとは知らなかった。これから、毎晩、あの女のところに化けて出て、取り殺してやる。その前にお前の所にも立ち寄るから」と言われたとお花に伝える。
怯えるお花が 「重さん、どうか、幽霊が出ない方法はないかね」と訊くと、重吉は「それだったら、髪の毛を切って、今後雄猫一匹膝に乗せませんって、墓前に供えたら浮かばれるだろう」と諭す。
お花は裏に入って髪を切って、頭には姉さんかぶりをして出てきた。「これなら、旦那も浮かばれるだろう」。そこに死んだはずの旦那が入ってきた。
重吉はこの間の筋書を明かし、もしお花が一緒に飛び込んでくれたら星野屋の奥方になれたのにと言うと、お花は「それならもう一回行きましょう」。
「旦那、こういう女なんだ。大事にしている髪の毛を切ったので我慢してください。」、「そんな髪なら、いくらでもあげるよ。それが本物の髪の毛だと思っているのかい。それはカモジだよ」。
悔しがる重吉は、さっき旦那が渡した50両は贋金だと告げる。
お花が金を返すと、重吉はこの金は本物だと言う。
「どこまで企んでんだ。おっかさん!あれは本物だってよ。」
「私もそうだと思って、5両くすねておいたよ」。
落語には珍しいくらいドラマチックなストーリーで、初めは人情噺風、次いで怪談噺風、そして最後は滑稽噺で終わるという難物、それだけに演者の力量が試されるネタだ。
雲助はそれぞれの場面を丁寧に描き、お花が躊躇しながら結局死ぬのをやめる心理描写が秀逸。
後半の重吉とお花の掛け合いも快調なテンポで聴かせ、私見では文楽に引け劣らないといっても良い出来だったと思う。

今回も落語の楽しさを堪能させてくれた。
やはり雲助はスゴイ!

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コメント

やっぱりいらしてたんですね。
とても楽しい雲助でした。
私は年寄りの悪い癖でどうしても志ん生と比べてしまうのが雲ちゃんには悪かったけれど。

佐平次様
古今亭一門は何かというと志ん生に比べられるので気の毒です。
志ん生は別格で不世出の人ですから、どこまで迫れるかが評価になると思います。

雲助があまロスですか。
「あまちゃん」は8月ごろから見始めたにわか視聴者の私でしたが、
落語にも通じる明るさがウケたのだと思います。
出演者も全員、ご隠居や熊・八的な、シンプルこの上ないキャラでして・・・

新作派の誰かが「あまちゃん」を素材にした一席をやってくれないかな。

福様
末広亭に能年玲奈が来場したとき、雲助は膝前で出ていたのに気が付かなったそうです。そのまま帰ってしまったら、トリの花緑が気付いて楽屋へ招きツーショットを撮っていたとか。あの時になぜ帰ってしまったのか、一生の残念の5本の指に入ると雲助が悔しがっていました。

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